一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2021年01月

第2181日 「矢印」 と 「変化」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人君たる者は、臣無きを患うること莫く、宜しく君無きを患うべし。即ち君徳なり。人臣たる者は、君無きを患うること莫く、宜しく臣無きを患うべし。即ち臣道なり。〔『言志耋録』第255条〕

【意訳】
人の上に立つ者は、優秀な部下がいないことを憂うのではなく、自分自身が明君でないことを憂うべきである。それが君主の徳である。また、部下として働く者は、立派な上司がいないことを憂うのではなく、自分自身が優秀な部下となっていないことを憂うべきである。それが部下としての道である

【一日一斎物語的解釈】
上司は結果が出ないことを人材不足のせいにしてはいけない。また、部下も自分の仕事がうまくいかないことを上司の指示のせいにしてはいけない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の本田さんと同行中の様です。

「課長、我々の業界の人は、どの会社も皆、『人がいない』、『人が足りない』って言っていますよね」

「いわゆる3K業界だからな。でも、そうやって人材不足を理由にする会社に限って、実は社長の人望がないことが多いんだけどな」

「そうですよね。中には結果を出している会社もあります。ウチも人材が豊富だとは思えませんけど、なんとかそれなりに成長できていますよね」

「そこだよ。我が社は、なんだかんだ言っても、矢印が自分に向いている人間が多くいるからな」

「矢印ですか?」

「そう、上司は部下のせいにするのではなく、自分のマネジメントが問題だと考える。部下は部下で、上司の指示が悪いのではなく、指示を正しく実行できない自分の能力が問題だと考える。つまり、相手のせいにせず、自分の問題だと考えることができていると思うんだ」

「なるほど、そういう意味ですか」

「ウチの幹部には、部下のせいにする人はいないからな」

「そうですね。同業の人たちと雑談をすると、よくそんな話を聞きますが、私はピンと来ないですもんね」

「おー、よかった。ということは、本田君も直属の上司の俺が、そういうことはしていないと思ってくれているわけね?」

「もちろんですよ。それは数字に関しては、めちゃくちゃ厳しいとは思いますけどね。部下がダメだから数字がいかないという考え方はしない人だと思っていますよ」

「それ、石崎とか善久も思っているかな?」

「はい、たぶん」

「たぶんかよ。まあ、そう思われたとしたら、まだまだだということだね」

「これって社風ですかね?」

「そうだろうね。俺はやっぱり佐藤部長の影響を大いに受けている。あの人は絶対に人が足りないとか、部下の能力が低いなんて言わないからね」

「あー、たしかにそうですね」

「こんな馬鹿で愚直な俺のことも、ちゃんと理解して、良い点を伸ばそうとしてくれる人だからな」

「やっぱり、神坂課長は佐藤部長を尊敬しているんですね」

「うん、少しでも近づきたいと思ってるよ」

「そういう神坂課長をみて、今度は私たち後輩が神坂課長を尊敬するようになりますね」

「そうなってくれたら嬉しいよ。うん、それ以上に嬉しいことはちょっと考えつかないな!」


ひとりごと

孔子は、「人が自分を理解してくれないことを悲しむのではなく、人に自分が知ってもらえないことを悲しめ」と言います。

他人のせいにして、他人に変わって欲しいと願っているだけでは、何も変わりません。

まずは矢印を自分に向けて、自分の側から変わろうと努力する。

その姿勢が相手の心に響けば、いつしか相手も変わっていくのです。


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第2180日 「威厳」 と 「明察」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人主は最も明威を要す。徳威惟れ威なれば則ち威なるも猛ならず。徳明惟れ明なれば則ち明なるも察ならず。〔『言志耋録』第254条〕

訳】
人の上に立つ者は、明哲で威厳がなければならない。徳のある威厳は人を恐れさせても猛々しくはなく、徳のある明哲さは明哲であっても苛察(細かい点まで厳しく詮索すること)ではない

一日一斎物語的解釈
名リーダーと言われる人は、人を怯えさせない威厳と細部に拘らない明察さを兼ね備えているものだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、総務部の西村部長の部屋で雑談中のようです。

