一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2018年04月

第1164日 「優先順位」 と 「劣後順位」 についての一考察

週末金曜日の定時後、会社には2年生トリオが残っているようです。


「なんだよ、お前ら。今日はノー残業デーだぜ」


「えっ、石崎はもう業務終了かよ?」
善久君が驚いています。


「仕事は残ってるけど、割り切ることも大事じゃないか。俺、今日はこの後デートだし」


「いいよな、石崎は。俺たちは彼女がいないから急いで帰る必要もないんだよな」


「いや、言い難いんだけど・・・。僕も彼女ができたんだ」


「えーっ、マジで!! 願海、いつの間にそういうことしてるんだよ」


「この前、図書館で偶然同じ本に手を出してさ。そこから話がはずんで、お付き合いすることになったんだ」


「そんなドラマのワンシーンみたいなことが本当にあるのかよ。あーあ、彼女がいないのは俺だけか~」


「じゃあ、願海も早く帰った方がいいんじゃないの。せっかくのフライデーナイトだぜ!」


「そうなんだけど、仕事が終わらないんだよ」


そこに神坂課長がやってきました。


「こらっ、ガキども! とっと帰らんかい!!」


「課長、自分の部下に向かって『ガキども』はないですよ」


「ああ、石崎さん。これは大変失礼を致しました。謹んで訂正をさせていただきます」


「なんか、気持ち悪いなぁ。ところで課長、えらくご機嫌ですね」


「そりゃそうだよ、これからドームで野球観戦さ。それもバックネット裏の特等席よ」


「えー、いいですね。今日はドラゴンズとジャイアンツのカードじゃないですか」


「そうなんだよ。今日の先発は菅野だから楽勝でしょう。で、お前らは若いのに彼女とデートの予定もないのか?」


「いや、私と願海はこのあとデートですけど、善久はどうなのかなぁ?」


「うるさいな、石崎! 覚えてろよ、いつかお前が羨むような美女をゲットしてやる!」


「なんだ、願海も残業か?」


「はい、段取りが悪いのだと思いますが、なかなか終わりません。優先順位はつけているつもりなんですけど・・・」


「仕事を効率よく処理するには、最初が肝心だよ。優先順位をつける前に、劣後順位をつけないとな


「劣後順位ってなんですか?」
願海君が興味深い視線を神坂課長に向けています。


「まず、何をやらないかを明確にすることだよ。石崎みたいに不真面目な奴は別だけど、君達ふたりのような真面目なタイプは、優先順位をつけても、結局それを全部処理しようとするんだよ」


「ああ、なるほど」


「『なるほど』じゃねぇよ。誰が不真面目だ!」
石崎君は不満そうです。


「だいたい、『忙しい、忙しい』って騒いでいる奴に限って、8割方たいして需要でもない仕事に追われているんだ。それも、それを重要なことだと勘違いしているんだからたちが悪いよな」


「・・・」


「重要度と緊急度をよく考えて、まず今やらなくていいことを決めて、スパッと切ってしまえばいいんだよ」


「神坂課長、ありがとうございます! 今やっている仕事は、月曜日でも間に合うので、彼女とのデートを優先します!」


「それでよろしい! で、善久はどうするんだ」


「わ、私は重要な仕事をしているので、もう少しやっていきます!」


「早く終わらせて、合コンにでも参加しろよ!」
石崎君が意地悪そうに笑っています。


「うるさいな!」


「さて、では私はドームへ急ぎますゆえ、そろそろ失礼致しますね」


「あれっ、課長」


「なんだよ、善久」


「ドラゴンズが1回裏に5点先制したみたいですよ」


「えーっ、マジで!! 俺も残業しようかな・・・」


ひとりごと 

仕事を処理する上で大事なのが優先順位よりも先に劣後順位をつけることです。

劣後順位とは、やらなくて良い仕事を思い切って捨てることです。

名著『7つの習慣』によると、多くの人が「緊急だが重要でない仕事」に時間を割き過ぎていると言います。

その一方で「重要だが緊急でない仕事」を後回しにしてしまう傾向があると指摘しています。

「緊急だが重要でない仕事」とは、それほど重要でない電話に出ることや無意味な会議に参加することなどです。

「重要だが緊急でない仕事」とは、今後の方針を策定することや、訪問スケジュールを決めることなどが当てはまります。

緊急度と重要度をよく勘案して、まず劣後順位をつけて仕事を減らし、その上で優先順位をつければ、効率的に仕事が処理できるはずです。


【原文】
今人率(おおむ)ね口に多忙を説く。其の為す所を視るに、実事を整頓すること十に一二、閑事を料理すること十に八九。又閑事を認めて以て実事と為す。宜(うべ)なり其の多忙なるや。志有る者誤って此の窠を踏むこと勿れ。〔『言志録』第31条〕


【訳】
最近の人は、たいてい口ぐせのように「忙しい、忙しい」と言うが、普段の行動を観察してみると、実際に重要な仕事を処理し整えているのは、せいぜい十の内の一、二であって、重要でない仕事を十の内の八、九も行っている。また、そうした重要でない仕事を実際に重要な仕事だと思っている。これでは多忙になるのも当然であろう。志をもって取り組む人は、誤ってこのような落とし穴にはまってはならない。


「ものさす」より
http://www.monosus.co.jp/posts/2016/10/114436.html
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第1163日 「厳格」 と 「寛容」 についての一考察

