今日のことば

【原文】
国初の武士は、上下皆泅泳(しゅうえい)を能くし、調騎と相若(ひと)し。今は則ち或いは慣(なら)わず。恐らくは欠事ならん。軍馬は宜しく野産を用うべし。古来駿馬は多く野産なり。余は少時好みて野産を馭(ぎょ)したりしたが、今は則ち老いたり。鞍に拠りて顧眄(こべん)する能わず。嘆ず可し。〔『言志晩録』第107条〕

【意訳】
江戸初期の武士は、上役から下級武士まで皆水泳が得意であり、騎馬の術と同様に修練していた。ところが今は泳ぎを習得しない。大事なことが欠落してしまった。戦につかう馬は野生の馬を用いるべきである。昔から優れた馬の多くは野生の馬であった。私は若い頃好んで野生の馬を馭したが、今は年老いてしまった。漢の馬援が老齢をおして出陣し馬上にあって周囲にその力を示したようなことはできなくなってしまった。残念なことだ

【一日一斎物語的解釈】
営業マンの基礎的な技術として、話術を磨くことは重要であるが、これを実践している営業マンは少ない。営業マネージャーは、メンバーにしっかりと話術を磨かせることを怠ってはいけない。また、営業マネージャー自身は、自ら率先して陣頭指揮を執ることを怠ってはいけない。現場から離れれば現場が見えなくなるものだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、N大学医学部附属病院の倉庫脇にある休憩室でY社の菊池さんと雑談中のようです。

「神坂さん、リーダーとして一番大事なことって何だと思いますか?」

「あらためて一番大事なことと言われると、パッと出てこないけど……。そうだな、やっぱり現場から離れないことじゃないかな?」

「会社にいて指示を出すだけじゃ、ダメってことですか?」

「うん。医療現場はつねに動いているでしょ。新しいデバイスも次々に出て来るし、それに応じて新しい手技も生まれてくる。5年も現場を離れたら、もう浦島太郎だよ」

「なるほど、そうかも知れないなぁ」

「菊池君は、ちゃんと現場に出てる?」

「こうして大学病院にも来ているじゃないですか」

「そうだった(笑) でもね、いつまでも施設を担当するのも違う気がするんだよね」

「どういうことですか?」

「マネジメントだけでメシが食えてこそ、プロのマネージャーだってことだよ」

「プレイングマネージャーじゃダメなんですか?」

「聞こえはいいけど、結局はプレイヤーがたまにマネジメントするだけでしょ。マネジメントは片手間でやるほど楽なものじゃないんだよね」

「そういうものですか? 神坂さんは担当施設を持っていないんですか?」

「全部メンバーに渡したよ。そのかわり定期的にこうして現場に足を運ぶようにしているんだ」

「課長自ら大学病院を担当しているようじゃダメですかね?」

「会社の考え方もあるだろうから、ダメとは言えないけど、俺はよろしくないと思ってるよ」

「なるほど〜。真剣に引継ぎを考えてみようかな!」


ひとりごと

小生が思う営業部門の在り方について書かせていただきました。

現場至上主義は大切です。

新しい商売のタネは常に現場に蒔かれています。

しかし、現場にどっぷりではメンバーの育成が疎かになります。

小生がプレイングマネージャーを良しとしないのは、これが理由です。(賛否両論あるでしょうが)


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