「いよいよ『麒麟がくる』もクライマックスだな」

「あと2回ですね。最終回は15分拡大スペシャルだそうです」

「本能寺での信長の最後、その後の光秀の最後はどう描かれるんだろうなぁ」

「私はけっこう染谷将太の信長は当り役だと思うんですよね」

「うん、蔵之介の秀吉もな」

「あ、なんとなく秀吉ってこんな感じだったのかも?って思いますね。しかし、信長はなぜ討たれたのでしょうね?」

「立派な君主というものは、威厳があっても人を畏れさせるような獰猛さは持たないものだが、信長にはその獰猛さがあったんだろう」

「今回もそんな風に描かれていますね」

「そして、細かいことまで気にし過ぎることも、臣下からしたらしんどいことだろう。明察さは必要だが、小悪をいちいち暴かずに、清濁併せ呑む度量も必要だったのではないかな?」

「あー、そういうことなんですかね。さすがは長年人事をやってきた人だけあるな」

「お、褒めてくれるか」

「そういう理論的に人を視る点はですよ」

「どういうことだよ?」

「西村さんご自身は、陰で赤鬼と呼ばれるくらい恐れられているわけですから、獰猛さもありますし、結構細かいことをねちねち指摘しますよね。つまり実際のリーダーとしては・・・」

「相変わらず明け透けに物を言う奴だな。そういう君も同じ穴の狢だろう」

「はい、その点はもちろん否定しません」

「ということは、君も私も気をつけないと、部下に刺されるかも知れないってことだな」

「それは怖いですね。刺してきそうな奴が何人か頭に浮かびます」

「そう思うなら、いまのうちに気をつけておくべきじゃないか」

「おっしゃるとおりです。もっと寛大な威厳と大らかな明察さを身につけるように精進します!!」

「お互い気をつけて、職務を最後まで全うしようじゃないか」

「はい。じゃあ、今週の『麒麟がくる』を見終えたら、また話に来ます」

「うん、待ってるよ!!」


ひとりごと

いよいよ大河ドラマ『麒麟がくる』もクライマックスを迎えますね。

今回の信長、秀吉、光秀のキャスティングはお見事だという印象を持っています。

天下を取ったものの、それゆえに孤独にさいなまれ、次第に暴走を始めた信長。

一斎先生が指摘しているような、威厳と明察さを欠いてしまったのでしょうか?

それにしても、最終回で本能寺の変がどう描かれるのか?

とても楽しみです!!

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第2179日 「役割」 と 「分際」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人主は宜しく大体を統ぶべく、宰臣は宜しく国法を執るべし。文臣は教化を敷き、武臣は厲(はげ)まし、其の余小大の有司、各々其の職掌を守り、合して以て一体と為らば、則ち国治むるに足らず。〔『言志耋録』第253条〕

【意訳】
君主は国政の大局を統治すべきであり、宰相は法律を正しく執行させることを旨とすべきである。また文官は民衆を教え導き、武官は武士を励まし、残りの各種役人はそれぞれ自分の職分を全うし、こうして互いに一致団結していれば、国を治めることはけっして難しくはない

【一日一斎物語的解釈】
組織においては、それぞれのメンバーが自分の役割をよく理解して最適な行動をとるようにすべきである。このような組織であれば、まとまりのある組織となり、成果も必ず上がるはずである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君の報告を受けているようです。

「おいおい、なんでまたそこまでこじれてしまったんだ?」

「すみません。阿久井先生とは2年以上お付き合いさせて頂いているので、なんとか解決できると思っていました」

「しかし、製品の初期不良なら、すぐに交換すべきだったんじゃないのか?」

「はい、結果的にはそうだったと思います・・・」

「なんで、そこまでお前ひとりで解決することに拘ったんだ?」

「この程度のクレームでいちいち課長に来てもらうのは申し訳ないし、営業マンとしても情けないことだと思ったので・・・」

「そういうことか。しかし、上司の役割は上司に果たさせてくれよ」

「え?」

「クレームが発生したら、責任者として謝罪に同席するのは当然のことだし、それが俺の役割でもあるん
だからさ」

「役割ですか?」

「そう。なんでもかんでも同行してくれと頼むのは違うと思うけど、今回のようなケースなら迷わず声を掛けてくれて良かったと思うよ」

「良いんですか?」

「担当施設のお客様と日頃の人間関係を深めるのは、お前たち担当者の役割だ。しかし、定期的にご挨拶に伺ったり、クレームが発生したときにお詫びにあがるのは、上司である俺の役割なんだよ」

