一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2021年05月

第2301日 「過」 と 「悪」 についての一考察

今日のことば

原文】
物を容るるは美徳なり。然れども亦明暗有り。〔『言志録』第35条〕

【意訳】
人を寛大に受け容れる度量のあることは、立派な美徳といえる。しかし物事には、善と悪、明と暗があるので、その見極めは重要である。

【一日一斎物語的解釈】
清濁併せ吞む姿勢は素晴らしいが、あまりにも悪徳なものまで許容する必要はない。


今日のストーリー

営業2課の梅田君がトラブルを起こしたようです。

「梅田、どういうことか説明してくれ」

「すみません。アポイントの時間に遅刻しまして、先生を怒らせてしまいました」

「遅刻の理由は?」

「15時と言われていたのを、5時と勘違いしていまして・・・」

「つまり17時だと思っていたんだな?」

「はい。それで15時半に先生から怒りの電話が入りまして、会社にもクレームを入れると言われました」

「お前との電話を切ってすぐにかけたんだろうな。タッチの差で先生の方が先だったから」

「すみません」

「何をやってるんだよ! お前ももう立派な社会人だろ、時間に遅れるなんて最低だぞ!!」

「課長、課長は『いつも若い奴は失敗しろって言うじゃないですか。その割には、ちょっと厳しすぎませんか?」

「石崎、俺がいう失敗というのは、一所懸命やった結果としての失敗だ。今回の梅田の事例は、それとは違う」

「・・・」

「時間を間違えることも情けないが、事前に再確認をしていないことも甘い。メールでいいので、前日に明日の○時に伺いますと連絡すれば、間違いを未然に防ぐこともできたはずだ」

「まぁ、たしかにそうですね」

「もちろん、今回の失敗からも学びを得て欲しいし、梅田にとっては貴重な経験だろう。しかし、これを笑って許すわけにはいかない。お客様の大切な時間を奪ってしまったんだからな」

「失敗にも許される失敗とそうでない失敗があるということですか?」

「そういうことだな。今回は一所懸命にやった結果ではなく、気の緩みから起きたクレームだと思う」

「はい、神坂課長のおっしゃる通りです。なんとかお詫びしたいのですが、電話に出てもらえません」

「今から一緒に行こう。今日は会ってもらえないかもしれない。それなら明日の朝、出勤前の先生にアタックすればいい」

「すみません。よろしくお願いします」

「しっかりお詫びしたら、その後はしっかり反省しろよ」

「でも、凹んじゃいけなんですよね?」

「お前が言うな! 凹むなとは言わない。しかし、反省をするかどうかが大切だということだ。さあ、いくぞ!!」

「はい!!」


ひとりごと 

誰にでも過ちはあります。

罪を憎んで人を憎まずではないですが、過ちを犯した人には再度チャンスを与えてあげて欲しいものです。

ただし、過ちとは故意の過失ではなく、あくまでも意図しない過失を指すと考えた方がよさそうです。

故意ではない過失を「過」、故意のものを「悪」と呼びます。

この違いを見分ける目を持っているべきですね。


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第2300日 「慎重さ」 と 「大胆さ」 についての一考察

今日のことば

【原文】
少年の時は当(まさ)に老成の工夫を著(あらわ)すべし。老成の時は当に少年の志気を存すべし。〔『言志録』第34条〕

【意訳】
血気にはやる若者時代は、慎重さが必要なため、あたかも老人のように万全を期する。老年を迎えたら、心まで老いないように、若者の気概を持つようにすべきである。

【一日一斎物語的解釈】
若いときにはベテランの様な慎重さを、老年期には少年の様な大胆さを忘れるな。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、善久君と面談中の様です。