今日の神坂課長は、特販課の大累課長と人事課の鈴木課長と一緒に3人でランチを食べているようです。


「人を叱るのって本当に難しいですよね。最初は冷静に指導しているつもりが、いつの間にか感情的になってしまうんですよ」


「ははは。大累は自分にも厳しいからな。そういう人は他人に対しても厳しくなりがちだよな」
鈴木課長が同意しています。


「その点からいくと、鈴木は他人に対して優しいからな」


「そのかわり、自分にも甘くなりがちなのは欠点かな」


「そうですかね? 鈴木さんは自分に厳しく、他人に優しいという印象がありますけどね」


「おお、理想の上司じゃないの?」


「そこへいくと、神坂さんは、自分に甘くて他人に厳しいですよね?」


「ゴン」


「痛てぇ、また暴力だ!」


「うるせぇ、その前にお前の暴言をなんとかしろっつうの!」


「大累、そうでもないぜ、少なくとも最近のカミサマは」


「鈴木、すでにその言い方に悪意を感じるぞ」


「ははは。いや、神坂もだいぶメンバーに寛大になってきたように感じるよ。こいつも少しは成長しているんだよ」


「お前さぁ、先輩みたいな口ぶりだけど、俺と同期だからな」


「まあ、カミサマの成長を暖かく見守ってあげましょう」


「ゴン」


「い、今のは本気で殴ったでしょう。訴えてやる」


「お前は、後輩だからな。もう少し先輩を敬え!」


「たんこぶができましたよ。そういえばこの前、そんな話をしたら、佐藤部長が佐藤一斎さんの言葉を教えてくれたんです」
大累課長が頭に氷を当てながら話しています。


「得意の一斎先生だな」


『自分に厳しい人は他人に対しても厳しくなりがちであり、他人に寛容な人は自分にも甘くなりがちなものだ。人はたいがいどちらかに偏るものだが、君子と呼ばれるような立派な人は、自分には厳しく、他人には優しく接するものだ』と、そんな主旨の言葉でした」


「まさに理想論だよな。だけどさ、例えば大累のように自分にも他人にも厳しい奴もいれば、鈴木のように誰に対しても優しすぎるという奴もいる。普通の人間は、みんなどちらかの傾向を持っているものじゃないかな」


「それは、そうでしょうね」


「もちろん、君子を目指すことは大事なんだけど、まずはそうした自分の傾向値を知ることが先決じゃないか


「そうだろうな。どちらが良いとか悪いという話ではないよな


「なるほど、そうすると、私の場合はメンバーに対して厳しくなりすぎないように、常に意識をしておくことが大事なんですね」


「うん、それを理解しているだけでも、メンバーへの接し方は変わるはずだよな」


「でも、そうなると、神坂さんは大変ですね。他人に厳しくなり過ぎないように注意しながら、自分には甘くなり過ぎないように気を使わなきゃいけないんですもんね」


「ゴン」


「痛てぇーーー! わざとたんこぶの所を狙ったでしょう」


「お前らの場合は、その前にもっと大切なことがあるような気がする。大累は先輩を敬う気持ちを持つこと、神坂はすぐに手を出す癖を直すこと、それが最優先だな」


「たしかにそうだな。おい、大累、手帳の最初のページにしっかりと『先輩を敬うこと』って書いておけ!」


「神坂さんも、手帳のすべてのページに『二度と後輩に手を出しません』って書いておいてくださいね」


「ゴン」


「痛てぇ」


「だめだこりゃ」


ひとりごと 

叱れない人がいれば、褒めるのが苦手な人がいます。

ふつうの人はどちらかに偏るものです。

双方のメリット・デメリットを理解したら、あくまでも中庸を目指して精進したいものです。

しかし、まずは自分自身にどういう傾向があるのかを理解して、常に行き過ぎ・やり過ぎにならないように注意しておくことを心掛けるだけでも、物事はうまく進むはずですね。


【原文】
自ら責むること厳なる者は、人を責むることも亦厳なり。人を恕すること寛なる者は、自ら恕することも亦寛なり。皆一偏たるを免れず。君子は則ち躬自ら厚うして、薄く人を責む。〔『言志録』第30条〕


【訳
自分に厳しい人は他人にも厳しく、自分に甘い人は人にも寛容である。このようにどちらかに偏るのが人の常だが、君子と呼ばれる人は、自分には厳しくとも他人には寛大に接するものだ



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第1162日 「大徳」 と 「小徳」 についての一考察

石崎君の携帯電話に、4月から担当となったT厚生病院内視鏡室からコールがあったようです。


「もしもし、石崎君?」


「はい、あ、内藤先生ですか?」


「おお、名乗らなくてすまなかったね。内藤です。ちょっとトラブル発生でね。胆石をバスケットでつかんだら、そのまま陥頓(石がバスケットから外れなくなること)してしまったんだ」


「先生、バンベック(バスケットを故意に破断させる器械)をお持ちでなかったですか?」


「購入したはずなんだけど、見つからないんだよ。しばらく使ってなかったから、この前の棚卸しで廃棄されちゃったみたいなんだ」


「わかりました。メーカーさんに聞いてみます」


「それがね、O社さんもすぐには準備できないらしいんだ」


「ええ、そうなんですか? では近隣の病院さんから借りられないか当たってみます」


「よろしく頼むよ」


石崎君は自分の担当施設に電話をして、なんとか貸してもらえる段取りをつけたようです。


「ということで、善久。悪いんだけど、M生協病院からバンベックを借りてきてもらえないかな。大丈夫? ありがとう。じゃあ、T厚生病院のロビーで待ってるから」


「でもまだ問題は解決じゃないんだよなぁ。この病院の事務長さんはとても厳しい人で、病院間の器械の貸し借りはご法度だって、本田さんから引き継いでいるんだよなぁ」
石崎君の独り言です。