「はい」

「気持ちはよーくわかるぞ! 俺も、なるべく自分一人で解決しようという意識は強かったからな。でも、それで手痛い失敗をしたこともあるよ」

「どんな失敗ですか?」

「デバイスの納期遅れが発生したときに、ある施設のドクターが欠品は許さないと言うから、別の施設から借りたんだ。そうしたら、欠品が長引いて、借りた施設のドクターからもお怒りの電話が入ってさ」

「それはヤバいですね」

「その電話に出たのが、当時の佐藤課長さ。あとで、めちゃくちゃ叱られたよ。他施設の物を貸し借りするようなことは、今後一切止めなさいってな。そういう時は遠慮せずに上司を使えとも言われた」

「今の課長と同じことを言われたんですね」

「そう。営業2課のメンバーはみんなそれぞれに役割を分担しているんだ。それぞれが自分の役割をしっかりと果たせばいい。自分の役割以上のことをやろうとすれば、かえってチームの和が乱れることにもなりかねないんだよ」

「わかりました。今後は役割を意識します」

「そうしてくれな。ただ、なるべく自分の役割を大きく広くとらえてくれよな。それぞれが守備範囲を狭めたら、かならずポテンヒットが落ちるからな」

「はい。皆さんと相談しながら、自分の役割を担うように努力します!」

「いいねぇ! さぁ、そうと決まればさっそく行くか!」

「え、今からですか?」

「まだ19:30だろ。車を飛ばせば夜診終りに阿久井先生に会えるはずだ!!」


ひとりごと

メンバーそれぞれが自分の分を弁えて、自分の役割をしっかり果たせば、組織は強くなり、結果も良くなるはずです。

無理に他人の分まで自分がやろうと思う必要はありません。

しかし、一方で自分の役割を狭く捉え過ぎれば、ポテンヒットが生まれます。

ある程度、共有する守備範囲を意識しつつ、それぞれの役割に徹する意識が必要なのです。


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第2178日 「実情」 と 「諫言」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人君たる者は宜しく下情に通ずべきは固よりなり。人臣たる者も亦宜しく上情に通ずべし。不(しか)らざれば、諫諍(かんそう)も的ならず。〔『言志耋録』第252条〕

意訳
人の上に立つ者は、つねに部下の人たちの実情を把握しておくべきである。また、部下の人たちも上に立つ者の実情を理解しておく必要がある。そうでないと、上位者を諌める場合にも的を外してしまう恐れがある

一日一斎物語的解釈
上司の実情を常に把握しておかねば、上司の考えや意見に物を申すときに的外れとなる恐れがあるものだ。


今日のストーリー

営業部特販課の雑賀さんが、喫茶コーナーで一人でブツブツ言っているようです。

「おい、雑賀。お前、何をひとりでブツブツ言ってるんだ」

「うわぁ、びっくりした。神坂課長、居るなら言ってくださいよ」

「今ちょうど通りかかったんだよ。なんだお前、目が血走ってないか。(笑)」

「それはそうですよ。ウチの課長は全然私の意見に耳を貸さないんですから」

「相変わらず仲が良いなぁ、お前と大累は」

「勘弁してくださいよ。犬猿の仲という言葉がピッタリの関係ですよ!」

「そうかなぁ、喧嘩するほど仲が良いとも言うじゃないか」

「今どきそんなの流行りませんよ」

「流行りの問題か??」

「神坂課長は、部下からのアドバイスを素直に聞いてくれるタイプですか?」

「俺がか? 自分で言うのもなんだが、素直に聞けないタイプだな」

「大累課長と一緒ですね」

「そうかもな。だからこそ、お前たちがよく俺たちを観察して、諸事情も把握して意見を言ってくれると良いんだけどなぁ」

「それは勝手ですよ」

「でも、俺だってそれなりにはお前たちの実情をいろいろと把握した上でアドバイスをしているんだぞ。本当に落ち込んでいる時に叱ったら、余計に凹むだろうな、とか考えてさ」

