【原文】
豫(よ)は是れ終を始に要(もと)め、謙は是れ始を終に全うす。世を渉るの道、謙と豫とに若(し)くは無し。
【訳文】
物事を前もって用意し、よく終りを予想すれば、その結果を最初の段階で知ることができるし、高慢にならずに卑下して謙虚な態度であれば、最初に予期したように立派な成果(有終の美)をおさめることができる。処世の道というものは、この謙(謙遜)と予(予備)の二つにまさるものはない。
【所感】
前もって準備するとは、始めの段階で終わりをしっかりと予測することであり、謙虚さを忘れなければ、予測したとおりに有終の美を飾ることができる。世を渡る道とは結局、この謙と予の二つにまさるものはないのだ、と一斎先生は言います。
先ずしっかりと予測を立てたら、謙虚さをもってそれを実行すれば、結果は期待したとおりになるということでしょう。
これは人生を生き抜く為に必要であるだけでなく、仕事の進め方にも適用できそうです。
仕事においては 、PDCAのサイクルを回すことが重要だと言われます。
これも、まずPlanを立てることが先決だという教えです。
無計画に事を進めても、最良の結果が出ないのは当然と言えましょう。
しかし、どんなに入念な計画を立てても、謙虚に事を進めなければ、思うような結果は得られません。
小生は、常に勤務先の社員さん達に、
準備で仕事は8割決まる
と言い続けています。
どんなに完璧だと思える計画を立てても、2割程度は予測不能なことは起きるものです。
そう考えて事を進めることが、一斎先生のいう謙虚さに当たるのではないでしょうか?
したがって、なにごとも80点主義、拙速優先で仕事に取り掛かるべきなのです。
しかし、正しい準備ができていれば、2割の想定外が発生しても、被害を最小限に抑えることは可能です。
しっかりと計画を立てたら、その計画を過信することなく、想定外を予測しながら謙虚に実行する。
こういう仕事の進め方ができれば、終りをある程度はコントロールできるはずです。
こうした仕事の進め方をマスターすれば、あとはそれを人生にも適用すればよいのです。