【原文】
人の一話一言は徒らに聞くこと勿れ。必ず好歹(こうたい)有り。弁ず可し。
【訳文】
人のちょっとした話や言葉でも、いい加減に聞いてはいけない。その話や言葉には、必ず善いことと悪いこととがあるから、よく弁別すべきである。
【所感】
人の話しや言葉を聞き流してはいけない。そこには必ず善と悪がある。しっかりと見極めるべきである、と一斎先生は言います。
他人の言葉の中にある真意を見抜け、ということでしょうか。
営業の世界では、営業マンは自らはなるべく話さずに、お客様に話をしてもらうことを重視します。
なぜなら、そこから多くのヒントを得ることができるからです。
お客様の発した言葉の中から、お客様は何に困っているのか、どんな課題を抱えているのかを把握できれば、あとはそれを解決するための提案をすれば、モノは売れます。
もちろん、お客様が我々の提案に興味があるのかないのかも会話の中からつかむことができます。
実は、世の中の一流の営業マンには意外と口数の少ない人や話すのが苦手という人もいるのです。
むしろ、話すのが苦手だからこそ、お客様に話をしてもらうために聴く力を磨くことで、結果的に好成績をあげているのです。
聴く力を研ぎ澄ますことで、相手が発した言葉から、鍛錬しない人には引き出すことのできない多くの情報を得ることができます。
これは営業の世界に限りません。
一斎先生が言うように、相手の言葉に対して、アンテナを高く張り巡らせておけば、相手の心の中を読み取ることが可能になります。
その人が善の心で接してきたのか、あるいは悪の本性を隠し持っているのかも、察知できます。
コミュニケーション上達の秘訣は、いかに話すかより、いかに聴くかに力を注ぐことにあるのです。