一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2021年03月

第2240日 「風流」 と 「養生」 についての一考察

今日のことば

【原文】
花木を観て以て目を養い、啼鳥(ていちょう)を聴いて以て耳を養い、香草を嗅いで以て鼻を養い、甘滑(かんかつ)を食(くら)いて以て口を養い、時に大小の字を揮灑(きさい)して以て臂腕(ひわん)を養い、園中に徜徉(しょうよう)して以て股脚(こきゃく)を養う。凡そ物其の節度を得れば、皆以て養を為すに足るのみ。〔『言志耋録』第314条〕

意訳
花や木を鑑賞して目を養い、鳥の鳴く声を聴いて耳を養い、香草の香りで鼻を養い、甘くてやわらかなものを食べて口を養い、時には大小の文字を書いて肱や腕を養い、庭を散策しては股関節や脚を養う。なにごとも節度をもって行えば、すべてが養生となるものだ

一日一斎物語的解釈
どんな物事であっても、節度をもって実施すれば、すべてが養生となるものだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長と同行中のようです。

「やっぱり桜は綺麗ですねぇ。この淡いピンク色が儚さを感じさせる。そこがまた良いですよね」

「ははは。神坂君もいつの間にか風流人になってきたね」

「え、そうですか? 風流人か、良い響きですね」

「去年はCOVID-19の蔓延のせいで、いつの間にか桜の季節も終わってしまっていたよね」

「はい、なんだか四季を感じることのないまま、淡々と一年が終ってしまった印象があります」

「日本には四季がある。春には桜を愛で、夏には海に遊び、秋は紅葉を楽しみ、冬は雪景色を味わうことができる。素晴らしい国であることを忘れてはいけないね」

「そして、どんな場面にも日本酒が合います」

「うん。花見酒、月見酒、雪見酒。風流だよね」

「美しい景色で目を養い、鳥の声や風の音で耳を養い、美味しい料理と酒で鼻と口とお腹を養う。たしか、そんな言葉が一斎先生の言葉にありましたよね?」

「あるね。どんなことでも節度を保てば養生になる、と締めくくっている『言志耋録』の言葉だね」

「今年も花見酒は難しそうですね」

「そうだね。せめて月見酒の頃には、みんなで飲みたいね」

「みんなで飲むと心の養生になりますよね」

「人間は、人間同士の交流の中でこそ、真の喜びを得ることができるからねぇ」

「本当にそうですね。人に好かれたり、褒められたりすれば嬉しいけど、仮に叱られたり、非難されたとしても、何も反応がないよりはよっぽどマシですからね」

「嫌なことがあったら、最後はお酒が助けてくれるもんね」

「そのとおりです! 今日は寂しく、窓の外から桜を愛でながら、手酌酒といきますよ」

「私もそうしようかな!」


ひとりごと

四季を楽しむことができるのは、日本人の特権でしょうか?

季節の移り変わりを感じながら一年を過ごすのが日本人の生き方のはずです。

ところが昨年はCOVID-19によって、そんな風流心が奪われてしまいました。

今年こそ、せめて秋には風流な日常を取り戻したいものです。


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第2239日 「立志」 と 「養生」 についての一考察

今日のことば

【原文】
「其の志を持して、其の気を暴(そこな)うこと無かれ」と。此の訓(おしえ)は養生に於いても亦益有り。〔『言志耋録』第313条〕

意訳
『孟子』のことばに「その意志を堅持して、感情を乱してはならない」とある。この教訓は、養生においても有益な言葉である

一日一斎物語的解釈
堅く志を維持すれば、容易に心が乱れることはない。心が乱れなければ、体調を崩すこともないであろう。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、デスクで新聞を読んでいるようです。