「ウチの課長もですかね?」

「それは間違いないよ」

「へぇー」

「この前も、一緒に飯を食ったときに言ってたぞ。『雑賀にも彼女ができたらしいんです。あいつにも早く結婚して、幸せになってもらいたいんですよね』ってな」

「え? 大累課長は私に彼女ができたことまで知っているんですか?」

「俺も知ってるぞ」

「いつの間に? そういえば最近、やたらに早く帰れって言ってくるなぁとは思っていたんです。残業代を支払いたくないからだと思ってました」

「そんな目で部下のことを見ている上司は、ウチの会社には居ないさ。だから、お前たちメンバーもちょっとでもいいから、上司の立場とか環境なんかを理解してあげて、その上で意見を言って欲しいんだよ」

「わかりました。神坂課長、なにか大累課長に関するとっておきのニュースはないですか?」

「あるぞ。実はな、奥さんが三人目を身籠ったらしいんだ」

「それは凄いニュースですね。じゃあ、その辺から話をすすめて、自分の意見を聴いてもらえるか試してみます!」

「あんまりわざとらしいのはダメだぞ。大累家に新しい家族が誕生することを心から祝う気持ちを忘れるなよ!!」


ひとりごと

上司も人間です。

なるべく心を落ち着けて、いつでもメンバーの話を聞ける体制を作っておこうと思いつつ、怒りや悲しみでそれを忘れてしまうこともあります。

だからこそ、組織、メンバー、上司自身にとって役に立つと信じる意見があれば、積極的に伝えて欲しいのです。

上司も人間であること、喜怒哀楽の感情は持っていることを理解した上で、上手に意見を述べることを心掛けてみましょう!!


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第2177日 「情」 と 「善」 についての一考察

今日のことば

【原文】
唐虞の治は只だ是れ情の一字のみ。極めて之を言えば、万物一体は情の推に外ならず。〔『言志耋録』第251条〕

【意訳】
伝説の皇帝である堯と舜の治世は「情」の一字に極まるといえる。極言すれば、万物をひとつにするものは、すべて情を推し広げたものに外ならない

一日一斎物語的解釈
情を重視したマネジメントこそ、人を動かす要諦である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTubeで『孔田丘一の儒学講座を観ているようです。

「しかし、俺もいつのまにかこの爺さんにハマってしまったな。今日はどんなテーマだろう?」

「諸君、ご機嫌いかがかな? どうやら緊急事態宣言は延長されるのではないかな?」

「経済の停滞もだいぶ深刻さを増してきおった。そろそろこちらも限界が近いじゃろう」

「こうした心がギスギスしそうな時代にこそ、儒学を学んだ人とそうでない人では行動に違いがでるんじゃ」

「禍福終始を知って惑うのは小人、惑わざるは君子じゃからな」

「さて、今こそ『情』を大切にすべきときですぞ。あんたがもし人の上に立っているならば、情を大切にしなされ」

「かつて中国における伝説の皇帝である堯や舜は、自分の息子に帝位を譲らずに、臣下の中から有能な者を選んで帝位を譲っておる」

「これが禅譲ですな。自分の愚息に位を譲れば、息子は満足するが、庶民は満足しない。有能な臣下に位を譲れば、息子は悲しい目に遭うが、庶民は幸せになるだろう。どちらが世の中のためになるか、どちらが多くの人にとって幸せなことか。そう考えれば答えは明らかだったわけじゃ」

「情を失ったら、人はついてきませんぞ」

「わしは常々こう思っておる。マネジメントをする際は、人には性善説で接し、仕組みは性悪説で作れ、とな」

「性善説と性悪説のどちらが正しいかではない! 大事なのは場面で使い分けることじゃろうて」

「諸君の廻りをみてごらんなさい。根っから腐ったような悪人はそうはいまい。みんな、善い所をもっている人間ばかりじゃろうて」

「だから、人と接する時は、皆が善人だと信じて接すると良いじゃろう」

「しかし、どんな人でも魔が差すこともある。だから、悪いことができないように仕組みを作っておけばよい。物を勝手に倉庫から持ち出せるような管理体制だから、盗難が発生するのではないかな?」

