一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2021年02月

第2209日 「老少」 と 「摂理」 についての一考察

今日のことば

【原文】
身には老少有りて心には老少無し。気には老少有りて理には老少無し。須らく能く老少無きの心を執りて、以て老少無きの理を体すべし。〔『言志耋録』第283条〕

意訳
人間の身体には若さと老いという区別はあるが、人間の心には老いも若きもない。同様に、気というものには老いと若さの別があるが、天から生じる理には老いも若きもない。なにごとも、老いも若きもない心を活用して、老いも若きもない道理を実践すべきである

一日一斎物語的解釈
若さや老いにこだらない心で、すべての物事に接し、老少など関係のない理を学びとらなければならない。


今日のストーリー

昨日に引き続き、神坂課長はY社の菊池さんと「季節の料理 ちさと」で食事中のようです。

「それにしても、ちさとママはどうしてそんなにお若いんですか?」

「え、若く見える? ところで、菊池君は私のことを何歳だと思っているの?」

「四十代前半だと思っていました」

「ブッ」

「神坂さん、いきなりどうしたんですか。汚いなぁ」

「菊池君、お世辞にも限度ってものがあるぜ。ママが四十代前半って。ははは」

「神坂、笑いすぎ!!」

「まぁ、たしかに、六十代にしては若く見えるよなぁ」

「こら! まだ五十代前半ですけど!」

「信じられないです。絶対五十代には見えません」

「うれしいなぁ。もし、菊池君から見て、私が若く見えるとすれば、常に心を若く保とうとしているからかなぁ」

「心を若く、ですか?」

「うん。体はどうしても少しずつ衰えてはくるけど、心は死ぬまで若くいられると思うの。心の若さを失ったときに、人は本当に老いてしまうんじゃないかな」

「なるほど」

「自分が老けたと思うと、新しいことや挑戦的なことから目を背けがちになるよね。大切な真実には老少なんてないはずなのに、自分の心が勝手にすべてを老いさせてしまうんだと思っているの」

「ママは、日頃そんなことを考えているんですか。すごいなぁ」

「な、だから、君とか俺みたいなおつむの弱い男共には、このお方はご興味がないのさ」

「そうですねぇ。やっぱり、俺には高嶺の花です・・・」

「そんなことないわよ。私は若い男の子が大好きなの。だって、輝く未来が待っているじゃない」

「本当ですか!!」

「おいおい、菊池君。騙されたら駄目だぞ。そうやって、何人もの常連客をカモにしてきたのがこの美魔女様だからな」

「もし、カモに慣れるなら、ネギを背負ってママのところに行きます!」

「だめだこりゃ!」


ひとりごと

人は年を重ねただけでは老いない。理想を失うとき人は老いる。

これは、有名なサミュエル・ウルマンの『青春』という詩の中の一節です。

心が老いると、観るものまで老いてしまうのかも知れません。

常に希望と理想を抱き、宇宙の摂理に老少はないことを肝に銘じて、一度しかない人生を最後まで若く生き抜きましょう!!


negi_green_onion

第2208日 「五感」 と 「洗心」 についての一考察

今日のことば

【原文】
色の清き者は観る可く、声の清き者は聴く可く、水の清き者は漱(くちすす)ぐ可く、風の清き者は当たる可く、味の清き者は嗜む可く、臭(におい)の清き者は嗅ぐ可し。凡そ清き者は皆以て吾が心を洗うに足る。〔『言志耋録』第282条〕

【意訳】
清らかな色彩を鑑賞し、清らかな音を聴き、清らかな水を飲んで口を潤し、清らかな風に触れて、清らかな食事を楽しみ、清らかな香りを嗅ぐのは、とても良いことである。このように、総じて清らかなものは、われわれの心を洗い清めるに足るものだ。

一日一斎物語的解釈
清らかなものを五感で感じると心が洗われる思いがするものだ。


今日のストーリー

「やっぱりちさとママのお料理は最高だなぁ!」

「はい。ここのお店は本当にお料理がおしいですよね!」

今日の神坂課長は、Y社の菊池さんと「季節の料理 ちさと」に来たようです。

「ママの料理には透明感があるだろう。なにか清らかなものを胃袋に入れる感じがするよな」

「はい。体が喜んでいます」

「それに見た目、香りにもこだわりがあるからね。食べ方を間違えると一々叱られるのが面倒なんだけどさ。(笑)」

「叱られてみたい!」

「菊池君、Mなの? まぁ、いいや。そして、ここで出すお酒。これがまた絶品なんだよ。いろんな地方のあまり知られていない日本酒を出してくれるんだ。他の店じゃ、そうそう飲めないぜ」