「また自殺者が増えてきたみたいだなぁ。コロナ鬱とか言うらしいけど、そんな簡単に命を捨てないで欲しいよ」

「そうですね。生きたくても生きられない人がいます。健康な人が命を落とすなんてもったいないですよね」

山田さんが話に乗ったようです。

「臓器移植はできても、命の移植はできないからね」

「本当ですね」

「やっぱり生きていくには、軸みたいなものが必要だよね」

「軸ですか?」

「うん。カッコいい言葉で言えば、志ってやつかな。自分はこれで身を立てるんだ、という確固たるものがあれば、簡単に心は乱れないと思うんだよ」

「課長の志はしっかり固まっているんですか?」

「うっ、そうストレートに突っ込まれるとひるんじゃうけどさ。世の中から癌で死ぬ人を一人でも少なくしたい。そのために、医療機関のお手伝いをする、というのが俺の使命だとは思っているんだ。山田さんはどう?」

「私は医療器械屋であると共に、実家がお寺なので、僧籍も持っています。どちらも大きく考えれば、人の命に係わる仕事だと思うんです。ですから、医療器械の販売を通して、ドクターやメディカル・スタッフの方にも命の尊さを伝えていきたいと思っています」

「立派な志だねぇ。そういう気持ちがあれば、コロナで少しくらい苦しい状況に陥っても、なんとか乗り越えられると思うんだけど、違うのかな?」

「世の中では、『健全な精神は健全な肉体に宿る』と言います。でも、本当は健全な精神があってこそ、健全な身体ができあがる気がしますね」

「なるほどね。うん、絶対そう思うよ。志を持てば、迷わなくなる。そうすれば、ストレスも減って、身体も健康になるんだろうね」

「はい。私はそう思います。そこに仏教が果す役割はとても大きいと思っています」

「うん。仏教もそうだし、俺が勉強している儒学もそうかも知れないな」

「そうですね」

「孔子は十五にして学に志したんだ。そこで軸が定まった。だから、その後の人生は紆余曲折があったにも関わらず、当時としては長寿とされる74歳まで生きているからね」

「では、私たちはしっかりした志があるから、長生きできそうですね」

「いや、俺の志はまだブレてる気がする。もっと勉強して、もっと仕事をして、しっかり定めていくよ」

「私もそうします!」


ひとりごと

どれだけ健康な身体を持っていても、精神が病んでしまえば、それを活かすことができません。

逆に健全な精神が宿っていれば、少しくらい身体が不自由でも、やれることがたくさんあるはずです。

健全な精神を保つためには、志が必要だと、一斎先生は言います。

やはり、まずは立志が重要だということでしょう。


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第2238日 「養老」 と 「嬉戯」 についての一考察

今日のことば

【原文】
養老の方、夜燭(やしょく)は明らかなるを要し、侍人は多きを要す。児孫側に嬉戯(きぎ)するも亦妨げず。宜しく人の気を以て養と為すべし。必ずしも薬餌を頼まず。〔『言志耋録』第312条〕

意訳
年老いた人の養生には、夜はなるべく明るくして、世話をする人は多い方がよい。子どもや孫が騒ぎ戯れることは養生の妨げにはならない。とにかく、たくさんの人の気を感じるような環境にいることが養生になるものだ。必ずしも薬だけが養生になるものでもない

一日一斎物語的解釈
年老いた人を独りにしないことが肝要である。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、相原会長の自宅で競馬中継を観戦しているようです。

