今日のことば
【原文】
文詞は以て其の人と為りを見る可し。況や復た留貽(りゅうい)するをや。宜しく修辞立誠を以て眼目と為すべし。〔『言志晩録』第52条〕
【意訳】
文章を通して、それを書いた人の人間性をみることができる。ましてやそれが後世まで残るものであるから、言葉を修めて誠を立てることを最大の目的としておかねばならい。
【一日一斎物語的解釈】
文章には書いた人の人間性が如実に顕れる。だからこそ、言葉を飾らず自分の誠を書き記すことを意識すべきなのだ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、元同僚・西郷さんと食事をしているようです。
「サイさん、本を出すことになったって本当ですか?」
「ありがたいことにね」
「すごいなぁ。私の知り合いに本を出す人がいるなんて、すごくうれしいですよ」
「ありがとう。今は身が引き締まる思いでいるよ」
「そうなんですか? ワクワクしてるんじゃないんですか?」
「もちろん楽しみでもあるよ。でもね、書籍を出せば、もしかしたら私の死んだ後までも残るかもしれないよね」
「ベストセラーになれば確実ですよ!」
「そう考えると、怖くもあるんだ」
「へぇー、何故ですか?」
「文章にはその人の人間性が如実に現れてしまうものだと思わないかい?」
「まぁ、たしかに、文章を読むとなんとなく作者の性格も見えて来る気がしますね」
「うん。だから下手なことは書けないなと思っているんだよ」
「サイさんなら大丈夫ですよ。サイさんが書きたいものを書けば、自然と素晴らしい本になりますよ!」
「そうかな?」
「だって、サイさんほどの人格者は私の周囲にはいませんからね」
「神坂君、ありがとう。そうだね。あまり言葉を飾ることをせず、自分の誠をそのまま文字にすればいいんだろうね?」
「そうです、そうです! いやー、楽しみだなぁ」
「神坂君もいつか本を書く日がくるかもね」
「もしそんな日がきたら、もうこの世に思い残すことはないですよ!」
「大袈裟だね(笑)」
「でも、いまのままでは文章の中に、私の不誠実な心が透けて見えてしまう気がします。精進するしかないですね!」
「私も60歳を超えてから、こんな機会にめぐり会えたんだ。神坂君もしっかり精進すれば、必ずチャンスは来るよ!」
「はい!」
ひとりごと
不思議と文章には作者の性格がにじみ出てしまうものです。
恐らくは人間の完成度の差が、文字に言霊として載ってしまうからなのかも知れません。
現代はSNS全盛の時代です。
誰でも簡単に言葉を外に向けて発信できます。