今日の神坂課長は、相原会長とZoom飲み会の最中のようです。
「神坂君、Zoom飲み会って、やってみると楽しいね」
「そうでしょう? 私も結構ハマってます。それに何と言ったってお料理がいいですよね。ちさとママの逸品3種ですから」
「ママ自ら配達しているんだね」
「少人数の場合はですよ。この前10人程度でやったときは、配達業者さんに頼んでいました」
「いやー、このマテガイの酒蒸しは最高だね」
「これは地元産のマテガイだそうです。旨いですよね」
「このお酒とよく合うね。これはどこのお酒? ワインのようにフルーティだよねぇ」
「それも地元産の日本酒で、『醸し人九平次』という銘柄です。このお酒の醸造元は1647年に創業した老舗で、当主は代々、九平次を名乗るんだそうです」
「へぇー、知らなかったなぁ。ママは目利きだね」
「すごいおばちゃん、いや、おねえさんですよ。(笑)」
「最近は物覚えが悪くてね。新しいことを覚えてもすぐに忘れてしまうんだよね。この酒瓶を捨てずにとっておかないと、次に発注できないな」
「ははは。大丈夫ですよ、ママは覚えていますから」
「あー、そうか。ははは」
「でも人間って不思議なものでね。最近のことはすぐに忘れてしまうけど、お世話になったお客様の名前と顔は今でもパッと出てくるんだよね」
「それはすごいですね。会長が心からそのお客様に感謝をされているから忘れないんでしょうね」
「そうかも知れないね。いま起きているコロナウィルスの流行もいつかは忘れ去られてしまうだろう。でも、この時につながったご縁やいただいたご恩は絶対に忘れてはいけないよ、神坂君」
「はい。こういう時こそ既存のお客様を大切にしなければいけないと考えています!」
「それなら安心だ。しかし、ものは考えようだね。コロナウィルス感染症が流行しなければ、Zoomで飲み会をやるなんてこともなかっただろうからね」
「そうですね。これなら遠くに離れている友人ともすぐに飲み会ができますよ」
「そうか、それはいいね。僕も何人か友達に連絡してみようかな。でも、みんな高齢だから、Zoomがうまく使えるかなぁ」
「コロナが落ち着いたら、私が使い方をレクチャーしますから、しばらく私との飲み会でZoomに慣れてください」
「そうだね。神坂君、ありがとう!」
ひとりごと
小生も50歳を過ぎ、本当に物忘れがひどくなってきました。
トイレで用を足している間に「あれをやっておこう」と思ったことも、トイレを出るとすぐに忘れてしまいます。
人の名前もパッと出てきません。
しかし、自分の志や他人から受けたご恩、ご縁などは絶対に忘れてはいけません。
そのためにも感謝の気持ちをもって、心に刻みつけておく必要があります。
【原文】
人は老境に抵(いた)りて儘(まま)善く忘る。惟だ義のみは忘る可からず。〔『言志晩録』第261条〕
【意訳】
人は年を取ると、往々にして物忘れがひどくなる。ただし、自分の分を尽くすことを忘れてはならない。
【一日一斎物語的解釈】
歳とともに物忘れはひどくなるが、自分が信じる道だけは忘れてはならない。