今日のことば

【原文】
霊薬も用を誤れば則ち人を斃し、利剣も柄(へい)を倒(さかさま)にすれば則ち自ら傷(きずつ)く。学術も方(ほう)に乖(そむ)けば則ち自ら戕(そこな)い又人を賊(そこな)う。〔『言志晩録』第84条〕

【意訳】
よく効く薬も服用法を誤れば人を殺すことになる。切れ味鋭い刀も柄を逆さまに持てば自分を傷つける。同様に、学問も正しく活用しなければ己を損い人をも害することになる

【一日一斎物語的解釈】
何ごとも使い方を誤れば、かえって他人や己自身を傷つけることになる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、新美課長とランチに出掛けたようです。

「新美、絶対的な善なんてないんだよな?」

「どうしたんですか、いきなり」

「どんな立派な考え方も、時と場合によっては、正しくないときもあるんだよな」

「それはそうでしょうね」

「実は俺の高校時代の友人がヤバいんだ。ステージⅣの肺がんでな」

「えっ、それは辛いですね」

「家族は皆知っているのに、本人だけが知らないんだよ。細菌性の肺炎だと思っているんだ」

「あー、さっきの話は癌の告知のことを言っていたんですね?」

「うん。人を騙すことは悪だとされるよな。しかし、寿命があと1年だという事実を伝えることの方が実はもっと大きな悪だとも思うよな」

「そうですね……」

「あいつの前で笑顔でいることが辛かったよ。俺はあいつを騙していたんだからな」

「でも、それでいいんじゃないですか?」

「ご家族も本人には伝えないという道を選んだというし、それに従うしかなかった。でもな、あいつと俺はお互いに嘘はつかないという約束をしていたんだよな」

「私は、神坂さんがその友人を騙しているとは思わないですよ」

「新美」

「その人のためになる嘘を言う事は騙すことにはならないはずです。きっと逆の立場なら、その友人も神坂さんに本当のことは言わなかったんじゃないですか?」

「そうかなぁ……」

「応病与薬ですよ。万病に効く薬はありません。ある病気に効く薬も違う病気の患者さんに使えばかえって有害な場合もあります」

「そうだな。新美、ありがとう。最後まであいつに適した薬を配合するしかないな!」


ひとりごと

何事にも万能薬はありません。

やはり、応病与薬で、病気に合わせて薬を変えねばなりません。

つまりは、処置より診断が重要だということです。

診断が間違えば、効果的な処置は望めません。


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