「とにかく、大事なのは『情』だよ。『情』を失ったら、マネジメントではなくコントロールになってしまいますぞ!!」

「今日はこの辺にしておきますかな。こんな悪態ばかりのわしでも、ちっとは善い所もあるもんですぞ。それが見抜けないようでは、諸君らの目は節穴じゃな。では、またお会いしましょう!!」
動画が終わりました。

「相変わらず言いたいことだけ言って突然終わるよな。でも、たしかにそうだな。俺の部下も良い奴ばかりだ。でも、そんな奴らがいつまでも良い奴でいられるように、仕組みで補ってあげる必要はありそうだ。明日、部長に相談してみよう!」


ひとりごと

小生もかつて、性善説と性悪説ではどちらが正しいのかと悩んだことがありました。

そして出した結論が、ストーリーにも書いたように、「人には性善説で、仕組みは性悪説で」というものでした。

やはり、人間は信頼関係が築けていなければ、良い仕事はできません。

そうであるなら、上に立つ人が下の人を善と信じて接するべきです。

ただし、仕組みでそれをサポートするのです。

魔が差した、なんてことができないように!!


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第2176日 「震発」 と 「兌悦」 についての一考察

今日のことば

【原文】
「帝は震に出ず」とは、日出(ひいずる)の方なり。故に東方の人は義勇有りて、震発の気多きに居る。乃ち頼る可きなり。「兌(だ)に説言(えつげん)す」とは、日没の方なり。故に西方の人智慧有りて、兌悦の気多きに居る。卻って虞(うれ)う可きなり。易理是(かく)の如し。宜しく察を致すべし。〔『言志耋録』第248条〕

【意訳】
『易経』説卦伝にある「帝は震に出ず」とは、太陽が昇る方角を指している。それゆえに東方の人は正しい心と勇気を兼ね備えており、奮発する気性を有しているので頼りになる。『易経』説卦伝にある「兌に説言す」とは、太陽が沈む方角を指している。それゆえに西方の人は智慧があって、よろこびの気が多いので、かえって憂慮すべきことである。易の理とはこのようなものであるから、よく省察すべしである

【一日一斎物語的解釈】
奮発心がある人は信頼できるが、悦びが溢れている人は気が緩むので禍が起きないか心配になる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、相原会長とそれぞれの自宅からzoomを使ってナイター競艇を観戦しているようです。