「これ日本酒ですよね? めちゃくちゃ飲みやすいし、クセがないですね」

「これは俺が大好きな熊本の日本酒で『泰斗』っていう銘柄だよ。米の透明感を感じるでしょう。まさに清酒って感じの清らかさを感じて、心まで奇麗になる気がする逸品だよ」

「やっぱりこのお店は最高だなぁ」

「一人でも来ればいいじゃん!」

「ママとしゃべるのが緊張するので、神坂さんが居てくれないと不安なんです」

「ははは。菊池君は意外とうぶなんだな」

「でも、本当に五感を楽しませて頂けるお店ですよね」

「なるほど、五感を楽しませる店か。たしかにそうかもな!」

「どうしたの、神坂君。あなたがそんなに褒めるなんて、きっと何か裏があるんでしょ?」

「菊池君、問題は店主の心がちょっと汚れていることなんだよなぁ」

「か、神坂さん!! そ、そんなことないですよ。ちさとママは絶対心も綺麗だと思います」

「じゃあ、一回抱かせてもらえば?」

「か、神坂さ~ん!!」

「菊池君、耳たぶが真っ赤だよ」

「神坂! そうやって後輩をいじめるんじゃないの! だいたい、私が誰とでも寝る女みたいな言い方をしないでよ!」

「そうですよ、神坂さん!」

「じゃあ、ママが『抱いてって言ってきても、菊池君は断るんだな?」

「それは、その、あの・・・」

「ははは。どうやら一番心が清らかなのは、菊池君みたいだな。(笑)」


ひとりごと

五感で清らかなものを感じると、心が洗われる、という表現は楽しいですね。

小生は、お線香が好きで、京都に行くとちょっとお高いお線香を買ってきて、時々部屋で炊いています。

とても良い香りが広がって、心が落ち着くのを感じるものです。

自分の心を洗ってくれる香りや、景色や料理やお酒を持っておくことは、人生においてとても大事なことかも知れません。


taito

第2207日 「偉人の書」 と 「心の修養」 についての一考察

日のことば

【原文】
古書画は皆古人精神の寓する所にして、書尤も心画たり。此(これ)に対すれば、人をして敬を起して追慕せしむ。宜しく時時之を展覧すべし。亦心を養うの一たり。〔『言志耋録』第281条〕

【意訳】
古い書や絵画には、総じて昔の人の精神が宿っているものであるが、なかでも書にはもっとも心が描き出されているものだ。それを鑑賞していると、自然と尊敬の念が生じ、古人を慕う気持ちになる。時々そうした書画を鑑賞すべきである。それがまた、心を養うことになるのだ

一日一斎物語的解釈
書には、作者の心が宿る。偉人の書を鑑賞することもまた修養のひとつである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、総務部の西村部長に誘われて、N市立博物館にやってきたようです。