「そろそろ荒木内科の商談はクロージングに入っていいんじゃないか?」

「でも、あの先生は商売っ気を出すと機嫌が悪くなるので慎重にいかないとダメな気がするんです」

「じゃあ、いつクロージングするんだよ?」

「先生が買いたいと言ってくるのを待ちたいと思います」

「そんなことを言ってたら今期のうちに刈り取れないぞ!」

「それはそうですけど・・・」

「別に怒られたって良いじゃないか」

「でもそれで商談がなくなってしまったら困りますよね?」

「俺は困らないよないよ」

「え?」

「なあ善久、お前はまだ若いんだから失敗を恐れるな」

「でも・・・」

「一斎先生はこう言ってる、若いときにはベテランの様な慎重さを、老年期には少年の様な大胆さを忘れるな、ってな」

「それなら慎重で良いじゃないですか?」

「違うよ。本来若者は大胆であるべきなんだ。だからこそ時に行き過ぎる。それを注意した言葉だ。若いうちから慎重過ぎるようでは、ベテランになった頃には超保守的な頭でっかちになるぞ!」

「わかりました。明日、『注文をくださいと言ってみます!」

「うん。それで怒られたら、いくらでも一緒に謝りにいってやるから!」

「はい!」

「せっかく良い素質を持っているお前に小さくまとまって欲しくないんだよ。わかってくれるな?」

「はい、ありがとうございます!!」


ひとりごと 

営業マンも若いうちは、商売の怖さを知りません。

だからこそ、大胆な行動ができるのです。

しかし、多くの失敗を経験すると、徐々に細心の注意を払うようになります。

そして今度は大胆な行動がとれなくなっていきます。

慎重さと大胆さの出し入れができる営業マンであってこそ大きな成果をあげることができます。

どちらかに偏ってしまえば、常に成果を出し続けることは困難でしょう。


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第2299日 「志」 と 「邪」 についての一考察

今日のことば

【原文】
志有るの士は利刃(りじん)の如し。百邪辟易す。志無きの人は鈍刀の如し。童蒙も侮(ぶがん)す。〔『言志録』第33条〕

【意訳】
志が立っている人は、まるでよく切れる刀のように、多くの邪悪なものを退ける。一方、志のまだ立っていない人は、あたかも切れない刀のようで、子供たちにさえ馬鹿にされてしまう。

【一日一斎物語的解釈
志が立てば、邪な人間は寄りつかなくなるが、志が立っていなければ、子供にすら馬鹿にされるであろう。


今日のストーリー

今日の神坂課長は出社して新聞を読んでいるようです。

「ワクチン接種代行詐欺か。どうしてこんな単純な詐欺に引っかかるのかなぁ」

「また新手の詐欺ですか? 悪い奴というのは、よくも次から次へと新しい詐欺のネタを見つけ出しますね」

本田さんが応対したようです。

「いや、まったくだよ。そして、かならず引っかかっちゃう人がいるんだよなぁ」

「詐欺師というのは、微妙な人の欲望に付け込むのが上手ですよねぇ」

「やっぱり自分だけ得をしたいといった利己的な気持ちがあると引っかかりやすいよね」

「そうですね。投資系の詐欺は、欲に目がくらんだ人がターゲットですから」

「真っ当な商売をして、適正な利益を得るという堅実な経済活動を粛々とやるのが一番賢いのにね」

「といいながら、課長もギャンブルをやられているじゃないですか」

「ははは。ギャンブルは趣味だよ。あれでひと財産作ろうなんて考えていないよ」

「そうですか、お金がもったいないと思ってしまいますけど・・・」

「本田君はゴルフには結構お金を使っているでしょ。あれと同じだよ。君の場合はゴルフで解放感や達成感を味わうのが目的だろ? まさかプロになるつもりはないだろうから」

「もちろんです。できればシングルまでは行きたいと思っていますけどね」

「シングルか、高い目標でいいね。俺の場合は、ギャンブルで勝馬を推理する楽しさや馬券が的中するかどうかのスリルを味わっているんだよ。馬券購入は、いわばゴルフ場に支払うプレイ代みたいなものさ」