「いよいよG1シーズンの開幕ですね」

「ワクワクするね。今年も昨年のような強い馬が現れるかな?」

「去年は牡馬・牝馬ともに三冠馬が誕生しましたからね。2年続けてそんな馬が出るとは思えないですけどね」

「それはそうか。さて、今年のダービーはいったいどの馬が勝つのかなぁ」

「楽しみですね」

「ダービーの日を迎えるたびに、あと何頭のダービー馬をこの目で見れるのかなと思ってしまうね」

「それ、競馬ファンのあるあるです。私もそんなことを思いますよ」

「神坂君はあと40頭くらい見れるでしょう。僕はあと10頭見れるかどうか・・・」

「会長、寂しい話はやめましょう。せっかくのG1レースですから」

「そうだね。ついそんなことを考えてしまうのが、老人のあるあるだよ」

「そういう意味でも、会長にはまだまだ会社に出てきてもらいたいんですよ」

「中座さんも辞めちゃったから、ちょっと気持ちが落ち込んでいるのかなぁ」

「会社に来れば、素晴らしい連中がたくさんいます。高齢者は、なるべくたくさんの人の気を感じる環境に居た方が良い、と一斎先生が言っていますよ」

「あー、それはそうだろうね。特に若い人の元気な顔をみると、僕もパワーをもらえるもんね」

「そのとおりです! さー、会長。落ち込んだ気分でギャンブルをやっても絶対に当たりませんよ!」

「うん。僕の軸はもう決まっているからね。川田君のダノンスマッシュで決まりでしょ!」

「いや、馬場が相当荒れていますからね。ここは単騎逃げ確実のモズスーパーフレアが残ると思いますよ!」
さて、レース結果はといいますと、1着ダノンスマッシュ、逃げたモズスーパーフレアは5着に沈みました。

「神坂君、バッチリ3連単でいただいたよ!」

「直線半ばまでは3着は堅いと思ったのになぁ。5着かぁ・・・」

「万馬券とはいかなかったけど、まあまあの配当かな」

「当たれば良いじゃないですか。私は今年もオケラ街道まっしぐら確実です」

「さあ、元気を出そう。最終レースがまだ残っているよ」

「あーあ、まさか会長を励ましに来て、私が励まされることになるとは・・・」


ひとりごと

コロナの影響は、高齢者の気持ちにも大きな影響を与えているでしょうね。

小生の家庭もそうでしたが、昨年末は帰省を諦めた方が多かったことでしょう。

それは孫の顔を待ちわびる祖父母にとっては、とても悲しいことです。

にぎやかなお盆や年末年始こそ、最大の養老になるはずです。

今年こそは、祖父母が喜ぶ一年にしましょう!


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第2237日 「年齢」 と 「お酒」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老を養うに酒を用いるは、醴酒(れいしゅ)若しくは濁醪(だくろう)を以て佳と為す。醇酒(じゅんしゅ)は烈に過ぎて、老軀(ろうく)の宜しきに非ず。〔『言志耋録』第311条〕

【意訳】
年をとった人の養生にお酒を用いるときは、甘酒の類かにごり酒が良い。日本古来の製法で醸造したお酒は、身体への影響も大きいので、老体には控えた方がよいであろう

【一日一斎物語的解釈】
年齢に応じた酒を選ぶことも養生のひとつである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、ひとりで「季節の料理 ちさと」にやってきたようです。

「あら、今日はひとり? めずらしいわね」

「うん。たまには、ママの話をじっくり聞かせてもらおうと思ってさ」

「それは逆よ。ここは、お客様が私に話を聞かせてくれるお店だよ」

「まぁ、硬いことは言いっこなしで。とりあえず、生」

「はい!」

しばらくして、生ビールと付きだしが運ばれてきました。

「そうだ、ママ。年寄りに合う日本酒はないの?」

「年寄り?」

「うん。親父に送ってあげようかと思ってさ。親父は日本酒しか飲まないと言っていいくらい、日本酒好きなんだけどね。最近、飲むと次の日がしんどいから控えるようにした、と寂しそうに言ってたんだよ」

「それなら、前に相原さんに紹介したお酒はどう?」

「相原会長に?」

「うん、あなたも一緒にいたと思うけどな」(第1103日参照)

