今日のことば
【原文】
凡そ士君子たる者、今皆武士と称す。宜しく自ら其の名を顧みて以て其の実を責め、其の職を務めて以て其の名に副うべし。〔『言志晩録』第89条〕
【意訳】
人の上に立つ士君子とされる人は、今は皆武士と称している。それらの人はよくその名声を鑑みて自分の実績を反省し、その職を全うしてその名にふさわしい人物となるべきである。
【一日一斎物語的解釈】
士業を営むものは、その名に副った仕事ができているかを常に反省し、その名にふさわしい人物とならねばならない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、仕事から帰社してネットニュースを見ているようです。
「おぉ、懐かしいな。こいつ、今は何をしてるんだろう?」
「誰のことですか?」
石崎君が反応したようです。
「ほら、いただろう。号泣議員」
「あー、あの人ですか。私は今でも嫌なことがあると、あの映像を見てストレスを発散しています」
「あんな画像でストレス発散になるか?」
「あれほど笑える画像はないですから。爆笑しているうちに、気持ちが軽くなるんですよ」
「なるほどな。どうやら今も自宅にひきこもっているらしいな」
「何も仕事をしていないんですか?」
「この記事によるとそうらしい」
「私はそういう人物が大嫌いです! 誰でも過ちはあります。でも、それを反省して、何か新しいことにチャレンジすべきだと思うんです!」
「少年、俺もまったく同感だ。だいたい仮にも議員先生を名乗った訳だろ。本来は政治家という名に恥じない仕事をし、その名に恥じない人物になるべきだった」
「でも、あの人はその立場を使って私腹を肥やしました。それは悪い事です。でも、反省して、もう一度政治家としてやり直すのか、それとも別の世界で世の中のために働くかすべきです!」
「そうだよな。しかし、あいつほどではないにしろ、政治家と呼ばれる人の中に、その名に恥じない仕事をしている人が何人いるんだろうな?」
「政治家だけじゃないんじゃないですか?」
「たしかにそうだな。弁護士、教師、そうそう俺たちが日々接する医師。そういう「士・師」と名のつく職業の人というのは、特にその名に恥じない仕事をし、恥じない人物になるべきだよな」
「尊敬できる先生もいますからね」
「俺の知っているドクターは、そういう人ばかりだけどなぁ」
「何が違うんですかね?」
「やっぱり志じゃないかな。「志」って、武士の心って書くだろ。江戸時代までは武士が政治家だったわけだ。武士の中には、常にその名に恥じない生き方を模索した人も多かったはずだ」
「そういう志がある人は、自分の職種や役職に恥じない生き方をしてきたんですね?」
「うん。俺たちも営業人として、志を大切にしなければいけない点では同じだな」
「はい!」
「ところで、お前のストレスの原因って主に何なんだ?」
「それは……」
「あぁ、そういうことね……」
ひとりごと
我々は皆、立派な職種名を担って仕事をしています。
なかでも「士・師」がつく職業は、人の上に立つ特に重要な職種であることが多いでしょう。
時にはその名を想い、その名に恥じない仕事・生き方はどうあるべきか?
それを真剣に考え、その名に恥じない人間にならねばなりません。