「なるほど」

「競馬場にも裏情報を仕入れたから特別に教えるとか言って、馬券を買わせて、当たったら分け前を貰う奴らがいるんだよ」

「外れたらどうなるんですか?」

「いつのまにかドロンさ」

「悪質ですね」

「しかし、一斎先生が言うには、志が立っていれば、そういう悪い奴らは寄りつかないらしい。逆に、志が立っていないと、ガキにも馬鹿にされると言っている」

「志ですか?」

「うん、要するに、世の中のお役に立つ仕事をして、適正な報酬をもらうという覚悟だよね。そういう気持ちがあれば、あぶく銭に目がくらむこともない」

「はい、目の前の仕事に励むことにします。では、行ってきます!」

「いってらっしゃい!」


ひとりごと 

一攫千金などという言葉を鵜呑みにしたり、信じたりすれば、ロクな結果にはなりません。

やはり、お金というものは、コツコツと働いて稼ぐものなのでしょう。

人より先にとか、人より多くといった「我」を捨てて、自分を後にする気持ちを大切にしましょう。


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第2298日 「立志」 と 「人生」 についての一考察

今日のことば

【原文】
(きび)しく此の志を立てて以て之を求めば、薪を搬(はこ)び水を運ぶと雖も、亦是れ学の在る所なり。況や書を読み理を窮むるをや。志の立たざれば、終日読書に従事するも、亦唯だ是れ閑事のみ。故に学を為すは志を立つるより尚(とうと)きは莫し。〔『言志録』第32条〕

【意訳】
志を強く心に抱いて、それを追求しようと心掛けるならば、たとえ薪や水を運ぶような仕事であっても、そこから何かを学ぶことができる。まして読書したり物事の道理を究明するならば、それ以上の学びを得ることができるのは当然である。しかし、志が立っていなければ、一日中読書をしたとしても、無駄なことである。つまり、学問をするには(仕事をすることも同じ)、まず何よりも志を立てること(立志)が大切なのだ。

【一日一斎物語的解釈
志があれば、どんなことからも学ぶことができる。志が立っていなければ、読書からも得るものは少ない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の梅田君と同行中のようです。

「梅田は将来、どんな営業マンになりたいんだ?」

「はい、私は人から尊敬される営業マンになりたいです!」

「お客様からか?」

「お客様はもちろんですが、同僚や先輩、後輩からも尊敬される人になりたいです」

「素晴らしいじゃないか。で、具体的にはどんなことを意識しているんだ?」

「正直に言いまして、どうやったら尊敬される人になれるのか、よくわかりません。ですので、とにかく目の前の仕事を一所懸命にやろうと思っています」

「へぇー、お前は見た目とは違って、結構真面目な奴なんだな」

「見た目と違いますか?」

「そりゃそうだろう。見た目はオリラジの藤森慎吾みたいじゃないか」

「えー、あんな軽いキャラに見られてたんですか?」

「たぶん、そう思ってるのは俺だけじゃないぞ」

「ショックだなぁ。それじゃ、とても人から尊敬されないですよね?」

「ははは、そうかもな」

「どうしたら尊敬される人になれますか?」

「立志かな?」

「りっし?」

「志を立てるってことだよ。尊敬される人というのは、なろうとしてなれるものじゃない。何か立派な成果を出すことが大事だと思う」

「はい」

「それには、俺はこれで世の中を良くするんだ!という何かが必要じゃないか」

「何か?」

「たとえば俺たちのメインのお得意先は、消化器内科だろ。消化器内科のドクターにとって一番の敵は癌だ。今でも年間何万人という人が消化器系の癌で亡くなっているんだからな」