「え、どんなお酒?」

『加茂金秀 特別純米13』というお酒。アルコール度数13度の原酒よ。最近低アルコールのお酒は若い人にも人気なのよ」

「へぇー。今あるの?」

「ちょっと待っててね」

ママがグラスを2つ持ってきたようです。

「あれ、なんで2つも?」

「もうひとつ、宮城の一ノ蔵さんの『一ノ蔵 ひめぜん』もあったから、両方飲み比べてみない?」

「そっちはどんなお酒?」

「これはアルコール度数8度の原酒。30年も前に開発されて、今も人気の低アルの日本酒なの」

「どれどれ」

神坂課長は両方をじっくりと飲み比べています。

「これ、本当に8度なの? ちょっと酸味があるけど、すごく飲みやすくていいじゃない。13度の方もいいけど、親父にはこっちがいいかなぁ?」

「開けてないボトルがあるわよ。持っていく?」

「ありがとう。でも、一升瓶を持って帰るのは大変だから、ネットで頼むよ。銘柄だけ控えさせて」

神坂課長はジョッターに銘柄をメモしています。

「きっとお父さん、喜ぶわよ」

「うん。やっぱりお酒の相談はママに限るな」

その後、神坂課長は『一ノ蔵 ひめぜん』をたらふく飲んで、ちさとママと楽しい時間を過ごしたようです。


ひとりごと

下戸の小生には、お酒の話は困ります。

このストーリーに関しては、ツッコミなしでよろしくお願いします。


himezen1.8

第2236日 「重役」 と 「秘書」 についての一考察

今日のことば

【原文】
養老の侍人は宜しく老婦錬熟の者を用うべし。少年女子、多くは事を解せず。〔『言志耋録』第310条〕

【意訳】
老人の養生に付き添う人には、ベテランで物事に熟練した女性を当てるべきである。若い女の子は、臨機応変に物事に対処できない

【一日一斎物語的解釈】
年配の重役の秘書は、ベテラン社員さんに務めてもらいたいものだ。


今日のストーリー

「相原会長、今日まで本当にお世話になりました」

相原会長の秘書を務める中座さんが今日で会社を去ることになりました。

「とうとうこの日が来てしまったねぇ」

相原会長が目に涙を浮かべています。

「本当にお世話になったねぇ。中座さんとは、もしかしたら女房とより長い時間を過ごしたかもしれないな」

「約40年ですね」

「本当に辞めてしまうんだね」

「相原会長すみません。体力の衰えはどうしようもないですから」

「頭はまだまだ冴えわたっていると思うのになぁ。やっぱり今でも残念で仕方がないよ」

「そんな風に言ってもらえたら幸せです」

「僕のことをすべて知り尽くしている中座さんの代わりは誰にも務まらないんじゃないかと思うんだよ」

「後任の辻内さんもしっかりした女性ですから、大丈夫ですよ!」

「僕みたいな老人には、やっぱりベテランが対応してもらわないと困るんだよ。若い人は臨機応変な対応が苦手だからね」

「辻内さんは、すでに秘書歴15年以上のベテランですよ」

「うん・・・。寂しいなぁ」

「相原会長、会長はもう少し会社のために頑張ってくださいね!」

「中座さんが居なくなると思うと、気力が湧いてこないよ」

「ダメですよ、そんなこと言ってたら。会長はいつでもにこやかに笑っていてくれないと! 相原会長は、我が社の太陽なんですからね!」

「中座さん、ありがとう。元気でね。たまには顔を出してよ」

「はい。たまには会長の元気なお姿を拝見しに伺います。では、そろそろ失礼します」

「中座さん、ありがとう!」

中座さんの手を握った相原会長の目からは大粒の涙がこぼれ落ちました。


ひとりごと

阿吽の呼吸で仕事ができる人がそばに居てくれると楽ですよね。

自分の性格を理解して、常に先まわりで手配をしてくれるような秘書が居てくれたら、仕事も滞りなく進めることができそうです。

まぁ、小生の場合、秘書を持つようなご身分ではありませんが・・・。


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第2235日 「健康」 と 「減量」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老人は耑(もっぱ)ら養生に拘りて卻って之を害す。但だ已甚(いじん)を為すこと勿れ。則ち是れ養生なり。〔『言志耋録』第309条〕

