今日のことば
【原文】
常人の認めて以て養いと為す所の者は、其の実或いは用いて生を戕(そこな)う。之を薬に因って病を発すと謂う。択ばざる可からず。〔『言志耋録』第304条〕
【意訳】
一般の人が養生だと認めて実行しているもので、実際にはそれによって生命に害を与えるものもある。これを薬によってかえって病気になるという。よく考えて選択しなければならない。
【一日一斎物語的解釈】
身体に良いと思われることで、かえって身体を壊すこともある。養生はよく吟味して実行すべきである。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、自宅のリビングで奥様の菜穂さんと会話をしているようです。
「花粉がだいぶひどくなってきたよねぇ」
「そう? 俺は全然感じない」
「その鈍感がうらやましい!」
「おいおい、鈍感だから花粉を感じないわけじゃないだろ。俺はお前みたいなヤワな身体じゃないってことだ」
「それも違うわね。ヤワとかヤワじゃないとかと花粉は関係ないの。そのうちイサムもなるかも知れないよ」
「ならないだろ。俺が花粉症なんて、柄にもないよ」
「だから、柄とか関係ないの! それにしても、今度の薬はなんか身体に合わないみたい。飲むと身体がだるくなるんだよね」
「薬ってものは万人に効くわけじゃないからね。合わないようなら早めに変えたほうがいいぞ。かえって身体を壊すことになるからな」
「そっか。ちょっと先生に相談してみる」
「うん。薬に限らず、身体に良いと思ってやっていることが、かえって身体を壊したり、命にかかわったりすることもあるから気を付けないとな」
「そうだね。この前、イサムもいきなりジョギングを頑張り過ぎて、情けないことになってたもんね」
「そう。頑張り屋の俺はつい頑張り過ぎちゃうんだよな」
「たしかに頑張り屋かもね。でも、なぜ勉強は頑張らなかったの?」
「うっ、いきなり厳しいことを言うねぇ。あれだよ、勉強自体が身体に合わなかったんだと思う」
「勉強は万人に効く薬だと思うけどなぁ」
「それが、この俺には合わなかったようで・・・」
「ふーん。でも、息子たちは幸い、父親にはあまり似なかったらしく、勉強はそこそこ頑張ってるわよ」
「そこそこか。中途半端は一番ダメだな。やるか、やらないか、どっちか極端な方が良いと思うけど」
「イサムは全然効かない薬と少しだけ効く薬ならどっがいい?」
「失礼しました・・・」
ひとりごと
このタイミングで、薬が合わないと身体に害となるという言葉を聴くと、新型コロナウィルスに対するワクチンの開発競争が不安になりますね。
新型コロナウィルス感染症は、すこし感染力の高い風邪である、という主張も根強くあります。(世界的に有名な医学・科学雑誌にエビデンスも掲載されているようです)
自分の身体のことも、仕事も、他人の意見に左右されないように、自分なりの軸を持つことが重要なのでしょう。