「そうですね」

「そして俺たちができることは、医療機器の提供だ。安全で最適な医療機器を適正な価格で提供することで、癌の早期発見・早期治療を実現できれば、癌で死ぬ人は減る」

「そうか! 癌で亡くなる人を減らすというのが、神坂課長の志なんですね?」

「直接、癌を退治できるわけじゃないから、癌撲滅のお手伝いというところだろうけどな」

「私もその志をお借りしていいですか?」

「ははは。そうだな、貸してやる。そのうちに、お前独自の志を見つけろ。志が立てば、何をしたって勉強になる。本を読むだけが勉強ではないからな

「はい。いつか、課長に俺の、あ、失礼しました、私のオリジナルの志を披露します!!」


ひとりごと 

学を為すは志を立つるより尚きはなし。

良い言葉ですね。

何かを継続的にやっていくには、堅い志が必要です。

それさえあれば、どんなことからも学びはある。

人生の確立は立志にあり、ということでしょう。


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第2297日 「閑事」 と 「実事」 についての一考察

今日のことば

【原文】
今人率(おおむ)ね口に多忙を説く。其の為す所を視るに、実事を整頓すること十に一二、閑事を料理すること十に八九。又閑事を認めて以て実事と為す。宜(うべ)なり其の多忙なるや。志有る者誤って此の窠を踏むこと勿れ。〔『言志録』第31条〕

【意訳】
最近の人は、たいてい口ぐせのように「忙しい、忙しい」と言うが、普段の行動を観察してみると、実際に重要な仕事を処理し整えているのは、せいぜい十の内の一、二であって、重要でない仕事を十の内の八、九も行っている。また、そうした重要でない仕事を実際に重要な仕事だと思っている。これでは多忙になるのも当然であろう。志をもって取り組む人は、誤ってこのような落とし穴にはまってはならない。

【一日一斎物語的解釈
効率の悪い仕事をしている人に限って、「忙しい、忙しい」と口にする。本当にやるべき仕事に力を注がねば、志を成し遂げることはできない。


今日のストーリー

「ちょっと、俺は忙しいからさ、棚卸しはお前たち若者でやっておいてくれよな」

営業部特販課の雑賀さんが後輩の藤倉さんに棚卸しのチェックを押しつけたようです。

「もし計算在庫と実在庫がズレていたらどうすれば良いのですか?」

「そんなにズレないはずだから、適当にごまかしておいてくれよ」

「それはできないですよ!」

「先輩の石崎とかに相談してくれよ。俺はとにかく忙しいんだよ!」

「雑賀!!」

「げっ、大累課長に聞かれたか!」

「『聞かれたかじゃねぇよ。棚卸し以上に大事な仕事とはなんだ、言ってみろ!」

「の、納品ですよ。明日、緊急の症例が入ったから、今から持ってこいと言われたので・・・」

「胆膵内視鏡の症例か?」

「そうです」

「嘘つけ! なんで特販のお前が緊急症例のデバイスを納品するんだよ?」

「いや、廣田も忙しいだろうから・・・」

「わかったぞ、雑賀。お前、廣田から無理やり納品の仕事を奪ったんだな。目的は、棚卸しから逃げるためだな」

「ち、違いますよ」

「じゃあ、廣田をここに呼ぶぞ」

「・・・」

「雑賀、お前は棚卸しのブラックリストのトップに名前があるんだよ。お前がいなければ、在庫が合うわけないだろ!!」

「すみません。棚卸しは面倒くさいし、帰るのも遅くなるし、逃げたかったんですよね」

「そんなことだろうと思ったよ。だいたいな、『忙しい、忙しい』と言っている奴に限って、無駄な仕事ばかりやっているもんだ。本当に仕事ができる奴は『忙しい』なんて言葉を口にすることはないんだよ!」

「それじゃ俺が仕事ができない奴みたいじゃないですか!」

「毎回棚卸しで50万以上の損金を発生させる営業マンを、誰が仕事ができる営業マンだと思うんだよ?」

「・・・」

「効率の悪い仕事をするから、無駄な仕事が増えて、その結果、発注ミスをしたり、金額間違えをしたりするんだ。もっと、仕事を効率的にやれ」

「効率的って言われても、やることがたくさんあって、そう簡単にはいかないですよ!」

「本当に今やるべき仕事と後回しにできる仕事をしっかり選別しろ。それに事務員さんに任せるべき仕事や、他のメンバーと重複している仕事があれば、それを削ればいいんだよ」