【意訳】
年をとると養生に拘り過ぎてかえって身体に害となることをしてしまう。とにかく行き過ぎとならないようにすることである。それこそが養生といえるのだ

一日一斎物語的解釈
何事もやり過ぎはかえって良くない結果を招きやすい。健康面も同じで、気を使いすぎればかえって身体を壊すことになる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の新美課長と雑談中のようです。

「あれ、新美。お前、どうしたんだ。なんか、ちょっと老けた気がするぞ?」

「え、本当ですか? ダイエットのせいかな?」

「ははは。お前、ダイエットしてたのか?」

「神坂さんにデブって言われて、腹が立ったので、炭水化物を極力減らすダイエットを始めたんですよ。朝はゆで卵を1個、お昼はおにぎり1個、夜はおかずだけで米は抜き」

「それはキツイな」

「いつやるか、今でしょう、って感じです」

「古いな。でもさ、一気にやり過ぎじゃないの? 顔色も良くないし、本当に10歳くらい老けた感じだぜ」

「そういえば先日、息子の友達に、お爺ちゃんかって聞かれました」

「ははは。しかし、笑いごとじゃないぞ。それ以上続けると倒れちゃうんじゃないか?」

「そんなに顔色が悪いですか?」

「なんていうのかな、肌の色が土気色になっている気がする」

「たしかに最近、ちょっとフラフラするんですよね」

「ほら見ろ。無理するなよ。ダイエットのし過ぎで倒れたら、何にもなんないぜ」

「そうですね」

「健康に気を使うことは大切だけど、やり過ぎたらかえって身体を壊すことだってあるんだ」

「そういえば、神坂さんもジョギングを頑張り過ぎて、足を痛めてましたよね?」

「そうそう。何事もやり過ぎは駄目だ。過ぎたるは猶及ばざるが如しだ」

「ちょっと、ペースを落とそうかな」

「そうしろ。そうだ、もうすぐ昼飯の時間だ。今日は俺がうなぎをご馳走してやるよ」

「本当ですか。じゃあ、今日はダイエットを一時停止にして、ご馳走になります」

「うん。お前にだけ痩せられたら困るからな」

「そういうことですか。それなら、やっぱりお断わりします!」

「冗談だよ。後輩のことを心配している優しい先輩の心がわからないのか?」

「だって、今のニヤリとした顔、本当に悪い奴の顔でしたから・・・」


ひとりごと

小生もスーツのズボンがすべてきつくなってきたので、現在はプチ・ダイエット中です。

ただ、朝ごはんをゆで卵1個に代えただけですが、それでも2ヶ月で3~4kgほど落ちました。

かつては、過激なダイエットをして、リバウンドした経験もありますので、今回は無理せずに、時には美味しいものを食べながら、少しずつウエイトを落としていくつもりです。


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第2234日 「老人」 と 「四件」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老人の自ら養うに四件有り。曰く和易(わい)、曰く自然、曰く逍遥、曰く流動、是れなり。諸(もろもろ)激烈の事皆害有り。〔『言志耋録』第308条〕

意訳
年をとった人が、自らを養生する上で大事な点は以下の4点である。なごやかでやさしくすること、ありのままの自然体でいること、ゆったりと落ち着いていること、流れに逆らわず物事に固執しないこと、これである。何事も激しく極端であると害悪となるものである

一日一斎物語的解釈
人として完成するためには、なごやかでやさしく、自然体で、ゆったりとして、なすがままに身を任せるという四つの徳を養うことにある。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長と「季節の料理 ちさと」に来たようです。

