【原文】
心体は虚を尚(たっと)び、事功は実を尚ぶ。実功・虚心は唯だ賢者のみ之を能(よく)す。
【訳文】
心の本体は虚心坦懐(何のわだかまりもなく、広く平らか)であることが大切であり、成し遂げた仕事は充実していることが大切である。この功業を充実させ、心を虚しくすることは、ただ賢人だけがよくすることができるのである。
【所感】
心の本体は虚ろであることを貴び、事の出来上がりについては実のあることを貴ぶ。このように仕事を充実させながら心を虚心坦懐に保つのは、賢者と呼ばれる人にしてはじめて出来ることなのだ、と一斎先生は言います。
無心で仕事に取り組めば事は成就する、ということでしょう。
実功・虚心のいずれも容易なことではない、と一斎先生は言いますが、特に凡人の小生にあっては、虚心であることが難題です。
虚心とは、私欲を抑えることだと小生は理解しています。
特に小生が属している営業の世界では、この仕事が成功すれば、評価が上がるとか、昇格昇進できる、といった私欲をもっていては、仕事は成就しません。
なぜなら、お客様はそれを簡単に見抜いてしまうからです。
先日、ある若い社員さんの日報にこんなことが書いてありました。
あるメーカーの社員さんが、お客様(ドクター)に対して、なんでもいいから当社の製品を使って欲しいという売り込みをした結果、今回は何も採用されなかったが、最後にお客様から「別の分野の製品で良いものがあったら紹介してくれれば検討する」と言われたそうです。
これを観た当社の若手社員さんは、このメーカー営業さんの熱意が次のチャンスをつかんだという印象を持ったのだそうです。
そこで、小生は以下のようにコメントしました。
そのお客様の言葉はリップサービスだと思います。
なんでも良いから買ってくれ、というのでは、自分の評価を上げるために商品を買って欲しいとお願いしているのと同じです。
それは熱意ではありません。
本当にお客様にとって使う価値があると信じるならば、食い下がっても良いでしょうが、今回のケースでは、お客様にとってのメリットがまったく見えません。
常にお客様の課題を解決するために、我々は存在するということを忘れないようにしましょう。
小生は、私欲を抑えて公欲のために努力をすれば、必ず営業の神様がご褒美を与えてくれると信じています。
それが実功なのです。
とはいえ、常に売上計画を達成しなければならない営業マンは大変です。
損得と善悪の基準で日々揺れ動きながら仕事をしています。
8月から小生の直下の若手社員さん10名程度に対して、新たな研修を始めます。
そこでは、こうした迷いや疑問について、ヒントを与えながら一緒に考えていく場面を作っていく予定です。
一人でも多くの賢者的営業人を育てて、地域医療に貢献していく所存です。