「よし、ここはカミサマに相談してみよう」


「どうした、石崎。お前から直接電話なんて珍しいな。トラブルか?」


「はい、神坂課長。実は・・・」
石崎君は神坂課長に事の顛末を話したようです。


「あそこの山本事務長はめちゃくちゃ厳しいからな。ルールは絶対だって人だから、例外は認めないだろうな。だけど、ここはペイシェント・ファースト(患者様第一)で行こう。先生とうまく話をして事を内緒で済ませろ」


「いいんですか?」 


「責任は俺がとるよ、心配するな」


結局、善久君から器械を受けとった石崎君は、内藤先生に手渡し、お互いに内緒で進めようということで話をつけたようです。


夕方、石崎君がにこやかに帰社しました。


「石崎、うまくいったか?」


「はい、課長。すぐにバスケットを壊して、石を外すことができました。結局、石は別の方法で破砕することになったようです」


「そうか、ひと安心だな」


「内藤先生からは、めちゃくちゃ感謝されました」


「世の中には様々なルールがある。どっちみちすべてを守ろうとすれば辻褄が合わなくなるもんだよ。だから、我々の行動の軸をどこに置くかが大事なんだ。当社でいえば、それが『ペイシェント・ファースト』だよ」


「そうだね。基本的にはルールを守るべきだが、それにこだわりすぎてもよくないね。ただし、人間の倫理に関わるようなものを破ってはいけないよね。一斎先生も絶対に守らなければいけないものと、そうでないものは分けて考えているよ」
佐藤部長の言葉です。


「はい。よい勉強になりました」


「よし、石崎。これからもう1回、T厚生病院へ行くぞ」


「え? なぜですか?」


「山本事務長にすべてを話そう。内藤先生やお前が悪者になるのは気分がよくないからな」


「せっかく内緒で済ましたのにですか? かえって問題がこじれませんかねぇ?」


「大丈夫だ。最悪は俺の出禁(出入り禁止)で話をまとめればいいじゃないか!」


ひとりごと 

小生は、医療器械の商社に勤めています。

我々の使命は、地域に住む方々の健康な生活をお守りするお手伝いです。

もちろん、利益がなければ会社は継続できませんが、営業現場の最前線で判断の軸となるのは利益ではないはずです。

私の勤務先の社長も「ペイシェント・ファースト」を掲げています。

「自分の行動は患者様を最優先に考えているか?」と常に自問自答しながら、的確な判断をしていくことが求められます。

ただし、患者様のためなら何でもやって良いということでもありません。

医療に関わる人間だからこそ、人間の倫理といった基本的なルールは決して破ってはいけないと肝に銘じています。


【原文】
大徳は閑(のり)を踰(こ)えざれ。小徳は出入すとも可なり。此(ここ)を以て人を待つ。儘(まま)好し。〔『言志録』第29条〕


【訳】
儒教の根本精神である、五倫(父子の親・君臣の義・夫婦の別・長幼の序・朋友の信)や五常(仁・義・礼・智・信)をしっかり心得た生活をしているのであれば、日常の礼儀に少しくらい悖(もと)ることがあっても問題はない。そういう心をもって人に接することは、きわめて良いことである。



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第1161日 「同期」 と 「友情」 についての一考察

ちょうどいま、営業2課の課別ミーティングが行われているようです。


「遅くなって申し訳なかったですが、今から今期の計画値を発表します。会社からは先週数字が下ろされていたのですが、まずは自分の中でいろいろ検証してみたかったので、伝えるのが遅くなってしまいました」


2課のメンバーはどことなく緊張した表情です。


「全社計画は、売上・利益共に、対前年計画の10%アップです。したがって、この営業2課も同様に、昨年の計画の10%アップとなります」


「マジですか! 前期は計画を達成していませんから、前年実績からみたら、相当のアップ率になりますよね?」
本田さんが驚いています。


「そのとおりだ。前年実績からだと12%以上のアップになる。しかし、これは会社としてはどうしてもやり切らなければならない数字なんだ。お客さまのお役に立ち続けるためにも、我々は生き残らなければいけないんだ」


「・・・」


「もちろん、楽な数字ではないことは理解している。平社長もそう言っていた。しかし、ウチの課には期待の若手がいる。石崎と善久だ。ベテランの山田さんにエースの本田君、そこに二人が戦力として加われば、前期よりもマンパワーも増え、計画は達成できると確信したんだ」


「めっちゃプレッシャーだな」
善久君がつぶやきます。


「たしかに善久、お前の成績次第で2課の結果が変るんじゃないか?」


「なんだよ、石崎。偉そうに。そりゃ、前期はお前は計画を達成して、俺は達成できなかった。だけど、今期は絶対に結果を出すから見ていろよ!」


「石崎君、そうやって人を見下したような発言はしない方がいいよ。そういう言葉を発すると宇宙の法則から見放されてしまうものだよ。そうなると、かならず悪い結果が待っているものなんだ」
山田さんが石崎君を諭しました。


「そのとおりだよ、石崎。同期の仲間は、友人でもあり、ライバルでもあるんだ。常にお互いに切磋琢磨して成長できるありがたい存在なんだぞ。俺にも廣田っていう同期がいる。あいつとは常に良い意味で刺激をし合ってきたよ」