「不要不急の外出の感もありますが、これだけ人が少なければ問題ないですかね?」

「私も迷ったんだけどね。どうしても渡辺崋山の書画は観ておきたかったんだよ」

「以前に岩村に言ったときに、渡辺崋山の絵を観たことを覚えています」

「うん、この人は田原藩の家老で、しかも学者であり絵師でもあった人なんだ」

「マルチな才能の方だったんですね。たしか一斎先生の肖像画も書いていましたよね」

「うん、それも観れるはずだ。さっそく入ってみよう」

「崋山の絵と書がこれだけ揃うのは、滅多にないことだよ、神坂君」

「西村さん、興奮してますね。(笑)」

「それはそうさ。ほら、あそこに国宝の鷹見泉石の肖像画がある」

「あ、あれは岩村で観ましたね。覚えています」

ふたりはしばらく無言で渡辺崋山の絵と書に見入っていたようです。

「以前、岩村で一斎先生の書や渡辺崋山の絵を観た時は、絵の方に関心がいって、書にはあまり感じるものがなかったのですが、今回は書の方に魅力を感じます」

「おぉ、それは君が人間的に成長した証拠だね」

「そうなんですか?」

「書にはその作者の魂が宿っているからね。言霊がほとばしり出てくるのを感じるようになったら、大したもんだよ」

「この人の書からは、繊細さが伝わってきます」

「これが遺書だね。『不忠不孝渡邉登』と書かれている。母親を残して自害する空しさが文字からひしひしと伝わってくるなぁ」

「はい。なぜか涙が出てきました」

「神坂君の心もかなり穢れが落ちて来たな」

「そうでしょうか?」

「美しい心の持ち主でなければ、この書を観ても涙は出ないだろう」

「書を鑑賞することも、ひとつの修養になりそうですね」

「場合によっては絵画以上に、書を鑑賞する方が心の修養になるかも知れないなぁ」

「はい。また、こういう展示会があったら誘ってください!」


ひとりごと

文字は上手に越したことはありませんが、大事なことは魂を込めて書くことでしょう。

文字に思いを込めれば、その思いは相手にしっかり伝わるものです。

小生も何度か偉人の書を鑑賞し、その度に文字が発するメッセージを感じ取ろうと試みました。

まだまだ修行の身であり、受け取ったメッセージが正しいか否かはわかりませんが、これからも偉人の書を鑑賞する機会を積極的に作っていく所存です。


kazan isho

第2206日 「治国」 と 「斉家」 と 「修身」 についての一考察

今日のことば

【原文】
国の本は民に在り、人主之を知る。家の本は身に在り、人主或いは知らず。国の本の民に在るを知りて之を民に刻責し、家の本の身に在るを知らずして自ら奢侈を極む。故に益々之を民に責む。国の本既に殪(たお)れなば、其れ之を如何せん。察すること無かる可けんや。〔『言志耋録』第280条〕

【意訳】
「国家の本は民にある」ということには、君主も理解しているが、「家の本は我が身にある」ということを理解していない君主は多い。国家の本が民にあることを知りながら、民に苛政を強いたり、家の大本が自分の身にあることを知らずに贅沢を極める。自ら贅沢をするから、ますます民に対し重税を課すこととなる。国家の本である人民が倒れてしまったら、どうしようもない。この点を君主は十分に理解しなければならない。

【一日一斎物語的解釈】
会社の根本は社員さんにあるということについては、トップは理解している。しかし、家の根本が自分の身に懸かっているということを理解していないトップは多い。会社の財産が社員さんであることを知りながら、社員さんを責め立てたり、家の根本は我が身にあることを知らずに、贅沢な生活をしている。そしてさらに贅沢を極めるために、益々社員さんを酷使する。会社の大本である社員さんが居なくなってしまったら、どうすることもできない。トップにあるものは、この点をよくよく察しなければならない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、N大学医学部附属病院の倉庫脇にある休憩室にやってきたようです。

「あ、神坂さん」

「お、居た居た。菊池君に聞きたいことがあったんだよ」

雑談相手はいつものY社菊池さんのようです。

「もしかして、D器械の件ですか?」

「さすがは察しが早いな。例の成金社長の尾上さんが退陣したらしいじゃないか」

「そうみたいです。このコロナ禍にも関わらず海外旅行をしていたことがバレて、業界から指導が入っていたらしいのですが、その後、取締役会で専務になっていたジュニアから退陣要求が出たようです」

「たしか、あそこのジュニアは親父と違ってT大出身のインテリだったよな」

「そうです。医師免許を持っている変わり種です」

「あの社長、表向きはきれいごとをよく言ってたよな。『社員こそがウチの財産である』とかなんとか」

「といいながら、経費は年間数千万円という噂でしたからね」

「さすがに息子も庇いきれなくなったか」

「社員からの突き上げもあったみたいですよ」

「『会社をマネジメントする前に、まず自分の身を整え、自分の家をしっかりまとめろとは古典でよく言われることだが、まさにそこがわかっていない人だったんだな」

「そんな社長を見て、ここ数年で優秀な人がだいぶ会社を去ったようです」

「エースの高井戸さんがF社に電撃移籍したのには驚いたよな」

「社長が一番可愛がっていたのが、高井戸さんでしたからね」

「右腕を失ったようなものか」

「高井戸さんは、何度も社長を諫めたそうです。社員のため、会社のために無駄遣いをやめてくれ、と。最後は涙を流しながら諫めて、聞き入れてもらえなかったので、その場で辞表を突き付けて退職したそうです」

