今日の神坂課長は、次男坊のテニスの練習に付き合っているようです。
「父さん、ここという時に力を発揮するにはどうすればいいと思う?」
「昔から、へその下には丹田という場所があって、そこを鍛えると良いと言われているんだ」
「どうやって鍛えるの?」
「いろいろな方法がネットにも書かれているけど、呼吸法が良いらしいぞ。寝る前に静坐をして呼吸法を実践してみたらどうだ?」
「でも、そんなの迷信じゃないの?」
「それがそうでもないらしい。かつてはそう言われてきただけで根拠はなかったが、最近は科学的にも証明されてきているんだ」
「へぇー、じゃあ、試してみようかな?」
「しっかり練習した上で、丹田を鍛えないとダメだぞ。丹田を鍛えるだけで、テニスがうまくなるわけはないからな」
「そんなのわかってるよ!」
「もうひとつは精神を鍛えることだな。プレッシャーのかかる場面でいかに冷静でいられるか。これも重要だ」
「そうなんだよ、俺はプレッシャーがかかるとミスが出るんだよなぁ」
「余計なことを考えすぎるからだろう。試合に勝ちたいとか、ここを買ったら県大会だとか、いろいろな欲が出るとプレッシャーが強くなりすぎる」
「うん」
「昔はよく無心になれと言われた。俺も野球をやっていて、打席に入るときに無心になろうと努力したが、そんなのはできっこないんだよ」
「じゃあ、どうするのさ?」
「次の一球だけに集中するんだ。スポーツは推理のゲームでもある。相手の打球がどっちに来るか瞬時に予測して、予測通りに来た球をしっか
りと狙った方向に打ち返すんだ」
「予測が外れたらどうするんだよ?」
「それは仕方がない。日頃からよくデータを研究して、予測精度を上げることも重要だろうな」
「練習する以外にもいろいろとやることがあるんだなぁ」
「スポーツも営業の仕事も、現場で戦うわけだが、その前の準備で結果の8割は決まっているんだよ」
「そっか。よし、練習以外の時間を有効に使ってみるよ」
「ゲームする時間を減らしてな!」
ひとりごと
丹田という場所は、実際に神経が網目状に集まっている場所で、東洋医学では太陽神経叢と言われているそうです。
丹田を鍛える(意識を集中させる)ことで、間接的に自律神経の動きを活発化させることになり、その結果安らぎや快感を感じることができるようです。
これにより、ここ一番という時にプレッシャーに負けずに力を発揮できるようになり、良い結果を生じるということが、少しずつですが科学的に解明されてきています。
へその下にある丹田を鍛えるというのは、決して迷信ではなかったのですね。
【原文】
人身にて、臍(せい)を受気の蒂(てい)と為せば、則ち震気は此れよりして発しぬ。宜しく実を臍下に蓄え、虚を臍上に函(い)れ、呼気は臍上と相消息し、筋力は臍下よりして運動すべし。思慮云為(しりょうんい)、皆此に根柢す。凡百の技能も亦多く此くの如し。〔『言志晩録』第79条〕
【意訳】
人間の体では、臍は気を受ける場所であり、生生活動の気は臍から発生している。よく臍下丹田に力を蓄え、心は空しくして、呼吸は臍上と通い合い、筋力は臍下から発するようにして体を動かすべきである。物事を考えるのも、何事かなそうとすることも、みなここに根源がある。どのような技能であっても、ほとんどはこの点が重要である。
【一日一斎物語的解釈】
臍下丹田に力を蓄え、心を空にして取り組めば、何事も首尾良く進むものである。
http://www.bouquet-de-bonheur.com/smart/blog/entry/post-129/より
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