今日のことば
【原文】
人君たる者は、臣無きを患うること莫く、宜しく君無きを患うべし。即ち君徳なり。人臣たる者は、君無きを患うること莫く、宜しく臣無きを患うべし。即ち臣道なり。〔『言志耋録』第255条〕
【意訳】
人の上に立つ者は、優秀な部下がいないことを憂うのではなく、自分自身が明君でないことを憂うべきである。それが君主の徳である。また、部下として働く者は、立派な上司がいないことを憂うのではなく、自分自身が優秀な部下となっていないことを憂うべきである。それが部下としての道である。
【一日一斎物語的解釈】
上司は結果が出ないことを人材不足のせいにしてはいけない。また、部下も自分の仕事がうまくいかないことを上司の指示のせいにしてはいけない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業2課の本田さんと同行中の様です。
「課長、我々の業界の人は、どの会社も皆、『人がいない』、『人が足りない』って言っていますよね」
「いわゆる3K業界だからな。でも、そうやって人材不足を理由にする会社に限って、実は社長の人望がないことが多いんだけどな」
「そうですよね。中には結果を出している会社もあります。ウチも人材が豊富だとは思えませんけど、なんとかそれなりに成長できていますよね」
「そこだよ。我が社は、なんだかんだ言っても、矢印が自分に向いている人間が多くいるからな」
「矢印ですか?」
「そう、上司は部下のせいにするのではなく、自分のマネジメントが問題だと考える。部下は部下で、上司の指示が悪いのではなく、指示を正しく実行できない自分の能力が問題だと考える。つまり、相手のせいにせず、自分の問題だと考えることができていると思うんだ」
「なるほど、そういう意味ですか」
「ウチの幹部には、部下のせいにする人はいないからな」
「そうですね。同業の人たちと雑談をすると、よくそんな話を聞きますが、私はピンと来ないですもんね」
「おー、よかった。ということは、本田君も直属の上司の俺が、そういうことはしていないと思ってくれているわけね?」
「もちろんですよ。それは数字に関しては、めちゃくちゃ厳しいとは思いますけどね。部下がダメだから数字がいかないという考え方はしない人だと思っていますよ」
「それ、石崎とか善久も思っているかな?」
「はい、たぶん」
「たぶんかよ。まあ、そう思われたとしたら、まだまだだということだね」
「これって社風ですかね?」
「そうだろうね。俺はやっぱり佐藤部長の影響を大いに受けている。あの人は絶対に人が足りないとか、部下の能力が低いなんて言わないからね」
「あー、たしかにそうですね」
「こんな馬鹿で愚直な俺のことも、ちゃんと理解して、良い点を伸ばそうとしてくれる人だからな」
「やっぱり、神坂課長は佐藤部長を尊敬しているんですね」
「うん、少しでも近づきたいと思ってるよ」
「そういう神坂課長をみて、今度は私たち後輩が神坂課長を尊敬するようになりますね」
「そうなってくれたら嬉しいよ。うん、それ以上に嬉しいことはちょっと考えつかないな!」
ひとりごと