「わかりました。藤倉、悪かった。棚卸しは俺がやる。悪いけど、廣田の代わりに納品に言ってきてくれないか?」

「はい」

「俺だって、仕事ができる男だと思われたいですからね。こんなことでケチをつけられるのは癪ですから、しっかりやりますよ!」

「ちっ、できる男と思われたいからやるっていうのが違う気がするが、まぁとにかくだ、棚卸しはお前にキッチリやってもらうからな!!」


ひとりごと 

仕事を効率的に処理するには、まず劣後順位をつけて、やらなくて良い仕事をカットするか後回しにすることです。

その上で、やるべきことに優先順位をつけて処理していくべきです。

いつも「忙しい」という人はたいてい、この劣後順位をつけていません。

その結果、すべての業務に中途半端に手をつけたり、やらなくて良いことを先にやったりして、自分で自分を忙しくしているのです。

劣後順位 → 優先順位 というステップが重要なのです。


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第2296日 「厳格」 と 「寛大」 についての一考察

今日のことば

【原文】
自ら責むること厳なる者は、人を責むることも亦厳なり。人を恕すること寛なる者は、自ら恕することも亦寛なり。皆一偏たるを免れず。君子は則ち躬自ら厚うして、薄く人を責む。〔『言志録』第30条〕

【意訳
自分に厳しい人は他人にも厳しく、自分に甘い人は人にも寛容である。このようにどちらかに偏るのが人の常だが、君子と呼ばれる人は、自分には厳しくとも他人には寛大に接するものだ

【一日一斎物語的解釈
自分には厳しく、他人には寛容であれ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業部特販課の大累課長とランチ中のようです。

