【原文】
「晦(かい)に嚮(むか)いて宴息する」は、万物皆然り。故に寝(しん)に就く時は、宜しく其の懐(かい)を空虚にし、以て夜気を養うべし。然らずんば、枕上思惟し、夢寐(むび)安からず。養生に於いて碍(さまたげ)と為す。
【訳文】
『易経』に「夕方くらくなってから、くつろいで休息する」とあるが、これは万物総てその通りである。それで、夜、床につく時には、心に何も思わず無心になって、夜の清新の気を養うがよい。そうでないと、就寝後いろいろと思い考え込んで、安らかにねむることもできない。これでは養生の妨げとなる。
【所感】
『易経』に「夕方になったら休息する」とあるが、万物すべてそれに則っている。したがって眠りにつくときは、心の中を空っぽにして、夜の気を養うべきである。そうしなければ、床に就いてもあれこれと考えてしまって、熟睡することが難しくなる。それは養生においては妨げとなるであろう、と一斎先生は言います。
『易経』沢雷随の卦からの引用です。
【原文】
澤の中に雷あるは、随なり。君子もって晦(くらき)に嚮(むか)ひて入りて宴息す。
【訳文】
時に従って鳴っていた雷が、時に従って沢の中に声を収めるというように、時に従うことが随という卦名の意義である。されば君子は随の卦の象にのっとって、(日中は外出して働いていても)日暮れに向かうと、仕事をやめて家の中に入って心を安らかにして休息する。(すべて時のよろしきに従って進退するのである) (鈴木由次郎先生訳)
一日の最後はゆったり過ごせ、という一斎先生からのメッセージです。
小生は読書が趣味ですので、寝る直前まで本を読みます。
五十歳を超えた最近は、そのまま寝落ちすることが多いのですが。。。
どうも寝起きがすっきりしないのは、頭が休まらずに熟睡できていないからなのでしょうか。
実は最近、ある事情があって、延命十句観音経という短いお経を朝晩称えるようになりました。
延命十句観音経
観世音 南無仏 与仏有因 与仏有縁
仏法僧縁 常楽我浄 朝念観世音
暮念観世音 念念従心起 念念不離心
たったこれだけのお経ですが、これを10回ほど称えると心が落ち着きます。
皆さんもせめて眠りにつく直前くらいは、心を空っぽにするひとときを作ってみませんか?