「神坂君、はやくライブであのモーター音が聞きたいねぇ」

「それとガソリンの臭いですね。あれこそがライブの醍醐味ですからね。お、そろそろ10レースのスタートですよ」

レースの結果は、大本命の1号艇がスタートで出遅れ、3連単5-6-2という大穴舟券、いわゆる万舟兼(まんしゅうけん)となりました。

「あれ、その嬉しそうな顔は? さては神坂君、今のレース当てたね?」

「いやー、1号艇を外して買ったんですけど、見事に読みが当たりました!」

「顔から笑顔が溢れてこぼれ落ちそうなくらい表情が緩んでいるよ」

「2連単ですけど、48倍ありますから。500円買っていたので、24,000円になりました。

「さすがは師匠だ!」

その後、11レース、12レースを観戦しましたが、二人とも外れてしまったようです。

「会長、残念でしたね。少し反省会をしてzoomを終えましょうか?」

「そうだね。お互いに軽く1~2杯やって終ろう。それにしても、さっきの神坂君の顔は今思い出しても笑ってしまうなぁ」

「え、そんなに喜び溢れた顔をしていましたか?」

「うん。もしライブで競艇場に居たら、お客さん全員が君がこのレースを当てたんだなと思っただろうね」

「ちょっと恥ずかしいです。でも、本当なら勝者の私がご馳走したいところなのに、オンラインではそれもできずにすみません」

「その必要はないよ。僕も当てたから」

「え? 11も12も外れたと言ってませんでしたか?」

「うん。でも10レースは当たった。えー、それ私も当てたレースじゃないですか! もしかして、会長・・・」

「はい。3連単で224倍だったかな。実は僕も500円買っていたんだ」

「マジですか! っていうことは、112,000円の払い戻しじゃないですか!!」

「そうみたい」

「なんで黙ってたんですか?」

「だって、神坂君があんまり嬉しそうだったから、申し訳なく思ってね」

「うわぁー、余計に恥ずかしいな。おまけに、10レースが当たったから調子に乗って、11と12レースでだいぶ突っ込んじゃったんですよね」

「僕はマイペース。つねに、冷静にギャンブルをやることが大事だと思ってる」

「会長、師匠の名を返上致し、もう少し精進させていただきます」

「うん、それがいいかもね!」


ひとりごと

この章句の本来の意味はなかなか難解です。

小生なりの解釈は、第1042日に記載していますので、お時間のある方はご覧ください。

ここは、かなり超訳のイメージで解釈をしています。

いずれにしても、人間は喜び過ぎるとロクなことはありません。

ほどほどに悦び、常に絶頂状態に登らないように注意が必要ですね。


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第2175日 「天災」 と 「人災」 についての一考察

今日のことば

【原文】
雷霆(らいてい)地震は人皆驚くも、而も未だ大いに驚くに至らず。但だ大熕(だいこう)一たび響きて不意に出ずれば、則ち喫驚(きっきょう)するを免れず。其の人為に出ずるを以てなり。是に知る、致す可きは天にして、怕る可きは人なることを。〔『言志耋録』第247条〕

【意訳】
雷と稲妻や地震には人々は皆驚くが、それでも大いに驚くという程ではない。ただ、大砲が不意に一発ドーンと轟けば、人々は皆驚きを隠さない。それは人間の仕業だからである。これでわかることは、敬うべきものは天であり、恐れるべきものは人間だということである

【一日一斎物語的解釈】
恐れるべきは天ではなく、人である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の新美課長と歓談中のようです。

「ようやくCOVID-19も幾分落ち着いてきた感じもありますね」

「もうすぐ医療機関の人には順次ワクチンが投与される。そうすれば、さらに落ち着いてくるかもな」

「しかし、特効薬が開発された訳ではないので、しばらくは闘いが続きますね」

「そういうことだろうな。それにしてもさ、新美」

「なんですか?」

「怖いのは天災より人災だよな」

「え?」

「新型コロナウィルスが誕生したことは天災かも知れないが、それがここまで世界中に広がったのは人災と言えるんじゃないかな」

「そうかも知れませんね。武漢で発生した感染症を世界にバラまいたのは中国人です。文明が進歩して、交通手段が発達し、世界が近くなったことが影響しているとすれば、それは人災と考えることもできますね」

「そう思うんだよ。東日本大震災のときだって、もちろん地震や津波による被害も大きかったけど、それ以上に深刻な危機をもたらしたのは、原発だったからな」

「便利になることは、常に別の危険性を秘めているんですね」

「世界中の歴史を見ても、様々な王朝や国家が衰亡する際の真の原因は人にあることが多いよな」

「はい」

「昔の戦は一対一の戦いだったから、戦死者の数もおのずと少なかった。ところが、人間が核兵器なんかを開発してしまったせいで、数十万人の命を一気に奪うような戦争が可能になってしまった」

「そうですね。天災で何十万人もの命が奪われるようなことは稀ですもんね」

「やっぱり人間は、あんまり楽になることばかり考えていてはダメだな」

「『不自由を常と思えば不足なし、ですね」

「お、家康公遺訓か。『心に望み起らば、困窮したる時を思い出すべし』、だな」

「ということで、今日はN大学には電車で行ってください」

「えー、今日は車を点検に出しているんだよ。ちょっとだけ遠回りするだけじゃないか、乗せて行ってよ」

「不自由を常と思えば不足なし!!」


ひとりごと

世の中が便利になったことで、かえって大きな不具合が起きているのが現代ではないでしょうか?

たとえば、停電してしまうと電気製品はすべてただの器械の塊に過ぎなくなります。

真冬に停電が起きると、エアコンもファンヒーターも使えません。

しかし、ひと昔前なら主力製品であった石油ストーブであれば、停電時でも暖をとることができます。

便利さに慣れ過ぎて、思わぬ災害を蒙らないように、日ごろから準備しておきたいですね。


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第2174日 「奇功」 と 「雅素」 についての一考察

今日のことば

【原文】
凡そ物は、奇巧賞す可き者有り。雅素(がそ)賞す可き者有り。奇巧にして賞す可きは一時の賞なり。雅素にして賞す可きは則ち無限の賞なり。真に之を珍品と謂う可し。蘭人の齎(もたら)し来る物件は率(おおむ)ね奇巧なり。吾れ其の雅致無きを知る。但だ其の精巧は則ち懼る可きの一端なり。〔『言志耋録』第246条〕