「そういえば、Y社の菊池さんが課長になるんですって?」

「なんだ、お前も聞いたのか」

「みんなにベラベラしゃべっているみたいですよ」

「あいつの口の軽さは、文鳥の羽より軽いからな」

「そのお陰で、いろいろ情報を仕入れているのがあなたじゃないですか!」

「バレたか!」

「あの人もどちらかというと人格に難ありですよね?」

「うん、でも彼なりに悩んではいるらしいぞ」

「神坂さんに相談してきたんですか?」

「そう。相手を間違っているよな」

「確実に間違っています」

「ゴン」

「痛っ。ほら、今どきこんな暴力を振るうパワハラ男に相談するなんて、菊池さんの目も節穴だな」

「やかましいわ。相談されないお前の方が悲しいぜ」

「たしかに・・・。で、どんなアドバイスをしたんですか?」

「そりゃ、決まっているだろう。自分には厳しく、他人には優しく接しなさい、ってことだよ」

「ぶっ」

「汚ねぇな、吐くなよ」

「いや、あまりにも無責任なアドバイスを聞いたもんで」

「いちいちうるせぇな。そりゃ、俺もできていないかも知れない。でも、できていないからこそ、アドバイスできることもあるだろ」

「屁理屈じゃないですか?」

「タイガー・ウッズのコーチだった、ブッチ・ハーモンだって、実際に指導していることができる訳じゃないだろ」

「まぁ、たしかに神坂さんのアドバイスは間違っていませんね。どの口が言うかということは置いておけば」

「自分に厳しい奴は他人にも厳しく、自分に甘い奴は他人にも甘くなりがちだからな」

「それはありますね」

「でも、お前の場合は、他人に厳しく、自分に甘いよな」

「そのセリフ、そっくりそのままアンタにお返しするわ!!」


ひとりごと 

この章句とほぼ同じ内容を後に一斎先生は、「春風を以て人に接し、秋霜を以て自ら粛む。〔『言志後録』第33章〕」という箴言に昇華しています。

特に上に立つ人は、この言葉を何度も反芻して心に留めておくべきです。

もちろん、小生にとっても耳が痛い言葉でもあり、忘れてはいけない言葉でもあります。


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第2295日 「白河」 と 「田沼」 についての一考察

今日のことば

【原文】
大徳は閑(のり)を踰(こ)えざれ。小徳は出入すとも可なり。此(ここ)を以て人を待つ。儘(まま)好し。〔『言志録』第29条〕

【意訳】
儒教の根本精神である、五倫(父子の親・君臣の義・夫婦の別・長幼の序・朋友の信)や五常(仁・義・礼・智・信)をしっかり心得た生活をしているのであれば、日常の礼儀に少しくらい悖(もと)ることがあっても問題はない。そういう心をもって人に接することは、きわめて良いことである。