「ドラマみたいだな。いや、しかし、君は本当に情報通だなぁ」

「頼りになるでしょ?」

「心は許せないけどな!」

「神坂さん、情報はタダじゃないですよ。どうです、今晩あのお店に連れて行ってくださいよ。あの綺麗なママのいるお店!!」

「あぁ、『季節の料理 ちさと』か。俺も2週間くらいご無沙汰しているから、行ってみようか!」

「ごちそうさまです!!」


ひとりごと

修身斉家治国平天下。

世の中を平らかにしたければ、まず国を治めよ。

国を治めたければ、まず家を整えよ。

家を整えたければ、まずわが身を修めよ。

有名な『大学』の中の言葉です。

金と地位が手に入ると、人は心が緩み、なにもかもが自分の自由になると勘違いをしがちです。

そして、大きな痛手を蒙るのです。

そうなってからでは遅いのですから、日ごろから修身、慎独を意識しながら生活していくしかありませんね。


business_jihyou_man

第2205日 「好悪」 と 「滞留」 についての一考察

今日のことば

【原文】
美酒膏梁(こうりょう)は、誠に口腹一時の適に過ぎず。既に腸内に入れば、即ち速やかに化して糞溺(ふんにょう)と為るを以て快と為し、唯だ留滞して病を成すを懼るるのみ。何ぞ其の愛憎の忽ち変ずること然るか。人主の士女の愛憎に於けるも、亦此れに類す。 〔『言志耋録』第279条〕

【意訳】
旨い酒や美味しい食事といった一時の快楽は、ほんのひと時のものである。一度、体内に取り込まれたならば、速やかに糞尿となって排出されることが悦びであって、いつまでも体内に留まって病気を引き起こすことを心配する。好悪の情は、なんと瞬時に変化するものであろうか。上司が部下の社員さんに対して抱く好悪の情もこれと同様であろう