「本田さんは、廣田さんより清水さんをライバル視しているのかと思っていました」


「もちろん、清水さんは目標だけど、廣田にはやはり特別な感情があるんだ。入社当初は、廣田の方がいつも数字が良かったんだ」


「えっ、そうなんですか?」


「ああ、だから俺は悔しかったし、いつもあいつの数字を気にしていた。でも、廣田はそんな俺を見下すことは一度もなかった」


「・・・」


「自分が読んだ本を貸してくれたり、飲みながら俺の愚痴に付き合ってくれた。今は、あいつがスランプで悩んでいるが、必ずまた俺の最高のライバルになってくれるって信じてるんだ」


「善久、ゴメン。許してくれ」


「ははは、石崎。気にしてないよ。それより今、俺は本田さんと廣田さんの話に心から感動した。願海を含めて、俺達3人も同じような最高のライバルになろうよ!」


「ありがとう!」


「あのさ、感動の話の後でなんだけど、4月の見通しでは、いきなり新米課長の新美率いる1課に売上で負けてるんだよ。君達、頼むよ。大事なのはスタートダッシュだぜ」
神坂課長が困った顔をしています。


「これじゃ、まるでジャイアンツですね」


「石崎! お前、そこでジャイアンツの話をするな。余計に腹が立つじゃないか!」


「ということは、差し詰め、高橋監督が神坂課長ですかね?」


「本田君! 言ってくれるねぇ。それじゃ俺の采配のせいだと言いたいの!?」


「本当ですよ。皆さん、他人事みたいな話をしないで、しっかり頑張りましょう」


「山田さん、ありがとう。そうだぞ、お前ら。俺の分析では、いまのジャイアンツの不甲斐なさは、選手に問題があると見ている」


「営業2課も同じだと・・・?」と石崎君。


「そうだ、と言いたいところだが、ここはお互いに矢印を自分に向けよう。俺もマネジメントを見直すから、君達も営業のスキルとマインドをもう一度再点検して、リスタートを切ってくれないか」


「はい」


ひとりごと 

小生は、いつも自分と周囲とを比較して、自分が下だと思えば悔しいと思い、自分が上だと思えば、相手をバカにしていました。

それでは宇宙の法則に反してしまい、善く生きることはできない、と一斉先生は言います。

他人は他人、自分は自分と割り切って、とにかく自分ができることに力を尽くすという生き方こそが、宇宙の法則に沿った生き方なのでしょう。

本田さんと廣田さんのような人間関係に憧れますね。


【原文】
纔(わず)かに誇伐の念頭有らば、便(すなわ)ち天地と相似ず〔『言志録』第28条〕


【訳】
少しでも人を見下ろすような気持ちが生じただけで、万物を産み育てている自然の法則から外れることになる。自然の法則に背けば、善く生きることはできない


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第1160日 「大志」 と 「小事」 についての一考察

石崎君、善久君、願海君の2年生トリオが神坂課長に呼ばれました。


「明日の営業部キックオフ会議の事前準備を君たち3人にお願いしたい。机はロの字型にして、プロジェクターの準備もよろしくな。あ、それから会議資料を各課の課長からもらって、参加人数分コピーしておくのも忘れずにな」


「はーい」


「石崎、返事を伸ばすな!」


翌日の朝8:00、3人は集合して準備をしているようです。


「ちっ、俺たちってこんなことをするためにこの会社に入ったわけじゃないよな」
石崎君は不満そうです。


「本当だよ。準備だけして会議には出れないんだからな。勉強にもならないよ」
善久君も同調しています


「まあ、仕方ないじゃないか。こういう仕事は若手がやるものだよ。学生の部活のときだって、二人は後輩に準備をさせてたんじゃないの?」
やはり願海君は大人の対応です。


「それはそうだけどさ。いつから雑用は後輩がやるという文化が生まれたんだろうな」


「せめて会議に出席したいよな」


「僕は、これを雑用だとは思っていないよ」


「はぁ? 願海、何を言ってるんだよ。机を並べたり、資料をコピーして配布するのが雑用じゃなくて何なんだよ!」
石崎君はイライラしています。


「この前、小林一三の本を読んだんだ」


「誰だよ、それ?」


「石崎、知らないのか? 阪急東宝グループの創業者だよ」


「ああ、その人は確か宝塚歌劇団も創った人じゃなかった?」


「お、善久、さすがだね。その人の言った有名な言葉に、『下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ』というのがあるんだ」


「下足番?」
石崎君と善久君が同時に声を発しました。


「お客さまの靴の出し入れをするような仕事だよ。普通に考えたら、重要な仕事には思えないじゃないか」


「たしかに」と石崎君。


「でも、それを雑務だと思わずに、どうせやるなら文句を言いながらやるんじゃなくて、日本一の下足番になるつもりでやれ、ということだよ」


「じゃなにか? 願海は、日本一の机当番とか、日本一のコピー係になるつもりなのか?」
とニコニコしながら石崎君。


「そういうつもりで、今までの誰よりも完璧な準備をしてみようと思ってる」


「なんだよ、それ」
善久君があきれています。


「おお、面白そうだな。よし、先輩方を驚かせるくらいの準備をしてやろうじゃないか!」


「石崎、切りかえが早すぎ! でも、お前がやるなら、俺も!」


会議の始まる時間が近づいてきました。
参加者が次々に会議室に入ってきます。


「おお、今日の会議室は何か凛としたものを感じるねぇ。机の角がきれいに揃っているし、椅子もしっかりしまってある」
佐藤部長がさっそく気づいたようです。


「資料のコピーも角がきれいに揃っていますね。それに見事に机の同じ位置に置かれている!」大累課長も驚いています。


「部屋にゴミがひとつも落ちてないですね。ホワイトボードもピカピカですよ」
新美課長も感動しているようです。


「石崎、善久、願海、お前たちやるじゃないか!」
神坂課長が嬉しそうに叫んでいます。


『本当に仕事ができる人というのは、小さな仕事を疎かにしないし、仕事の目的を理解している人は、細かいところにこそ配慮をすると一斎先生は言っているんだが、3人はまさに雑務を雑務に終わらせていない。素晴らしいことだよ!」
佐藤部長も満足そうです。


