今日のことば
【原文】
目を挙ぐれば、百物皆来処有り。軀殻(くかく)父母より出づるも、亦来処なり。心に至りては、則ち来処何(いず)くにか在る。余曰く、軀殻は是れ地気の精英にして、父母に由って之を聚(あつ)む。心は則ち天なり。軀殻成って天焉(これ)に寓し、天寓して知覚生じ、天離れて知覚泯(ほろ)ぶ。心の来処は乃ち大虚是れのみ。〔『言志録』第97条〕
【意訳】
視点を高く保てば、すべての物事にはその根源がある。たとえば我々の肉体は父母から生れており、父母がその根源である。では心はどこに根源があるのか。私は思う。「肉体は大地にある精気を父母が集めて形にしたものであり、心は天にある。肉体が出来上がると天上から心が宿り、心が宿れば知覚を生じ、心が離れれば知覚は消えてなくなる、つまり心の根源は天にある」と。
【一日一斎物語的解釈】
すべての物事には必ずその根源とされるものがある。何をするに際しても、根源となるものの存在を忘れず、常に感謝の気持ちを抱いて取り組むべきである。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業1課の新美課長と喫茶コーナーで休憩中のようです。
「バドミントンの桜田選手が早々に敗れてメダルを逃すとは考えてもいなかったですね」
「彼の場合、非合法の賭博で謹慎処分となり、そこから立ち直ったと思ったら交通事故で大怪我を負った。それでもオリンピックを前に世界ランク1位に返り咲いた。ここで金メダルを取ってサクセスストーリーが完結するのかと思っていたんだけどな」
「やはり、スポーツの結果に絶対はないですね」
「うん、彼の気持ちを思うと辛いよな」
「ここで挫けずに戦い続けてもらいたいですねぇ」
「人間というのは、喜びよりも悔しさがバネとなって、より強くなれるというところがあるよな。そういう悔しさが自分の活動の原点になるんだと思う」
「この悔しさを3年後のパリでぶつけて欲しいですね」
「自分という存在をもう一度見つめなおして、いま自分がここにいる奇跡に感謝する気持ちを抱いてくれたらいいな」
「どういうことですか?」
「両親が出会って結婚しなければ、自分という存在は生まれていないんだよな。同じく、彼をバドミントンに導いてくれた人の存在があって今があるはずだ。そういう根源といえるものをもう一回見つめなおして、再スタートを切って欲しいんだよ」
「今回の悔しさもそれに加えて、さらに強くなってもらいましょう!」
「この前、あるシンガーソングライターの曲の歌詞を読んで、凄く感動したんだ。『伏線回収』って曲なんだけどな」
「へぇー、どんな歌詞なんですか?」
「その時は気づかずに嘆いていた辛いこと、悲しい場面が実は今に繋がっていた。そして、ここからが報われる日々なんだ」
「過去の辛い出来事が実は後の幸せの伏線だったという意味ですか?」
「そう、そしてその伏線を回収しようじゃないか、って歌なんだ。桜田君にとっても、この辛い出来事は、将来の凄い出来事の伏線なんだよ、きっと」
「その伏線回収の時は、今じゃないってことですね」
「そう、早ければパリ。もしかしたら、もっとずっと後、引退後にあるのかも知れないけどな」
「我々の伏線回収の時もまだ先でしょうね?」
「間違いない。目線を高く持って、自分の根源をしっかりと見つめ直し、今やるべきことに力を注げば、いつか必ず伏線回収の時が来るはずだ!!」
「人生が楽しみになってきますね。私もその曲を聴いてみたいです!」
ひとりごと
ストーリーの中に登場する楽曲は、北海道出身のシンガーソングライター、みのや雅彦さんの還暦記念アルバム『泣きたくなったら此処へおいで』のラストナンバー『伏線回収』という曲です。
みのやさんも、いろいろな苦労を乗り越えて、プロの歌い手として40年というキャリアを積まれている人です。
自分のルーツ、根源を見つめ直したら、過去の出来事は将来の伏線だと信じて、伏線回収のためにポジティブに進んでいきましょう!!