【一日一斎物語的解釈】
好悪の感情というものは一時的なものとすべきである。好悪いずれの感情にせよ、いつまでも持ち続けることはよろしくない。


今日のストーリー

「雑賀の野郎、帰ってきたらガツンとやってやる!!」
どうやら大累課長がご立腹のようです。

「どうした、大累。また、雑賀が何かやったのか?」
神坂課長が面白がっています。

「そのとおりですよ。あいつ、今朝緊急が入ったとか言ってたんですけど、どうやら寝坊を胡麻化すためだったらしんです」

「なんでわかったんだ?」

「9:30頃、藤倉が雑賀の家のそばを通りかかったときに、雑賀が家から出て来たのを偶然見かけたらしいんです」

「あいつは、どこまでツイてないんだろうな。(笑)」

「笑い事じゃないですよ!!」

「よかったな、雑賀が今ここに居なくて」

「あいつはそういう危険察知能力は高いですからね」

「そうじゃないよ。雑賀がここに居なくてよかったのはお前だよ」

「は?」

「いたら大声を上げて叱っていただろう。でも、それをしないで済んだんだから」

「何を言ってるんですか?」

「人間の好悪の感情は一時的なものだ。だから、時と共に忘れ去ったほうが良いんだ。いつまでもそういう気持ちを溜め込んでいたら、精神的に良くないんだよ」

「と、佐藤部長に教えてもらったんですか?」

「惜しい! 一斎先生がそう言っているんだ。俺もまったくその通りだと思う。人間の感情なんてコロコロ変わるものだから、サッと忘れてしまった方がいいんだよ」

「何を言うかより、誰が言うかが大事だという言葉があるそうです。佐藤部長にそう言われたら腹に落ちるんですけど、神坂さんに言われてもなぁ」

「なんだよ!!」

「ウチの会社で一番キレ易いのは、断然あなたですからね」

「てめぇ、やかましいわ!!」

「ほら、神坂さん。そこで、その怒りをサッと忘れてくださいよ」

「ガツン」

「痛てぇ! 酷いじゃないですか!」

「目の前に怒りの対象がいなければ我慢できるが、こうして手の届くところにいると無意識のうちに手が出てしまうんだ。まぁ、殴られた怒りをサッと忘れてくれ」

「都合が良すぎるよ、あんたの考え方は!!」


ひとりごと

かけた情は水に流し、受けた恩は石に刻め。

今までにも何度か紹介した言葉です。

いまここに言葉を追加しておきます。

受けた損害は水に流し、かけた損害は石に刻め、と。


janken_gu

第2204日 「好悪」 と 「成長」 についての一考察

今日のことば

【原文】
治国の著眼の処は、好悪を達するに在り。〔『言志耋録』第278条〕

【訳文】
国を治める上で重要な点は、民の好むことをさせ、憎むことをさせないことにある。

【所感】
マネジメントの要諦は、社員さんの好むことを行わせ、好まないことは行わせないことにある。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。

「『言志四録』を読んでいたら、『政治の要諦は、民の好きなことをさせ、嫌なことをさせないことだとありました。マネジメントもそれで良いのでしょうか?」

「好きなことだけさせていたら、成長しないんじゃないかと不安だよね」

「そうなんですよ。やっぱり、メンバーを成長させたいなら、苦手なことにも取り組ませないといけないと思うんです」

「そのとおりだよ」

「じゃあ、この一斎先生の言葉は誤りだということですか?」

「どう捉えるかだね。私はリーダーのあり方として、メンバーと好悪を一致させることが重要だと理解しているんだ」

「あぁ、なるほど。メンバーが好むことを好み、嫌うことを嫌うということですね」

「うん。ちょっとカッコよく言えば、価値観の共有なのかな」

「そこは大事ですね。その上で、苦手なことに取り組ませる場合は、大変だとは思うけど頑張れ!と背中を押してあげればいいわけか?」

「そういう解釈はどう?」

「わかりやすいです! 誰だって、クレーム対応は楽しいものではありませんが、内容に応じて同行したり、あるいは単独で行かせたりする。そのとき、ただ『しっかりやって来いよ』というのか、『大変だとは思うけど、なんとかお客様の笑顔を取り戻そう』と声をかけるかで、メンバーの気持ちは全然違うでしょうからね」

「そうだね。そうやって辛いことの後にある喜びまで事前に伝えてあげると、何とか乗り越えられるんじゃないかな」

「そうですね。そう考えると『好悪を達する』というのは良い言葉ですね」

「ぜひ、メンバーと共に好悪を達して欲しいね」

「はい。みんなで喜びを分かち合えるチームづくりに力を尽くします!!」


ひとりごと


好きなことだけやらせていては、成長しないかも知れませんが、好きなことをやらせてあげることの重要さを忘れてはいけません。

好きなことができるから、時に辛いことにも立ち向かっていけるものでしょう。


好悪を達する、という至言も心に留めておきたいですね。


hamigaki_iyagaru

第2203日 「人を育てること」 と 「根を養うこと」 についての一考察

今日のことば

【原文】
教えて之を化するは、化及び難きなり。化して之を教うるは、教入り易きなり。〔『言志耋録』第277条〕

【意訳】
人を教育する際には、指導した後にやる気を起させることは非常に難しいが、先に自発的に行動するスイッチを入れてから指導をすると容易に成長するものである

一日一斎物語的解釈
奮発心を喚起することこそ、教育の基本である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、高校時代の野球部監督で恩師の杉田先生とオンラインで話をしているようです。

「ははは。そんなこともありましたねぇ。でも、先生。俺みたいなひねくれ者は育てるのが難しかったんじゃないですか?」

「お前みたいな単細胞を教えるのには何の苦労もなかったよ」

「相変わらず酷いことを言いますねぇ。俺を指導するときはどういう考え方でやられていたのですか?」

「お前は最初に理論を教えても、まったく理解できなかったからな。とにかくやる気のスイッチを入れることだけ考えていたな」

「やる気のスイッチですか? たとえば、どんなことを覚えていますか?」

「お前は清原の大ファンだっただろう。だから清原がどういう練習をしているかを調べておいて、『これから教える練習メニューは清原がやっているメニューだ』と云えば、それでバッチリさ。それを聴いた瞬間にお前の目がキラッと輝くんだよ。(笑)」

