今日のことば
【原文】
都城に十隊八方の防火を置く。極めて深慮有り。蓋し専ら撲滅に在らずして、而も指揮操縦の熟するに在り。侯家も亦宜しく其の意を体し、騎将をして徒らに其の服を華麗にし、以て観の美を競わしむる勿るべし。得たりと為す。〔『言志晩録』第106条〕
【意訳】
江戸城下には十隊の火消組を四方八方に配備している。これは極めて深い考えがあるのだ。私が思うに、ただ火を完全に消し去ることだけでなく、戦闘時において指揮命令系統を熟達させることにあるのだろう。大名家もその意図をよく理解して、騎馬隊の大将に対し徒にその服装を華美にして、その美を見せることを競わせるようなことをしてはいない。誠に結構なことである。
【一日一斎物語的解釈】
営業部隊のリーダーは、常に組織のパフォーマンスを最大化することに注力すべきだ。知識や技術を詰め込むだけで、実践に役に立たないような人材を育成すべきではない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、善久君と同行しているようです。
「おい、あの人を知っているか?」
「はい。K社の花形さんですよね?」
「あの人の着ているスーツは高そうに見えるだろう? 全部一流ブランドでオーダーメードしているらしいぜ」
「はい。香水の臭いもプンプンです」
「部下にも見た目が大事だと言って、高級ブランドのスーツを買わせようとしているらしい」
「勘弁して欲しいです」
「もちろん営業マンにとって見た目は大事だよ。しかし、度が過ぎるのもどうかと思うよな。それにあの人のチームは、ほとんどあの人の実績だけで計画をクリアしているらしいな」
「部下の人はいつも怒られていて、現場でも自信がなさそうな感じです」
「それを良しとしているようじゃダメだな。マネージャーは一人ひとりのメンバーの能力を最大限に発揮させるような育成をするべきなんだよ」
「私は神坂課長に育ててもらっています」
「ははは。いいよ、取って付けたようなことを言わなくてもさ」
「本当にそう思っています。でも、私以上にそう思っている奴がいます。ザキ(石崎君)です」
「そんなわけないだろう。あいつは陰で俺のことを『カミサマ』って呼んで馬鹿にしてるんだぞ」
「たしかにそういうところもあります。でも、それは本音じゃないです。あいつは神坂課長が言った言葉をメモしていつも持ち歩いていますから」
「本当か?!」
「あっ、私が言ったって言わないでくださいね。ザキにしばかれますから」
「お前たちみたいな良い部下に恵まれて、俺は幸せだな。今日は俺の奢りだ。昼飯は何が食べたい? ただし、石崎には内緒だぞ(笑)」
ひとりごと