「考えてみると私の周りには、素敵な年の取り方をした先輩がたくさんいるんですよね」

「長谷川先生や相原会長かな?」

「はい、そのお二人はもちろんですし、他にも読書会で知り合った松本さんやサイさん(元同僚・西郷さん)もそうです」

「皆さん、60歳を超えても益々お元気だよね」

「そして何より驚くべきは、未だに学び続けていることです」

「うん。素晴らしい先輩達だよね」

「どういう生き方をしたら、あんな素敵な老人になれるのでしょうか?」

「一斎先生はこう言っているよ。『人として完成していくには、和易・自然・逍遥・流動の4つが重要だ』ってね」

「どういうことですか?」

「簡単に言うとね、なごやかでやさしく、自然体で、ゆったりとして、なすがままに身を任せる。そんな人間になれということだろうね」

「先ほどの諸先輩は、皆さんが今の4つの条件を満たしている気がします」

「私もそう思うね」

「私もああいう年の取り方をしたいなぁ」

「なれるわよ、神坂君なら」

ちさとママがお料理を運んできたようです。

「え、ママ、本当にそう思う?」

「うん。あなたはそういう素敵な方に囲まれているんだもの。ならなきゃダメよ!」

「そっか、そうだよね。佐藤部長にちさとママも大切な先輩だもんな」

「えー、私と神坂君はそんなに年が違わないじゃない?」

「え、いや、あの、たしか九つほど離れていると思うのですが・・・」

「誤差の範囲よ!」

「部長、こういう人も、なごやかで、自然体で、ゆったりと、なすがままと言えるのでしょうか?」

「どうだろう・・・」

「すでに計算もできなくなるくらいボケちゃったんじゃないかなと・・・」

「神坂!!」


ひとりごと

和易・自然・逍遥・流動。

この4つが老いてなお養生する大事な要素なのだそうです。

つまり、この4つの条件を満たせば、ある意味で完成された人間と呼べるのではないでしょうか?

道は遠く険しいですね!


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第2233日 「年齢」 と 「気力」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老人は、速成を好む。戒むべし。苟便(こうべん)を好む、戒むべし。憫恤(びんじゅつ)に過ぐ、戒むべし。此の外、尚お執拗・拘泥・畏縮・過慮の数件有り。都(すべ)て是れ衰頽の念頭なり。須らく能く奮然として気を作(な)し、此の念を破卻(はきゃく)すべし。〔『言志耋録』第307条〕

意訳
年をとると、結果を急ぎすぎてしまうが、これは戒めなければならない。いい加減に都合よく考えることもある。これも戒めなければならない。人を哀れに思いすぎるのも戒めるべきである。これ以外でも、しつこ過ぎたり、こだわり過ぎたり、こわがり過ぎたり、心配し過ぎることも同じである。これらはみな自分が衰え弱ってきた証拠である。すべてにおいて気力を奮い起こして、このようなマイナス思考を捨て去るべきである

一日一斎物語的解釈
高齢になると気力が衰えて、マイナス思考になりがちである。そうならないためにも、常に気力を高めておかねばならない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、実家に電話をしているようです。

「おー、勇か。お前から電話をしてくるなんて珍しいことじゃないか。地震でも来ないか心配になるな」

「なんだよ、親父。せっかく愛息が電話をしてやっているのに、そのセリフはないだろう」

「だれが、愛息だって?」

「ちっ、まぁ、それだけ減らず口が叩ければ、元気な証拠ってところか」

「そうでもないぞ。さすがに70歳が見えてくると、身体にはいろいろガタが来ているんだけどな。これで、心まで弱ったらいけないと思って、いろいろ努力してるんだ」

「へぇー、どんな努力?」

「町内会のカラオケ大会とか、社交ダンスとか、やれるものはなんでもやってるぞ」

「親父が社交ダンス?! それは見ものだな」

「先生からは、意外と筋が良いって褒められているんだ。元々運動神経は悪い方じゃないからな」

「たしかにな。俺の、頭はバカだけど身体が丈夫で運動神経が発達している点は、親父譲りだもんな」

「頭はバカは余計だ!(笑)」

「元気で良かったよ」

「本当に何の用事もないのか?」

「ないよ。ふと親父とお袋のことが気になってさ」

「かあさんと30分も話してたから、俺には廻ってこないかと思ってたよ。(笑)」

「なんだよ、親父も話したかったのか」

「実はな」

「素直でよろしい!」

「年をとると、意外とマイナス思考になりやすいもんだな。俺はうまれつきノー天気な方だと思ってたのにな」

「そうなのか?」

「意外と極端な考え方をしてしまうことが増えたよ。お前のことが急にすごく心配になったり、かあさんと喧嘩しても、お互いに頑固になり過ぎて、なかなか仲直りできなかったりするんだよ」