「俺って、そんなに単純でしたか?」

「俺も長らく教師をしてきたから、相当数の生徒を指導してきたが、お前以上に単純な奴にはお目にかかったことがないなぁ」

「単純とは、言い換えれば素直ということですよね。俺ほど素直な生徒はいなかったと理解しておきます」

「そのノー天気なポジティブさには、恐れ入るよ。しかし、お前に出逢ったお陰で、俺も勉強になった」

「どういうことですか?」

「そうやって、やる気のスイッチを入れれば、生徒は自分から学ぶものだということを教えられたんだよ」

「そういうことですか。じゃあ、俺も先生のお役に立ててわけですね」

「そうだな。私の尊敬する東井義雄先生のことばに、『根を養えば、樹はおのずから育つ』というのがある。やる気のスイッチを入れるというのは、根っこに水をやることと同じなんだよ」

「なるほど。俺も今や部下を持つ身になりました。部下のやる気のスイッチを入れることを意識してみます」

「うん。それは良いことだ。ただし、それは簡単ではないぞ」

「え?」

「今どきの若者は、お前みたいに単純じゃないからな。スイッチを入れるのには相当苦労するってことだよ」

「杉田先生!!」


ひとりごと

東井義雄先生の至言、「根を養えば、樹はおのずから育つ」は、教育の真髄を語り尽くしている言葉だと思います。

植物を育てる時に、茎や葉に水をあげたり、あるいは茎や葉を引っ張って成長させようとすれば、人に笑われます。

しかし、人を育てることになると、なぜか根に水をやることをせずに、葉を引っ張ろうとしている人が多いのではないでしょうか?

やる気のスイッチを探すことこそ、人の上に立つ人のもっとも大事な役割なのです。


nouka_naeue3_boy

第2202日 「情報開示」 と 「価値観共有」 についての一考察

今日のことば

【原文】
凡そ大都を治(おさむ)る者は、宜しく其の土俗人気を知るを以て先と為すべし。之が民たる者は、必ず新尹(しんいん)の好悪を覗(うかが)う。人をして覗わざらしめんと欲すれば、則ち倍々(ますます)之を覗う。故に当に人をして早く其の好悪を知らしむべし。卻って好し。何の好悪か之れ可と為す。孤寡(こか)を恤(あわれ)み、忠良を愛し、奢侈を禁じ、強梗(きょうこう)を折(くじ)く。是(これ)を可と為す。〔『言志耋録』第276条〕

【意訳】
大きな会社や組織をマネジメントする者は、そこに所属するメンバーの習慣や気質をしっかりと把握することをまず優先すべきである。メンバーは必ず新任マネジャーの良し悪しを確かめようとするものだ。それを見せまいとすれば、余計にそれを探ろうとするだろう。したがって、まず自分の価値観をしっかりとインプットすべきである。その方がかえって良い結果を生むのだ。では、どんな価値観が良いのか? ベテラン社員さんを大切にし、上司に忠実で善良なメンバーを可愛がり、コストダウンを図り、力づくで反抗するようなメンバーには厳しく指導をするといったことであろう。これらが良い価値観だと言えよう

一日一斎物語的解釈
大きな組織のマネージャーは、メンバーをよく理解しつつ、自分自身をも積極的に開示していくと良い。その際には、損得よりも善悪を重視する価値観をメンバーと共有することができれば理想的である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、読書会で知り合った大手上場企業の部長・杉森さんと食事をしているようです。

「杉森さんの部下は何名いらっしゃるんですか?」

「派遣社員さんも含めると、100名は超えるかなぁ」

「100名ですか?! ウチの全社員より多いじゃないですか!」

「ですから、さすがに1対1のマネジメントはできませんよ。中間管理職の人たちを介してのマネジメントになります」

「それはそうでしょうね。でも、直接ではなく、間接的にマネジメントするということが、私には想像できないですねぇ」

「まずは、中間管理職の人たちと価値観を共有することが重要だと思っています。ですから、毎週マネージャーを集めて30分程度のミーティングを開き、私が気になった点を話し合ったり、仕入れた情報をお互いに共有するようにしています」

「大きな会社はすごいなぁ。規模が違いますねぇ」

「でも、神坂さん。結局やるべきことは一緒ですよ」

「そうですか?」

「はい。お互いに共有のモノサシで物事が判断できるような組織にするという点ではね」

「共有のモノサシですか?」

「そうです。たとえば、短期的な視点より長期的な視野をもつこと。損得よりも善悪を優先すること。会社の売上よりもお客様の課題解決を優先すること。この3つは、常に言い続けています」