【一日一斎物語的解釈
大義を成し遂げるためには、小さな過失を咎めない度量も必要である。


今日のストーリー

Y社の菊池さんは、結局課長職を受けることになったようです。

今日はその前祝で、神坂課長と二人で「季節の料理 ちさと」に来たようです。

「神坂さん、俺ってこう見えて、意外と完璧主義なんですよ」

「それは良くないぜ」

「え、完璧主義はダメなんですか?」

「そりゃそうだよ。完璧な人間なんていないんだからさ。少しは許してあげる器の大きさがないとな」

「神坂さんはそういうタイプなんですか?」

「俺自身が完璧じゃないのは誰より分かっているわけだから、メンバーに完璧を求められないじゃない」

「意外と懐が広いんですね」

「意外とは余計だ!」

「あ、失礼しました」

「お客様の課題を解決して、売上計画を達成するためには、小さな過失には目をつぶった方が結局はうまくいくものだよ」

「なるほど、そういうものなんですか?」

「大事なことは、過失をいかにプラスに変えるかだよ。過失を責め立てて、メンバーのやる気をそいでしまったら元も子もないだろ?」

「たしかにそうですねぇ・・・」

「まぁ、俺も結構やり過ぎちゃう方だから、メンバーの顔色はよくチェックしているよ」

「そんなこともしなければいけないのかぁ。やっぱり課長って大変な仕事だなぁ」

「大丈夫だよ、この俺がやれてるんだから!」

「たしかに!!」

「だからさぁ、菊池君!!」


ひとりごと 

白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの濁りの田沼恋しき

これは、白河楽翁公こと、松平定信のあまりにもクリーンな政治に窮屈さよりも、かつての賄賂が横行した田沼意次の時代の方が自由でよかったと歌った狂歌です。

白河と田沼を掛けた比喩が見事ですね。

実際、あまりにもクリーンなマネジメントをしようとすれば、社員さんたちは閉塞感を感じるものです。

組織の存在意義を明確にし、多少のミスや過失には目を瞑る懐の広いマネジメントを心掛けたいものです。


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第2294日 「驕慢」 と 「信頼」 についての一考察

今日のことば

【原文】
(わず)かに誇伐の念頭有らば、便(すなわ)ち天地と相似ず〔『言志録』第28条〕

意訳
少しでも人を見下ろすような気持ちが生じただけで、万物を産み育てている自然の法則から外れることになる。自然の法則に背けば、善く生きることはできない

【一日一斎物語的解釈
宇宙の摂理に則って生きる人を仁者という。仁者から最もかけ離れた存在が、人と比較して自分が上だと見る人なのだ。


今日のストーリー

「チクショー、悔しいです!」

「どうした石崎。小梅太夫とザブングルの加藤みたいな顔して」

「茶化さないでくださいよ! だいたい、それ、どんな顔ですか!?」

「ごめん、ごめん。で、どうしたんだ」

「さっき、公立T病院でY社の倉田さんに会ったんですよ。あの人、今月MRIを納品したんです」

「あー、倉田さんな。あの人は性格が悪いからな」

「そうなんです。それで、『石崎君はいつも小さい仕事を一所懸命にやっていて偉いね』って言われたんです。完全に馬鹿にした態度で!!」

「そういう言い方をする人だよ。しかし、気にするな」

「でも、悔しいです!」

「そうやって人を小ばかにする奴は、かならずいつか同じ目に遇うはずだ」

「でも、あの人はもう20年もあの病院を担当していて、社内でもいつもトップ3には入る成績を上げているみたいですよ」

「たしかにな。でも、あの人はいまだに課長だろ。年齢と実績だけでみれば、部長になっていてもおかしくない」

「あー、そういえばそうですね」

「結局、社内でもウケが悪いんだよ。俺もよくY社の社員さんからあの人の悪口を聞くからな」

「もったいないですね。そんな実績を出しているのに」

「なんで気づかないのかな。人を馬鹿にしたり、下に見る態度というのは、宇宙の摂理に反する態度なんだ。そんなことをしたら、上手に生きることはできないんだよな」

「でも、そう言われると、私にもそういうところがあるので気を付けないといけないですね」

「ははは、先に言われてしまったな。それは、むしろ俺のセリフだよ。俺もすぐに人を小ばかにしてしまう悪い癖があるからな」

「はい、それは治した方が良いと思います!」

「あー、また部下にナメられた! (小梅太夫のモノマネで)チクチョー!!」


ひとりごと

この箴言は、小生のような調子に乗るタイプには定期的に読み返して心に刻むべき言葉です。

人を馬鹿にする人間というのは、実は自分に自信がない証拠であるとも言われます。

中国古代の宰相・孔文子は、下問を恥じなかったことを孔子に評価されています。

下問とは、自分より身分の下の人に質問をすることです。

こういう態度をとる人は、他人から信頼されるものです。

この章句と共に、「下問を恥じず」という言葉も心に刻んでおくべき箴言のひとつですね。


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第2293日 「大志」 と 「細事」 についての一考察

今日のことば

【原文】
真に大志有る者は、克く小物を勤め、真に遠慮有る者は、細事を忽にせず〔『言志録』第27条〕

【意訳】
真に大志をいだいている人は、小さな事柄でもしっかりと勤め、また真に遠大な考えをいだいている人は、些細な事柄でもおろそかにしない。

【一日一斎物語的解釈
本当に仕事ができる人というのは、小さな仕事を疎かにしないし、仕事の目的を理解している人は、細かいところにこそ配慮をする


今日のストーリー

今日は営業部の課長会議があるようです。

佐藤「いつものこととは言え、事前の会場準備が素晴らしいね」

神坂「石崎・善久・願海の同期トリオが机のカドを揃え、椅子をしまい、配布物も丁寧にファイルするという習慣を作ってくれました。それが、後輩たちにもちゃんと受け継がれているんですよ」

