今日のことば
【原文】
天道は漸を以て運(めぐ)り、人事は漸を以て変ず。必至の勢は、之を卻(しりぞ)けて遠ざからしむる能わず、又、之を促して速やかならしむる能わず。〔『言志録』第4条〕
【訳文】
天地の道はゆるやかに運行し、人間の身の上に起るあらゆる出来事もゆっくりと変化していく。そこには必ずそうなるという勢いがあるもので、これを勝手に退けて遠ざけることもできなければ、これを促して急がせることもできないものだ。
【一日一斎物語的解釈】
自分の身の廻りに起こる出来事は、すべて時宜を得たタイミングで起こるもので、必然のことである。求めても手に入らず、抗っても無駄な抵抗にすぎないのだ。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、同期の鈴木さんと軽くやっているようです。
「マスクしながらの会食なんて、面倒だよな。早くワクチンを打って、普段の生活がしたいよな」
「それはまだ当分先だぜ。協力な変異株が出てきたら、今のワクチンで対応できるかどうかもわからないらしいしな」
「みんなそろそろ限界に来ているな」
「ここが我慢のしどころだ。しばらくは、上手にお付き合いするしかないだろうな」
「ウィズ・コロナってやつか。ところで、話って何だよ?」
「実はな、神坂。ここだけの話だが、経理課を部に格上げすることになって、その部長に打診されたんだ」
「お前がか? マジか! 凄いじゃないか、おめでとう!!」
「ありがとう、と言いたいところだけど、素直に喜べないんだよな」
「タケさんか?」
「うん、ずっと先輩として一緒に仕事をしてきただけに、俺の方が先に部長になるというのはなぁ・・・」
「でも、タケさんは総務畑で、お前は経理畑だから、そんなに気にすることもないんじゃないの」
「それはそうなんだけど・・・」
「鈴木、こういうことってすべて必然だと思わないか?」
「え?」
「部長になりたい人は他にもいるだろう。でも、お前はたしかに経理部門をしっかりまとめているし、社長の誉れも高い。これはそうなるべくしてなったことだ。それを断ることの方が多くの人達に迷惑をかけるんじゃないのか?」
「・・・」
「それに、タケさんはそんなことでお前に冷たく当たったり、遠ざけたりする人じゃないはずだぜ」
「うん、それはわかってるよ」
「せっかく期待して任せてもらえる仕事を自ら断るなんて、俺の辞書にはないぞ!」
「たしかに、お前の辞書にはなさそうだ。(笑)」
「俺だって、課長になれと言われた時には、ちょっと考えたよ。こんな男が人の上に立って良いのか、それなりに迷ったよ」
「そういえば、そうだったな。3日連続でお前に連れまわされたのを思い出した」
「でも、すべてが巡り合わせだと思うことにしたんだ。とにかく全力でやってみようってな」
「神坂、ありがとう。どうやら断る選択肢はなさそうだな」
「俺に背中を押して欲しくて相談したんだろ?」
神坂課長が鈴木課長にウィンクをしたようです。
ひとりごと