「勉強になります」

「価値観の共有と共に大切にしているのは、お互いを知ることですね。今は飲みニケーションなんて言葉は死語になりつつあります。ですから、メールや社内報などを使って、なるべく自分を知ってもらうような情報を発信していますよ」

「100名もいたら、顔を覚えるのも大変ですよね」

「そこも意識しています。『おい、君』なんて呼んでいたら、信頼関係なんて築けませんよね。名前を、できればフルネームで覚えることも意識していますよ」

「やはり、大企業のマネージャーはレベルが違います。中小企業でよかった。(笑)」

「ははは。やらざるを得ないとなればやれるものですよ。神坂さんくらい情熱がある方なら、きっと大丈夫!!」

「うまいなぁ。そうやって、部下の気持ちをサッと高めていくんでしょうね。4~5人の部下を持っただけで、悲鳴を上げているようじゃ駄目だな。最後に杉森さんの爪の垢をいただいて煎じて飲もうかな。(笑)」


ひとりごと

部下と信頼関係を築きたいのなら、まずは自分から情報開示をすべきですね。

こちらのことは何も語らずに、部下の情報だけを引き出そうとしても、思い通りにはならないもの。

積極的に情報を発信しつつ、信頼関係を高め、共通のモノサシを基準に物事を判断できる組織が作れたら、強い組織となることは疑いようがないでしょう。


building_kaisya

第2201日 「才徳」 と 「後継者」 についての一考察

今日のことば

【原文】
親民の職は尤も宜しく恒有る者を択ぶべし。若し才有って徳無くんば、必ず醇俗(じゅんぞく)を敗らん。後に善有りと雖も、而も之を反すこと能わず。〔『言志耋録』第275条〕

【意訳】
部下である社員さんをマネジメントするポジションには、常に道を守ってぶれない軸を持っている人間を登用すべきである。もしも、才能があっても徳のない者を当てれば、必ず人情味のある良い風俗を壊すことになるであろう。その後に立派な人間を用いても、そう簡単に組織は元にはもどらないものだ

一日一斎物語的解釈
人の上に立つ人間を選ぶ際には、才より徳のある人を優先すべきである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。

「昨日、社長に呼ばれてさ。自分の後を継ぐ人間を育てろって言われたんだ」

「もしかして神坂さん、部長になるんですか?」

「ならねぇだろ。そんな話は聞いたこともないぜ」

「でも、社長の言葉の意味はそういうことじゃないですか?」

「佐藤部長がいるんだぞ」

「部長は更に上に行くんじゃないですか」

「そういうことなのかなぁ」

「凄いじゃないですか!」

「おいおい、勝手に判断するのはやめてくれよ。違ったら、めっちゃ恥ずかしいじゃないか」

「たしかに。それはそれで笑えますけどね」

「本当にお前は性格がねじ曲がってるよな。昔の偉人はよくこう言っている。人の上に立つ人間には、才能のある人間よりも徳の高い人間を選べって。そういう意味じゃ、お前は絶対に無理だな」