【意訳】
だいたい全ての物品には、珍しくて精巧な点を鑑賞すべきものがある。また、優雅で飾り気がない点を鑑賞すべきものもある。珍奇で精巧な品物を鑑賞するのは一時であるが、優雅で簡素な品物は無限に鑑賞することができる。こういうものを真の珍品というべきである。オランダ人が持ち込む物品は、概ね珍奇で精巧なものである。私はそこに優雅さが足りないと感じている。しかし、その精巧さには目を見張るものがあるのは否めない

【一日一斎物語的解釈】
ホンモノとは長く側に置いても飽きることのないものをいう。一時的に鑑賞して、すぐに飽きてしまうものはホンモノとは言えない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行しているようです。

「石崎、今日はラジオの番組もつまらないものばかりだから、俺の好きな曲を聞いてもいいか?」

「はい、どうぞ」

「このUSBでつなげば聞けるんだよな。お、つながった!」

カーステレオから流れてきたのは、サム・クック(1960年代に活躍したアメリカのソウル歌手)のようです。

「へぇー、なんだかカッコいい曲ですね」

「お、洋楽を聴かないお前でもわかるか?」

「はい、声がカッコいいです」

「うん、この声は、ロッド・スチュワートも憧れた声だからな。ところで、この曲は俺が生まれるはるか前、1962年の曲なんだぞ」

「え、マジですか? 全然古さを感じなかったですけど、じゃあ今から50年以上前の曲ってことですか?」

「そう、凄いよな。たしかに今聞いてもカッコいい。こういう曲をホンモノって言うんだよ。一瞬だけヒットして、すぐに聴かれなくなるような曲はホンモノとは呼べないな」

「じゃあ、私の好きなモモクロはどうですかね? 50年後も聞かれているかな?」

「聞かれているわけねぇだろ! というか、5年後には誰も聞いてないんじゃないか?」

「そんなことないですよ! 良い曲もたくさんありますよ」

「どっちにしても50年後じゃ、俺は生きていない可能性が高いから、お前がしっかり確かめてくれ」

「そんなこと言わずに、今度は私の好きなモモクロを聞きましょうよ」

「石崎、俺が悪かった。頼むから勘弁してくれぇ~!」


ひとりごと

小生が師事している永業塾の中村信仁塾長は、よくこう言っています。

「売れる本が善い本だとは限らない。売れ続ける本が良い本だと言えるのだ」

これは楽曲にも当てはまるでしょうし、芸術作品全般に当てはまることでしょう。

ところでモモクロファンの皆さんにはここで謝罪をしておきます。

小生も若かりし頃は、松田聖子、小泉今日子といったアイドルにハマっていたのですから・・・。


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第2173日 「水火」 と 「人間」 についての一考察

今日のことば

【原文】
水火は是れ天地の大用なり。物に憑(よ)りて形を成し、定体有ること無し。近ごろ西洋出す所の奇巧大小の器物を観るに、蓋し皆水火の理を尽くし以て之を製せり。大砲気船の如きも、亦水火の理に外ならざるなり。〔『言志耋録』第245条〕

意訳
水と火は天地の余すところのない働きである。物によって形を変え、定まった形はない。最近西洋製の珍奇で精巧な大小の器物をみると、私が思うには、すべて水と火の理を究めつくして作られている。大砲や蒸気船のようなものも、水と火の理によって製造されていることに変わりはない

一日一斎物語的解釈
世の中にあるもので、水と火を利用して作られていないものはない。まさに水と火は天地の大きな恵みなのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、定時後、佐藤部長の部屋で『言志四録』について語り合っているようです。

