今日のことば
【原文】
国乱れて身を殉ずるは易く、世治まって身を韲(さい)するは難し。〔『言志晩録』第91条〕
【意訳】
国が乱れている時に自分の身を国に捧げるということは難しいことでない。泰平の世の中において粉骨砕身して我が身を捧げることは難しい。
【一日一斎物語的解釈】
会社の状況が厳しい時に力を尽くすことはそれほど難しくない。しかし、会社が安泰の時に身を粉にして働くことは容易ではない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、新美課長と飲んでいるようです。
「人間って不思議な生き物ですよね?」
「なんの話だ?」
「いや、人間って逆境に立つと火事場の馬鹿力が出て、それをなんとか乗り越えられるじゃないですか。それなら、なんでもない時にそうしていれば良いのに、それができないんですよね」
「たしかに、そういうところはあるな。試験前にならないと勉強をしなかったりとかな」
「あれ、神坂さんは試験前でも勉強しなかったって言ってませんでした?」
「俺はレアケースだ! 世間一般の凡人の話をしているんだよ!」
「今のところ、ウチみたいな小さな医療器械屋も生き残ってはいますけど、この先どんどん厳しくなると思うんです」
「そうだな」
「それなのに業界全体として、危機感が希薄じゃないですか?」
「平時のときに危機に備えておけってことか。そのとおりだけど、そのためにお前は何をすべきだと思っているんだよ?」
「ありきたりと言われそうですけど、モノ売りからコト売りへ転換すべきだと思っています」
「そのコトが問題なんだよな。どんなコトを扱うかだよ」
「そうなんです。病院経営のコンサルティングかと思ってはいますが、すでに大手のコンサル会社がいますしね」
「俺たちの強みは、医療器械の知識とドクターとのコネクションだろう。それを武器にするしかないと思うぞ」
「そうですよね。そういうことを今のうちに考えておくべきだと思いませんか?」
「トップは考えているかも知れないが、社長や専務と話をしたことはないな」
「火事場の馬鹿力で乗り越えられればいいですけど、そうでなければ大変なことになりますからね」
「うん。一度佐藤部長に相談してみるか?」
「はい。もし上層部でそういう会議があるなら、私も参加したいです!」
ひとりごと
たしかに我々は、危急のときに備えて平時に手を打つことを忘れがちです。
それでもなんとか乗り越えることはできるものですが、その保証はありません。
平和の今こそ、自分の家族や後輩たちの未来のためを考えねばなりません。
自分の人生の10年後、会社の10年後を見越して、今何をすべきかを真剣に考えておくべきです。