そんな上司の言葉を聞いて、3人はお互いに目配せをしながら、満足気に会議室を後にしたようです。


ひとりごと 

雑用を言いつけられて嫌々それを処理するのも、小林一三さんの言うように、与えられた仕事を誰よりも完璧に処理しようとするのも、すべては当人の課題です。

そして、雑用を雑用として処理すれば、また次も雑用が言い渡されるでしょう。

しかし、この物語の3人のように、完璧な仕事をすれば、次は一つ上の仕事が与えられるのではないでしょうか?

本来は、リーダーである神坂課長が雑用と思われる仕事の意義と重要性を伝えなければいけませんが、今回は逆に若手から教えられたようですね。


【原文】
真に大志有る者は、克く小物を勤め、真に遠慮有る者は、細事を忽にせず〔『言志録』第27条〕


【訳文】
真に大志をいだいている人は、小さな事柄でもしっかりと勤め、また真に遠大な考えをいだいている人は、些細な事柄でもおろそかにしない。



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第1159日 「準備」 と 「実行」 についての一考察

神坂課長が平社長に呼び出されて、社長室に入っていきました。


「どうだ、神坂。今期はしっかり計画を達成してくれるんだろうな?」


「もちろん、そのつもりです。しかし、メンバーに数字を下ろす前に、この一週間は自分の腹に落とす作業をしています」


「この前、私が今年度の計画を発表したとき、お前は不満の塊みたいな顔をしてたからな」


「すみません。そこが私の修業どころです。タケさんと大累に散々からかわれました・・・」


「ははは、それがお前の良さでもあるけどな。もちろん、今期の数字が楽ではないことは、私だってよくわかっている。しかし、業界再編の中でどうしてもこの数字をやり切りたい。どれだけきれいごとを並べても、生き残れなければ世の中のお役に立てないんだからな」


「はい。ウチの課でいえば、石崎と善久は優秀な若者ですから、彼らが力を発揮してくれれば、やれない数字ではないと思います」


「そうか、頼もしいな。直接話をすることはほとんどないが、石崎は元気で良いな」


「はい、あいつは若いころの私に似ています。ちょっと生意気ですが、憎めない奴です。それに善久も最近はかなりやる気になってくれています。もしかしたら、石崎よりも育つかも知れません」


「その二人を辞めさせないようにしてくれよ」


「はい、肝に銘じておきます」


「ところで、いまの2課の課題は明確になっているのか?」


「それを今、棚卸ししているところです。これは2課だけの問題ではないですが、やはり内視鏡の売上ウエイトが高すぎることが懸念されますので、是正していく必要はあると考えています」


「具体的にどう是正するんだ?」


「やはりオペ室攻略が鍵になると思います」


「しかし、オペ室はY社やK社ががっちり押さえ込んでいるんじゃないのか?」


「もちろんです。しかし、あの2社だって人材が足りていないのは、当社と同じです。相手の戦力をよく分析して、まず切り崩せる可能性のある施設へ我々のマンパワーをシフトすべきだと考えています」


「なるほどな」


「まずは行動する前に現状をしっかり把握して用意周到に綿密な計画を立てておくべきだと考えています。その上で、いざ実行となれば、若手にも腹落ちするくらいシンプルな戦術に落として楽天的に進めます」


少し安心したよ。そこまで考えて動いてくれるなら、今期は期待していもいいな?」


「期待に応えられるように最善を尽くします」


ところで、最近のお前はなんだか小さくまとまり始めた感じがするのが気になっているんだ」


「どういうことですか?」


「ちょっと佐藤に感化され過ぎじゃないのか?」


「佐藤部長には多くの気づきを与えてもらって感謝しています」


「それならいいが・・・。きれいごとだけで会社は運営できないということも理解しておいてくれよ」


「は、はい・・・」


ひとりごと 

なにかに挑戦する場合、事前にできる限りの準備をしておくことが大切です。

小生が師事する中村信仁さんは、

「自信を持てないのは、自分自身が準備不足であることに気づいているからだ」

と言います。

想いと勢いだけで最後までやり遂げることは難しいでしょう。

計画段階でなるべく用意周到に準備をし、想定されるリスクについては、あらかじめリスクヘッジ、もしくは発生した場合の回避方法を決めておくべきです。

その上で、実施する項目は、極力シンプルにすると良いでしょう。

「ここまで準備をしたのだから、あとはうまくいく!」と信じて、楽天的に乗り越えていけば良いのです。


【原文】
事を慮るは周詳ならんことを欲し、事を処するは易簡ならんことを欲す〔『言志録』第26条〕


【訳文】
物事を計画する際は、周到かつ綿密であるべきであり、それを実行に移す場合には、容易かつ簡単にすべきである。



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第1158日 名声を 「求めること」 と 「避けること」 についての一考察