「やっぱり気力が衰えてきてるのかな?」

「たぶんな。だから、社交ダンスをしたり、カラオケで歌っているわけさ」

「なるほどな。でも、声は元気だし、頭もしっかりしているようだし、俺は安心したよ」

「そうか、それは良かった。まだまだ、お前に心配されたくはないからな!」

「頼むから、ボケないでくれよ!」

「バカな頭の方がボケない気がするな」

「ほら、自分でもバカを認めたじゃないか。(笑) じゃ、そろそろ切るぞ。元気でな!」

「おう、勇もな!」


ひとりごと

小生はまだ54歳ですが、それでも40代に比べて気力の減退を感じることがあります。

深夜に読書することがほとんどできなくなりました。

このままだと、一斎先生の言うように、どんどんマイナス思考になってしまうかもしれません。

今の内から、いろいろと手を打っておくことにします!!


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第2232日 「年齢」 と 「節制」 についての一考察

今日のことば

【原文】
養老の方は恰(あたか)も是れ坤道(こんどう)なり。心は静を欲し、事は簡を欲し、衣は厚を欲し、食は柔を欲し、室は西南の暖を欲す。〔『言志耋録』第306条〕

【意訳】
老人の養生法というものは、まるで『易経』坤の卦に書かれた内容に沿っているようである。心は静かに、物事は明瞭簡潔に、着物は厚手のもの、食事は柔らかいものを選び、西南向きの暖かい部屋を望むものだ。

【一日一斎物語的解釈】
人は年齢に応じて生活を改めるべきである。無理に若い人の真似をすれば、かえって身体にも精神にも害悪を来たす恐れがある。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、相原会長とランチに出掛けたようです。

