神坂課長がぼやいています。
「なんだよ、ラグビーや野球だけじゃなくて、競馬や競艇も無観客で開催するのかよ」
「ちょっと情報に踊らされてはいませんかね?」
「本田君もそう思う? たしかにコロナが猛威を振るっているのは間違いないし、感染をなるべく抑える必要はあるとは思うけどさ。こうやって騒いでいる人は、去年も今年も日本ではインフルエンザで3,000人以上の人が亡くなっていることを知ってるのかね」
「え、インフルってそんなに死者が出てるんですか?」
石崎君が驚いています。
「そうだよ。でも、インフルで亡くなった方はほとんど報道されないよな。それなのにコロナだけがどこで1人亡くなったみたいな報道をされている」
「情報を見極める目を持つことが大事ですね」
「本田君の言うとおりだよ。まだコロナに関してはわかっていないことが多いというのが事実だと思う。それなのに、事実と憶測をごちゃまぜにして報道するもんだから、必要以上にパニックになっている感じだよな」
「中国が仕掛けたテロだなんてことも、まことしやかに話されています。私の妹がそれを信じてるんですよ」
「ははは。しかし、もしそうなら、自国の人間をあそこまで巻き込まないだろう。困ったことに、そういう作り話の方が人を信じ込ませる魅力があるんだよな」
「本当ですね!」
「俺たちも医療人の端くれだ。冷静な対応をしようじゃないか」
「えー、マジかよ!」
石崎君が突然大声をあげたようです。
「どうした、少年」
「明日、彼女とUSJに行く予定をしていたんですよ。いまネットニュースを見ていたら、USJも3月15日まで休園するという記事が・・・」
「それは残念だな」
「明日は彼女の誕生日なんですよ。参ったなぁ、今から替わりに行けるところを探さないと!」
「石崎、不要不急の外出は慎めって言われているじゃないか」
「本田さん、彼女の誕生日にデートするのは、不要不急の出来事じゃないですよ!!」
「まあ、それはそうかもな。ディズニーもダメだし、その手の場所は全滅だろう」
「仕方ない。高級フランス料理屋でも予約するかな」
「いいね。俺も今日は会長とナイター競艇に行く予定だったんだよ」
「課長、それは確実に不要不急のことじゃないですか!」
「うっ、それはそうだな。ははは、じゃあ俺も会長と高級料亭にでもしけ込むかな」
「それなら『季節の料理 ちさと』に行きましょうよ。きっとママさんもお客さんが少なくて困っているかも知れませんよ」
「おお少年、それは良い提案だ。みんなで行くとするか!」
ひとりごと
COVID-19(新型コロナウィルス)が猛威を振るっており、パニック状態になっています。
家の近所では、マスクだけでなく、トイレットペーパーまで品切れになっています。
報道陣は事実と憶測を正しく報道して欲しいものです。
また、我々も誤報やデマに踊らされず、冷静な対応を心がけましょう!
【原文】
真偽は誣(し)う可からず。虚実は欺く可からず。邪正は瞞(だま)す可からず。〔『言志晩録』第210条〕
【意訳】
本物か偽物かをないがしろにしてはいけない。事実と作り事を混同してはいけない。正しいことと邪なことを誤魔化してはいけない。
【一日一斎物語的解釈】
常に真偽を見極める目を養い、誤った情報に踊らされるようなことは避けねばならない。