「一斎先生が、水と火は天地の大用だと書いているのは、なるほどなぁと思いました」

「水と火についての一斎先生の言葉は、結構あるよね」

「はい。その中でも『言志耋録』第246条の言葉は面白いなぁと思ったんですよ」

「西洋の器械類はみな水と火の理を尽くして作られているというところかな?」

「そうです。当時の最新の火器といえば大砲でしょうし、水器と呼べる器械といえば蒸気船ですよね」

「なるほど、その通りだね」

「この言葉を読んで、改めて水と火によって、人間は生かされているなぁと感じたんです」

「もちろん、人間だけじゃなくて、すべての生き物がそうだろうね」

「はい。考えてみれば医療機器にも水や火の理が応用されていますよね」

「そうだね。電気メスとかウォータージェット、洗滌装置なんかもあるねぇ」

「いくら内視鏡が優れた医療機器だと言っても、洗滌装置がなければ、ここまで普及しなかったでしょうし、電気メスがなかったら治療はできませんからね」

「だから一斎先生は、水と火が天地の恵みの中でも大きなものだと言っているんだよ」

「しかし、私がこの時間になると自ら連想するのは、やっぱりお酒です。お酒も火がなければ熱燗でいただけませんね」

「ははは、突然話の方向性が変わったなぁ」

「部長、ちょっとだけちさとママのところに寄って帰りませんか?」

「そうしようか。今から行けば18時半には着けるから、30分はお酒がいただけるね」

「考えてみれば、ちさとママは、水と火の理を尽くして、最高の料理を提供してくれていますねぇ」

「では、片付けて社を出ようかね?」

「はい、私も机を片付けてすぐに1階に降ります!」


ひとりごと

水と火の力を借りなければ、現代の人間の生活はまったく機能しません。

しかし、ここまで水と火を活用できているのもまた人間だけです。

天地の大用をいかんなく活用しながら、時に手痛いしっぺ返しをくらいつつ、これからも人間は新しいものを作り続けていくのでしょう。


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第2172日 「敬意」 と 「畏怖」 についての一考察

今日のことば

【原文】
天地の用は水火より大なるは莫し。天地は体なり。満世界は皆水火なり。故に敬す可き者、水火に如くは莫く、懼る可き者も、亦水火に如くは莫し。〔『言志耋録』第245条〕

【意訳】
天地の作用は水と火よりも大きなものはない。天地そのものは本体である。現象世界のすべては皆水と火の作用である。したがってもっとも敬意を表すべきは水と火であり、また最も恐れ慎むべきものも水と火なのである

【一日一斎物語的解釈】
自然界の中で水と火こそ、もっとも敬意を表すべきものであり、恐れ慎むべきものである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、自宅で休日を過ごしています。

「勇、そういえば14時から断水になるから、トイレに行くならいまのうちだよ」

「おい、マジか! 早く言ってよ」

「まだ5分あるじゃない」

「5分で大を済ますのは、俺には不可能だ」

「トイレで本を読んだりするからでしょ」

「書斎のない俺にとって、トイレは俺の大切な書斎みたいなものなんだ」

「ばかじゃないの!」

神坂課長は慌ててトイレを済ませたようです。

「こんなに早く大を済ませたのは人生初だな」

「大袈裟でしょ!」

「しかし、人間というのは水がなかったら何もできないような暮らしの設計をしてしまってるんだなぁ」

「そもそも人間の身体の70%は水分だっていうしね」

「たしかにそうだね。こうやって断水になってみると、水のありがたみがよくわかるな」

「大事に使わないとね」

「うん。雨が降らなきゃ水不足になるし、降り続けば水害となる。水というのは必要なものでもあり、恐ろしいものでもあるんだよな」

「それは火も同じじゃない? いまCMで、人類が火を発見してから、人間の生活が始まったみたいなのをやっているけど、その火によってこの前の火事のような怖いことも起こるよね」

「そうだなぁ」

「もっと水や火に感謝をしなければいけないな。そして大切に、丁寧に扱わないと」

「うん」

「ところで断水って何時まで」

「17時までだよ」

「長いなぁ。よりによって、ちょっと下し気味なんだよね。最悪、出しっ放しでもいい」

「ダメ! 絶対ダメ! 死ぬ気で我慢してください!!」


ひとりごと

昨日に続き、水と火についての章句です。

どれだけ化学が進歩しても、雨水がなければ人間は生きていけません。

人間の生活は、必ず雨が降るという前提のもとに作られているからです。

もし、天変地異で雨が1年間降らなかったら、宇宙に行けるほどの科学技術を持ちながら、人類は滅亡してしまうでしょう。


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