今日は、営業2課の本田さんに、2年目の善久君が同行しているようです。


「善久、お前、最近すごくやる気になったな。何か心境の変化があったのか?」


「やっぱり後輩が入ってくるのが刺激になっています。彼らに格好悪いところは見せたくないですからね」


「格好悪いところを見せたくないから頑張るの?」


「はい」


「ふーん。そういえば、将来はトップセールスになりたいって言ってたよな?」


「はい! いつかは本田さんを追い越したいと思っています」


「で、トップセールスになったら何をするんだ?」


「つぎは社内最速で課長昇進を目指します」


「善久、そういう考え方だとトップセールスになることも、課長になることも難しいと思うよ」


「え、何故ですか?」


「俺達の給料はどこから出ていると思う?」


「給料・・・ですか? 会社じゃないんですか?」


「いや、もちろん会社なんだけどさ。その会社はどこからお金をもらってるんだっけ?」


「あ、お客さまですね」


「そう。俺たちはお客さまが当社に支払ってくれるお金の中から給料をもらっているんだよ。なのに、お前の話の中にはお客さまがまったく出てこないじゃないか」


「・・・」


「お前の中で、トップセールスになることや、課長になることが目的になっていないか?」


「目的ですか・・・」


「そもそも、トップセールスというのは、会社の中で誰よりもお客さまを喜ばせている営業マンだろう? 俺達営業マンは、どうしたらお客さまに喜んでもらえるかを常に考えていなければいけないんだよ。その結果、お客さまから一番多く『ありがとう』をもらった人がトップになるんじゃないかな」


「本田さん、僕は恥ずかしいです!」


「どうしたんだよ、急に」


「だって、本田さんの言うとおりですよ。新人に舐められたくないから頑張るとか、課長になりたいとか、全部自分本位の考え方ばかりでした。そんな奴がトップに立てるわけがないですよね」


「善久、お前の良いところはそういうところだよ」


「はい?」


「すぐに自分の非を認めて反省できるじゃないか。意地を張ったり、屁理屈は言わないもんな。特販課の雑賀なんて、屁理屈のデパートだからな。よくまあそれだけの屁理屈が言えるなって、逆に感心するもん」


「ははは、雑賀さんはそういう人なんですか? でも、本田さんのお陰で目が覚めました。もうトップセールスになることなんて考えずに、目の前のお客さまに喜んでもらうことだけを考えます。課長になんてなりません!」


「おいおい、それも違うんじゃないの? 地位や名誉を求めることが目的になるのは良くないことだけど、無理に地位や名誉を避けようとすることも良くないんじゃないか? それって、結局、地位や名誉にこだわりがあるということだろう」


「ああ、そうかも知れません。来るものは拒まず、去るものは追わないというスタンスで行きます!


「やばいこと教えちゃったかな? これで何年か後には本当にお前に抜かれちゃうかも知れないな。俺も負けないようにお客さまに喜んでいただく仕事をするぞ!!」


ひとりごと 

昇格や昇進が目的になってはいけない。

そのとおりですが、実際にサラリーマンをしていると、「わかっちゃいるけど、変えられない」というところはありますね。

ところが、最近は善久君のようなタイプはむしろ珍しいのではないでしょうか?

むしろ、「昇格なんかしたくない」という若者の方が多くなっているように感じます。

しかし、こういう若者と話をしてみると、実は予防線を張っているだけ、というケースが多いようです。

若い人にはどんどん上を目指してもらいつつ、昇格して何をするかというビジョンだけはしっかりと描いてもらうように導いていきましょう。


【原文】
名を求めるに心有るは、固より非なり。名を避くるに心有るも亦非なり。〔『言志録』第25条〕


【訳文】
名声を求めるて心を働かせることは、当然よくないことである。しかし、名声を無理に避けようとすることも、同じくよろしくない。



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第1157日 「心」 と 「文字」 についての一考察

今日の神坂課長は、予定していたアポイントがキャンセルとなってしまったので、N鉄道病院の長谷川名誉院長に電話を掛けているようです。


「はい、あ、よろしいですか?  ありがとうございます。それでは、いまから30分後にお伺いします」


30分後、神坂課長はN鉄道病院の名誉院長室のドアをノックしています。


「はい、どうぞ」


「長谷川先生、突然ご連絡をして申し訳ありませんでした」


「大丈夫だよ。ちょうど暇を持て余していたんだ。面白い人が来てくれて助かるよ」


「せ、先生。面白い人って・・・」


「しかし、神坂君は愛されているよね。この前も同門会に行ったら、何人かの先生が君の話をしていたよ。思わず私も加わって、君の話で盛り上がったよ」


「どんな話をされたんでしょうか・・・」


「だいたいは君の失敗談かな。洗滌装置の点検で消毒液を撒き散らした話とか、ランプ交換した後の光源装置が爆発した話とかね」


「長谷川先生、それは今から10年以上前の話ですよ。最近は少しは成長していると自負しているんですから」


「ああ、そういえば誰かが行ってたな、最近は読書をするようになったってね。豚に真珠みたいなもんだとか酷いこと言ってたな」


「そ、それ絶対に多田先生ですよ。そんな酷いことを言うのはあの人しかいません!」


「あ、そうそう、多田君だ!」


「やっぱりそうですか。酷いなぁ、多田先生は。でも、そうなんです。40を超えてようやく読書の面白さに気づきました。とにかく、自分を磨かないといけないなと思うようになったんです」
(多田先生のキャラクターについては、第1135日、1136日をご参照ください)


「It's never too late」


「はい?」


「始めるのに遅すぎるということはない、という格言だよ」


「ありがとうございます。先生、心を磨くのに読書以外に良い方法はありますか?」


「そうだね。毎日、朝と夜に文字を書いてごらん。佐藤一斎先生は、『人間の心の内面は文字にすべて表れるものだから、毎日、5~6文字を書いて、それをよく観察することも自己を反省するうえで良いことだと言っているんだ


