今日のことば
【原文】
体は実にして虚、心は虚にして実、中孚(ちゅうふ)の象即ち是なり。〔『言志晩録』第86条〕
【意訳】
身体は形あるものであり実ではあるが、活動の本源ではないので虚である。心は形ないものであり虚であるが、活動の本源であるから実体である。 『易経』の中孚の象はまさにそのことを示している。
【一日一斎物語的解釈】
人間は心こそが活動の源であって、身体はその実行部隊に過ぎない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。
「部長、『易経』の中孚の卦というのは、どういうことを意味しているんですか?」
「風沢中孚(ふうたくちゅうふ)という卦のことかな? それは真心とか誠を表わす象だと言われているね」
「もう少し教えてください」
「易というのは六本の爻(こう)から成り立っているんだけど、この風沢中孚の卦は、そのうちの下から数えて三番目と四番目の爻が陰で、その外側の二番目と五番目の爻が陽になっているんだ」
「その形だとなぜ真心とか誠の意味になるんですか?」
「その形が人間の身体と心の関係に似ているからじゃないかな?」
「どういうことですか?」
「人間の身体というのは、実際に形があるけれども、いわば実行部隊であって、司令部ではないよね。一方で、心というのは、実体がないけれどもたしかに存在して身体という実行部隊を動かす司令部の役割を果たしていると見ることができるでしょ?」
「あぁ、なるほど」
「そこから、易でこの卦が出たら、周囲の人に真心で接しなさいとか、誠の心で接しなさいという意味になるんだろうね」
「勉強になります。しかし、面白いですね。心という実体のないものが、身体という実体のあるものを動かしているなんて」
「不思議だよね。確かに存在するはずなのに、人が亡くなるとその痕跡はどこにもないんだからね」
「宇宙の摂理も同じですね!」
「そうだね。まったく姿かたちは見えないけれど、たしかに存在して、この世界を動かしているのが宇宙の摂理だもんね!」
「科学の限界を感じますね」
「そうだね。でも、いつか科学が心の在処を証明する日が来るかも知れないよ」
「そんな日が来ますかね? それならそこまで生きていたいな(笑)」
「残念ながらもう少し先のような気もするね!」
「そうでしょうね(笑) 私も、会社に居なくても、ちゃんとメンバーがサボらずに仕事をしてくれるような存在になります!」
「といいながら、神坂君がサボってたりして!」
「部長!!」
ひとりごと
易の「風沢中孚」の卦を、一斎先生は、陰である心を陽である身体が包んでいる状態と見立てたようです。
風沢中孚の卦は下記のイラストにあるとおりです。
たしかに考えてみると不思議ですね。
虚にして実の心が、実にして虚の身体を支配している訳ですから。

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