大累「相変わらずホワイトボードもピカピカに磨かれていますしね。こういうことがしっかり出来ている会社って少ないでしょうね」

「石崎たちは会議の重要性をよく理解してくれています。あいつら、資料をコピーする際に、どんな内容が議題になっているかもちゃんとチェックしているらしいですよ」

新美「それは神坂さんの指示なんですか?」

「イエスと言いたいところだけど、違うんだ。彼らが主体的にやり始めたことなんだよ」

「彼らは将来有望だね。そうやって小さな仕事を疎かにせず、一つひとつの仕事の意味や目的を理解していれば、必ず良い仕事人になるよ」

「考えてみたら、これを最初にやり始めたのはサイさん(元同僚・西郷課長、定年退職)だった気がします」

「そうだったね。サイさんが中途でウチに来て、最初は彼が机を揃え、椅子をしまうことを一人でやっていた。それがいつの間にかみんなに伝染していったんだね」

「この前、休日に会社に資料を取りに来たのですが、見事に椅子が机の中にしまわれている居室をみて、ちょっと感動しましたよ」

「あー、俺も以前に感動した覚えがある!」

「『雑用というのは、雑用だと思うから雑用になると森信三先生も言っている。やはり小さな仕事を疎かにしてはいけないね」

「同じく、売り上げの大小でお客様を過度に選別することも良くないことですよね?」

「たしかにな。そういう意識で仕事をしていると、同業他社に付け入る隙を与えてしまうよな」

「なんだか、若手のメンバーに初心に帰ることを教えてもらった気がしますね」

「そうだね。では我々は、ベテラン営業マンらしく、しっかりと決めるべきことを決める会議をしようじゃないか!」

神・大・新「はい!!」


ひとりごと

小さなことに拘り過ぎてはいけません。

しかし、小さな仕事を疎かにしてもいけません。

仕事には必ず真の目的があります。

それをメンバー間でしっかりと共有して、事を進めていくべきですね。


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第2292日 「計画」 と 「実行」 についての一考察

今日のことば

【原文】
事を慮るは周詳ならんことを欲し、事を処するは易簡ならんことを欲す〔『言志録』第26条〕

【意訳】
物事を計画する際は、周到かつ綿密であるべきであり、それを実行に移す場合には、容易かつ簡単にすべきである。

【一日一斎物語的解釈
計画は綿密に立て、実行に際してはシンプルに動け。


今日のストーリー

「善久、既存のお客様への計画訪問はどこまで進んだ?」

神坂課長が営業2課の善久君に質問しているようです。

「それが、まだ2割くらいでして・・・」

「はぁ? 俺が指示したのは1ヶ月以上前だぞ!」

「はい、施設によっては、もっていくネタをどうするかと悩んでいまして。手ぶらで訪問してもご迷惑になるだけだと・・・」

「なにをぐずぐずしているんだよ。この時期はどうせ新規のお客様にはアプローチできないんだから、まずはお得意先との関係強化だと言っただろ」

「すみません」

「せっかくお客様との取引割合に応じてランクを決めて、そのランクごとに訪問回数を設定したんだ。あとは実行するだけじゃないか」

「どんな話をすれば良いのかがわからなくて・・・」

「先月は消化器病学会、今月は消化器内視鏡学会がハイブリッドで開催されて、いまオンデマンドで配信中だ。そこから情報はいくらでも取れるだろ」

「あー、そうですね」

「営業部としても売り上げが伸び悩むのを手を拱いて静観しているわけにはいかないんだ。やれることはやらないとな」

「はい」

「営業部としては、拡大路線から拡充路線に変更して、徹底的に既存のお客様を喜ばせようという方向性を打ち出した。そして、まずはきっちりと訪問しようとみんなで確認したはずだよな?」

「はい」

「綿密に計画を立てたら、実行はシンプルにやるのみだ! 消化管系のドクターと胆膵系のドクター向けに俺がピックアップした動画があるから、それを見てネタを探してみろ」

「ありがとうございます」

「善久」

「はい」

「石崎もお前と同じことで悩んだようだ。しかし、あいつは俺のところに来て、ネタがないと悩みを打ち明けてきた。この施策を打ち出してすぐにな」

「ということは、一ヶ月前にですか?」

「そうだ。お前はネタがないと言いながらこの一ヶ月で計画の2割しか進捗していない。石崎は昨日時点で残り3施設だ」

「・・・」

「自分で考えて行動しようとすることは悪い事じゃない。しかし、考えるだけで行動しなければ、結局成長できないんだぞ」

「・・・」

「とにかく踏み出してみろ。踏み出せばなんとかなる。行き詰ったらいつでも俺のところに来い。行動した結果の悩みなら、いくらでも相談に乗ってやるから」

「ありがとうございます! 今日しっかり動画をみて、明日からしっかり行動します!!」

「うん、頼むぞ!」


ひとりごと

綿密に計画を立てたら、シンプルに行動せよ、と一斎先生は言います。

しかし現実には、粗い計画を立てておいて、実行で微調整しようとする組織が多いのではないでしょうか?

行動に落とし込んだら、100点を求めず、拙速優先の80点主義でとにかく実行するべきです。


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