「私の場合、心の中がすべて顔に出ているとよく言われるので、悩んでいたのですが、文字にも表れるんですね」


「うん、たとえ表情では隠すことができても、文字では隠せないものかも知れないよ」


「これは、自分だけのことでなく、メンバーの心の中を探るのにも重要ですね。今まで注意して彼らの字を見たことがなかったです」


「実は、私はこの言葉を知ってから、各先生の字を観察するようになったんだけど、見事に心の中が文字に表れていることに気づいたよ。それこそ、多田君なんかほぼ心の中を見透かすことができたからねぇ。ははは」


「その話、多田先生にしてもよろしいですか?」


「もちろん!」


「よし、今度こそ逆襲だ!」


「多田君とのバトルの結果は必ず報告するようにね!」


「はい、それは必ず。長谷川先生、大変勉強になりました。今日から早速文字を書いて自分の心を鍛錬します」


「やっぱり君と話をしていると楽しいな。また暇があったら声を掛けてよね」


「恐縮です!」


ひとりごと 

文字に心が表れるというのは怖いですね。

小生は部下である社員さんの表情を観察することは続けてきましたが、字から心を読むということには思いが至りませんでした。

ただ、私の勤務先の業務日報も電子媒体です。

最近は、手書きの文字をみる機会が極めて少なくなっています。

朝晩、文字を書いて自分の心の中を再確認するとともに、同僚の文字にも関心をもって、なるべく手書きのやり取りをすることを意識すると良いかも知れませんね。


【原文】
心の邪正、気の強弱は、筆面之を掩(おお)うこと能わず。喜怒哀懼、勤惰静躁(きんだせいそう)に至るまで、亦皆これを字に形(あら)わす。一日の内、自ら数字を書し、以て反観せば、亦省心の一助ならん〔『言志録』第24条〕


【訳文】
人の心が邪(よこしま)であるか正しいか、また気が強いか弱いかというようなことは、その人の書いた筆跡を見れば、一目瞭然で、これを隠すことはできないものだ。また心の喜怒哀楽や勤勉・怠惰・平静・騒然といったことに至るまで、すべてその人の書いた字に表れるものだ。そこで、一日の内、自分で五、六字を書いて、それをくり返しよく観察することも、また自己を反省するうえで重要なことである。


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第1156日 「悲観的」 と 「楽天的」 についての一考察

新たに営業1課の課長に昇格した新美課長が、お得意先の挨拶周りをしているようです。


一番最後に、新美さんが入社以来ずっと担当してきたK南病院消化器内科部長の長木先生を訪問したようです。


「おお、新美君、おめでとう。昇格したらしいじゃないか!」


「長木先生、ありがとうございます。もうご存知でしたか。先生にご指導をいただいた賜物です」


「ははは。僕は何もしていないよ。でもずっとウチを担当してくれていた新美君が昇格したというのは、やはりうれしいものだね」


「恐縮です。こちらのご施設については、私が引き続き担当しますが、今年入社する新卒社員を同行させます。いつかは彼に担当を引き継ぐ予定です」


「そうか、いつかは担当を外れるのか。それは残念だな。しかし、そうと決めた以上はしっかりと期限を決めようじゃないか」


あらかじめ期限を決めた方が良いですか?」


「それがその若者のためにもなるし、君が真のマネジャーになるためにも必要なことではないかな?」


「はい、おっしゃるとおりです。退路を断つというか、言い訳できない状況をつくっていくべきですね」


「そのとおり! 僕もはじめて部長に昇格したときは、かなりのプレッシャーで、最初はよく眠れなかったよ」


「実は、いまの私が同じ状況なんです」


「そうだろうと思ったよ。君はちょっと心配性なところがあるからな。それが長所でもあり、短所でもあるよな」


「長木先生、先生がはじめて部長になられた時は、どんな心がけで臨んだのですか?」


「僕のボスは長谷川先生だからね。2人きりで話すのは勇気がいるほど、あの頃の長谷川先生は怖かったんだが、思い切って教授室を訪ねて心得を聴いたんだ」


「ああ、長谷川先生に」


「うん。そのとき言われたのが、『重大事に臨む前には、まず自分の心に数本針を打ち込むくらいの覚悟で、自分の弱さや欠点を戒めなさい。始める前にはまず悲観的にものごとを捉えてみて、課題を明確にし、いざ始めたらあくまでも楽天的に進めなさいという言葉だったんだ」


