今日のことば
【原文】
物を容るるは美徳なり。然れども亦明暗有り。〔『言志録』第35条〕
【意訳】
人を寛大に受け容れる度量のあることは、立派な美徳といえる。しかし物事には、善と悪、明と暗があるので、その見極めは重要である。
【一日一斎物語的解釈】
清濁併せ吞む姿勢は素晴らしいが、あまりにも悪徳なものまで許容する必要はない。
今日のストーリー
営業2課の梅田君がトラブルを起こしたようです。
「梅田、どういうことか説明してくれ」
「すみません。アポイントの時間に遅刻しまして、先生を怒らせてしまいました」
「遅刻の理由は?」
「15時と言われていたのを、5時と勘違いしていまして・・・」
「つまり17時だと思っていたんだな?」
「はい。それで15時半に先生から怒りの電話が入りまして、会社にもクレームを入れると言われました」
「お前との電話を切ってすぐにかけたんだろうな。タッチの差で先生の方が先だったから」
「すみません」
「何をやってるんだよ! お前ももう立派な社会人だろ、時間に遅れるなんて最低だぞ!!」
「課長、課長は『いつも若い奴は失敗しろ』って言うじゃないですか。その割には、ちょっと厳しすぎませんか?」
「石崎、俺がいう失敗というのは、一所懸命やった結果としての失敗だ。今回の梅田の事例は、それとは違う」
「・・・」
「時間を間違えることも情けないが、事前に再確認をしていないことも甘い。メールでいいので、前日に明日の○時に伺いますと連絡すれば、間違いを未然に防ぐこともできたはずだ」
「まぁ、たしかにそうですね」
「もちろん、今回の失敗からも学びを得て欲しいし、梅田にとっては貴重な経験だろう。しかし、これを笑って許すわけにはいかない。お客様の大切な時間を奪ってしまったんだからな」
「失敗にも許される失敗とそうでない失敗があるということですか?」
「そういうことだな。今回は一所懸命にやった結果ではなく、気の緩みから起きたクレームだと思う」
「はい、神坂課長のおっしゃる通りです。なんとかお詫びしたいのですが、電話に出てもらえません」
「今から一緒に行こう。今日は会ってもらえないかもしれない。それなら明日の朝、出勤前の先生にアタックすればいい」
「すみません。よろしくお願いします」
「しっかりお詫びしたら、その後はしっかり反省しろよ」
「でも、凹んじゃいけなんですよね?」
「お前が言うな! 凹むなとは言わない。しかし、反省をするかどうかが大切だということだ。さあ、いくぞ!!」
「はい!!」
ひとりごと
誰にでも過ちはあります。
罪を憎んで人を憎まずではないですが、過ちを犯した人には再度チャンスを与えてあげて欲しいものです。
ただし、過ちとは故意の過失ではなく、あくまでも意図しない過失を指すと考えた方がよさそうです。
故意ではない過失を「過」、故意のものを「悪」と呼びます。
この違いを見分ける目を持っているべきですね。