「そういえば会長、以前に柔らかいものを食べるようにしていると言ってましたよね?」

「最近、益々歯が悪くなってね。こうやって麺類を食べることが多くなったんだよね」

「以前はかつ丼をよく食べていましたよね」

「かつ丼かぁ。食べたいけどねぇ、嚙み切れないんだよ」

「歯は大切ですね。私も既に下の両奥歯を抜歯してしまっているので、将来が不安です」

「それ以上、歯を失わないようにしっかり歯磨きをした方がいいよ」

「40代のうちにやっておくことは他にありますか?」

「神坂君の場合は、髪の毛は大丈夫そうだね。そうなると、体重管理じゃないのかな?」

「やっぱりそこですか」

「太っている人で長生きする人は少ないからね」

「最近、体重が右肩上がりでして・・・」

「それから身体を冷やさないことかな。まぁ、これはもう少し年を取ってからの話かも知れないけどね」

「そういえば、一斎先生の言葉にそんな言葉があるんでしたね?」

「うん、佐藤君から教えてもらった。『年を取ったら、心は静かに、物事は明瞭簡潔に、着物は厚手のもの、食事は柔らかいものを選び、西南向きの暖かい部屋を望む』そうだよ

「あぁ、たしかに身体を温めろというメッセージがありますね」

「本当はこのうどんだって、温かいうどんより、冷たいうどんの方が好きなんだけどね」

「会長にはまだまだ会社に来て頂きたいですからね!」

「平君(社長)もそう言ってくれているし、なるべく体に負担を掛けないようにしているんだよ」

「心は静かに、物事は簡潔明瞭にというのは、どうですか?」

「さすがに最近は、あまり頭にくることもなくなったなぁ。まぁ、頭は生まれつきバカな方だから、複雑には考えられないんだよね」

「そうすると、一斎先生の言っていることをほとんで実行できているってことですね。さすがです!」

「でも、カッとしなくなったのは、熱意が減退しているんじゃないかと思うこともある。それに、たまには思い切り脂っこいものも食べてみたいし、生ものも食べたくなるよ」

「そういう時はお供しますよ」

「要するに高級料理のときだけは、お供するってことだね!」

「人聞きが悪いですよ、会長。会長の身になにかあった際に、即座に応対するためですよ」

「本当かなぁ?」

「以前に連れていってもらった天麩羅屋さんとかお寿司屋さんは、どこも旨かったもんなぁ」

「ほら、やっぱり!!」


ひとりごと

『易経』の坤為地の卦というのは、乾為天が天道を示すのに対して、地道を示すものと理解されています。

この坤為地の卦のなかに、「厚」・「至静」・「至柔」・「西南」といった言葉が出てくるところから、一斎先生はこの卦を「老人の養生」に関連づけて読まれたものと思われます。

こういう章句を読むと、若いうちに節制をしなければと思う気持ちと、今のうちに好きな物を好きなだけ食べておきたいという両方の気持ちが湧いてきます。

しかし、わが身は父母の遺体なりと考えれば、やはり節制しなければいけないのでしょうね。


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第2231日 「年齢」 と 「食事」 についての一考察

今日のことば

【原文】
老人の食物に於けるは、宜しく視て薬餌と為すべし。分量有り、加減有り、又生熟の度有り。〔『言志耋録』第305条〕

意訳
年をとった人が食べる食事は、すべて薬だとみなすべきである。その人にとって最適な分量、最適な味付けの加減、また最適な熟成度合いがあるのだ

一日一斎物語的解釈
食事は常に自分の身体に対する薬だとみなすべきである。その年齢に応じて、分量や味の濃淡、あるいは生か否かを考えて摂取する必要があろう。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累、新美の両課長と3人で焼肉屋さんに来たようです。

「久しぶりの焼肉だなぁ。若い頃は安い食べ放題の店によく行ったよな」

「行きましたね。『スタミナ三郎は私たちのホームでしたね」

「たしかにそうでした。週に1~2回は必ず行ってましたね」

「食べ放題で2,980円だったよな。それで酒も飲めた。懐の寂しい若造には最適な店だったよな」

「いつからですかね、だんだん行かなくなったのは?」

「年齢と共に、量も食べられなくなったし、それよりも質の良い食事を好むようになったんでしょうね」

「それなりに懐も温まったってことだよな」

「四十を超えてからは、焼肉屋で食べ過ぎると、夜中にだいたい下痢になるんだよ」

「神坂さんは、食事中でも平気でそういう話題をしますよね。人間を疑うわ!」

「大袈裟な野郎だな。でも、そうじゃないか? 若い頃はとにかく腹を満たせばそれでよかったんだけど、今はやっぱり食事の時間を楽しみたい。そうなると、旨い酒、美味しい食事が欲しくなるだろ?」

「それはその通りですね。あ、そろそろお肉を追加しますか?」

「そうだな。ここは生肉も旨いんだよ。レバ刺しとミノ刺しを食べようぜ」

「大丈夫ですか、お腹?」

「たぶん・・・」

「明日、『やっぱり下痢したわ』とかデカい声で言わないでくださいね」

「今のお前の声がデカいわ。ほら、あそこのOLが笑ってるぞ」

「しまった、酒を飲むとつい声がデカくなる・・・」

「ははは。そういえば一斎先生が、老人は食事を薬だと思え、と言っていたな。しかし、老人でなくても、四十を超えた人間は、食事に気をつかうべきなんだろうな

「お酒もね」

「そうだ、今度3人で『スタミナ三郎』に行ってみますか?」

「えー、俺はやめておく。絶対下痢するもん!」

「神坂さん!!」


ひとりごと

たしかに若い頃は、質より量の食事にこだわって、よく食べ放題のお店に行きました。

いつからかそういうお店には行かなくなったことに気づきます。

身体が自然に量より質を求めているのでしょうか?

とはいえ、まだまだ明らかなメタボ体形の小生です。

もっと控えるべきなのですが・・・。


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れみれみ