「おお、凄い言葉です。とても参考になります」


「だけど、君の会社にも凄い人物がいるじゃないか?」


「佐藤ですね」


「そうだよ。それに、もう一人面白い奴もな」


「神坂ですか? そうですよね、私の前にこの病院を担当していたのは神坂でしたね」


「あいつが課長になると聞いたときは、大丈夫かと本気で心配したけど、この前、学会で会ったら、なんだか言うことがすごく立派になっていて驚いたよ」


「神坂さんは、私と性格が真逆なだけに、かえっていろいろと参考になる意見をもらえるので、とても助かっています」


「そういう先人の意見を参考にしつつ、自分の軸をしっかりと確立させていけば、君なら良いマネジャーになれるよ」


「ありがとうございます」


「ただなぁ・・・」


「はい、何か?」


「神坂には、あんまり丸くなって欲しくないなぁ。いつまでも馬鹿がつくくらいの一本気でいて欲しいなと個人的には思ってしまうんだよ」


「お伝えしておきますよ」


「今度、3人で飲もう。新美君の昇格祝いでさ」


「ありがとうございます。神坂もきっと喜びます!」


ひとりごと 

何か事を始める前には、まず十分な情報を集めた上で、一度悲観的に捉えて、うまく行かなかったときのリスクを考えておく。

リスクが明確になったら、その時にとるべき対応策を練っておく。

その上で、いざ実行するということになれば、そこではあくまでも楽天的にものごとを捉える。

この悲観的な見方と楽天的な見方のバランスと使い方がポイントでしょう。

小生は、悲観的に捉えて、悲観的に実行するようなところがありますので、多いに反省させられます。


【原文】
吾方(まさ)に将(まさ)に事を処せんとす。必ず先ず心下に於いて自ら数鍼(すうしん)を下し、然る後に事に従う。〔『言志録』第23条〕


【訳文】
私は今、まさにこれから重大事を処理しようとしている。先ずなによりも心の奥に数本の針を打つように、自ら戒めよく考えてから仕事を始めよう。


不登校解決保証ブログより
http://futoukou123.com/%E6%A5%BD%E5%A4%A9%E5%AE%B6%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97%E3%81%AE%E5%AD%90%E4%BE%9B%E3%81%AE%E4%B8%8D%E7%99%BB%E6%A0%A1%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%99%E3%82%8B%EF%BC%9F%EF%BC%9F/

バカボン

第1155日 「雑念」 と 「ゾーン」 についての一考察

「神坂くーん、お久し振りー」


相原会長がニコニコしながら神坂課長の席にやってきました。


「会長、前期は大変不甲斐ない結果となってしまい申し訳ありません」


「相変わらず潔くていいね、神坂君は」


「はい?」


「結果が出なかったときに、素直に非を認めずに、『厳しい結果でした』とか評論家みたいな言い方をする奴がいるんだよ。そういうのが私は大嫌いでね」


「ウチに居ますかそういうタイプ?」


「いやいや、前の会社のときにね。私も若かったから、そういうタイプとはよくぶつかったよ」


「へぇ、今の会長からは想像できないですね」


「ところでさ、日曜日の桜花賞はどうだった?」


「会長、まだ17:00ですよ。業務時間内ですから!」


「難いこと言わないの! 18:00には会社を出たいんだからさ」


「自分勝手にも程があるなぁ、このジジイは」


「えっ、何か言った?」


「先週の桜花賞ですよね? なんとか3連複の本線で的中して、プラスにはなりました」


「おー、さすがは師匠」


「いつから私は会長の師匠に昇格したんですか?」


「私は駄目だった。3連単の買い方を間違えたんだよ、悔しい!」


「しーっ、声がデカイですよ」


「ちょっと桜花賞のときは、心の雑念を払いきれなかったのかな? いろいろ外部からの情報を取り込みすぎて迷ったからね。仕事もそうだけど、研ぎ澄まされた刀のように殺気を帯びるくらい自分に集中して、外部の情報を遮断しないと良い結果は生まれないからね」


「なんか良い話のようにも感じるんですけど、競馬の話ですよね・・・」


「だからさ、今回は師匠の意見だけを聞いて、あとはじっくり自分の考えを熟成させようと思ったんだ。さあ、師匠の見解を教えてくださいな」


神坂課長は、仕方なく翌週の皐月賞の見解を伝えたようです。


「なるほどなぁ。やはり師匠は読みが深いなぁ」


「後で外れたからって私のせいにしないでくださいね!」


「何をおっしゃいますやら。師匠の見解は絶対ですから! お、もう18:00じゃないか。神坂君、お先に!」


「ちっ、1時間無駄にしたよ」


「ははは、神坂君。大変だったね。いつも会長のお相手をしてくれて感謝しているよ」


「部長、聞いてたんですか?」


「聞いてたんじゃなくて、聞こえてきたんだよ。会長の声もデカイけど、君の声も勝るとも劣らないからね」


「あのジジイ、耳が遠いから、つい声が大きくなるんですよ」


「だけど、あの真剣の件は、ドキッとしたよ」


「なぜですか?」


「一斎先生の言葉そのものだったからね。『心に雑念があるときは、外からの情報で心が乱される。つねに心を真剣のように研ぎ澄まして、外からの情報を遮断し、腹に近づけさせないようにすれば、さっぱりとした気持ちになるものだ』と言ってるんだよ」


「ほおー、確かに同じようなこと言ってましたね。でも、どうせなら仕事の話の中で、それを聞きたかったよなぁ・・・」


ひとりごと 

スポーツの世界などで、「ゾーンに入る」という表現があります。

あるいは「ランナーズ・ハイ」とか「クライマーズ・ハイ」といった言葉もあります。

かつて読売ジャイアンツの川上哲治さんは、打席で「ボールが止まってみえた」と証言しています。

こういう状態のときは、極度に自分の心が研ぎ澄まされている状態なのでしょう。

営業の世界でも、トラブルが発生して緊急対応を迫られたときなど、心が極度に研ぎ澄まされて、自分でも驚くような解決策が浮かんでくることがあります。

もちろん日頃からアンテナを高くして、多くの情報を収集することは大事ですが、決断や実行の場面においては、自分の心だけを頼りにすべきだということかも知れませんね。


【原文】
間思雑慮の紛紛擾擾(じょうじょう)たるは、外物之を溷(みだ)すに由るなり。常に志気をして剣の如くにして、一切の外誘を駆除し、敢て肚裏(とり)に襲近せざらしめば、自ら浄潔快豁(かいかつ)なるを覚えん。


【訳文】
心の中に無用な雑念が、あれこれと乱れ起るのは、外界の事物が心を乱すからである。常に精神を剣のように鋭利にして、一切の外界の誘惑を取り除き、間違っても決して腹の中に寄せつけないようにすれば、自然ときれいさっぱりとした気持ちなるはずだ。



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れみれみ