「いや、あなたに言われたくないですよ。神坂さん、自分で自分のことを徳のある人間だと思います?」

「全然思わない・・・」

「ですよね!」

「やかまわしいわ! しかし、実際に自分の後をだれに任せるかというと難しいぞ。年齢的には山田さんだけど、あの人にマネジメントができるかどうか?」

「人が良すぎますからね」

「その次は、本田君だからな」

「清水はどうですか? 新美の下にいつまでも置いておくのもどうかなと思いませんか?」

「なるほど。しかし、あいつはお前や俺以上に徳がないぞ」

「全くその通りです!(笑)」

「いずれにしても、営業成績だけで選ぶのはウチの社風ではないな。お前だって、自分の後をだれにやらせるか考えておいた方がいいぞ」

「考えたこともなかったなぁ。特販課は少人数部隊ですからね。俺の下となると雑賀ですよ。あいつが課長になるなんて、今は想像できません」

「俺も。(笑) しかし、俺たちもそういうことを考えないといけない年齢になってきたのかなぁ」

「いつの間にか40歳を超えてしまいましたからねぇ。おっさんになりましたよね」

「うん。しかし、まだまだ老け込んでいる場合じゃないな。後継者ということも意識しながら、もう少し第一線を突っ走りたいよな!」


ひとりごと

人の上に立つ役職に就けば、いつかはそれを後進に譲る時がきます。

どうせならば、自分で育てた後輩に引き継ぐことができたら嬉しいことですよね。

その際には、才と徳のバランスをよく考えて、長所を伸ばしつつ、欠点を矯正するような指導をしておくべきです。

いつまでも自分がやるんだ、などと思っていたら、後継者育成を怠ることとなり、結果的に組織の将来に暗雲を立ち込めさせることになってしまうかも知れません。


business_hikitsugi

第2200日 「家族」 と 「組織」 についての一考察

今日のことば

【原文】
郡官たる者は、百姓(ひゃくせい)を視ること児孫の如く、父老を視ること兄弟の如く、鰥寡(かんか)を視ることなく家人の如く、傍隣の郡県を視ること族属婚友の如く、己は則ち勤倹を以て之を率い、耑(もっぱ)ら臥治(がじ)を以て旨と為せば可なり。〔『言志耋録』第274条〕

【訳文】
組織のリーダーは、部下である社員さんに対しては子供や孫を育てるように接し、自分より目上の社員さんには兄弟のように接し、特にベテランかつ独身の社員さんに対しては家族のように労わり、隣の組織に対しては親族か友人のように接する。その上で、リーダー自身は自分が目立たないように心掛けてメンバーの背中を押し、マネジメントについては、なるべくシンプルにすることを心掛けるのが良い

【一日一斎物語的解釈】
組織のトップに立つ人は、社員を家族のように扱い、隣の組織を親戚のように扱うことで人間関係を円滑にすることを意識せよ。その上で、自らはあまり前に出ず、裏方に回って全体を動かすことを意識すると良い。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、昨日に引き続き社長室に居るようです。

「平社長はいつも家族経営ということを言われていますが、本来は他人同士の組織を家族のように考え、実際に行動するのはとても難しいことですよね?」

「それはそうさ。だからこそ、やる価値があるんだよ。もし、それが実現できれば、離職者ももっと減るし、みんなが幸せになれると思わないか?」

「たしかにそうですね。家族であるなら、縁を切ることはないですもんね」

「昔は勘当なんてものもあったし、今でも家出をする子供はあるけど、家族であれば絆はずっとつながっているはずだ」

「はい」

「たとえば、お前が所属するのは営業部だろう。お前からみて総務部は親戚だと思えばいい」

「あぁ、そうか。西村さんやタケさんは親戚か」

「そう考えて仲よくやってくれ」

「元々仲は悪くないですよ。(笑) ところで、社長御自身のことは、どういうスタンスが良いと考えているのですか?」

「一家の大黒柱だな。いいか、神坂。大黒柱というものは外からは見えないだろう?」

「はい、そうですね」

「外からは見えないが、もし大黒柱が折れれば家は傾くか倒壊してしまう。俺はそういう存在でありたいと思っている」

「つまり、あまり表には出ないということですか?」

「そうだな。会社によっては社長自らが広告塔になっているところもある。トヨタなんかはそうだろうな」

「そうですね。最近のトヨタのCMは、社長自ら語る感じのものが多いですね」

「あれがダメだとは言わないが、俺の性には合わないな」

「背後で私たちの背中を押してくれているイメージですね」

「ははは。そう思ってくれたら、俺は嬉しいよ」

「私自身、できれば問題解決を自分でやりたいと考えていますが、本当に困ったら佐藤部長に相談します。そして、佐藤部長が本当に困ったときは、平社長に相談しているんですね」

「どうかな? 俺が今話したことは、俺の理想だからな。まだまだ、不完全なところが多い」

「そうですか。でも、俺はこんな良い会社はないと思っていますよ」

「そう思ってくれるか?」

「はい。ここに入社できて本当に良かったです。だから、後輩たちにも同じように思ってもらえるように、私も馬鹿な頭をフル回転して頑張ります!」

「頼むぞ!!」


ひとりごと

本章は、家族的経営・マネジメントについての章句だと理解しています。

しかし、家族主義経営どころか、実際の家族や親族間でも疎遠となっているのが現状でしょうか?

修身・斉家・治国・平天下ですから、まずは実際の家を整えるのが先なのかも知れません。


group_family_asia (1)
プロフィール

れみれみ