一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2021年09月

第2423日 「敬」 と 「憧」 についての一考察

今日のことば

原文】
敬すれば則ち心精明なり。〔『言志録』第157条〕

【意訳】
敬の心があれば、心は清らで穢れないものとなる。

【一日一斎物語解釈
常に人を敬い慎む心があれば、心は清らかで明るくなるものだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、喫茶コーナーで特販課の雑賀さんと雑談をしているようです。

「最近、清水さんにいろいろと指導をして頂く機会が多くなったんですよ」

「あいつは、お前に親近感を覚えているんじゃないか?」

「はい。同じ臭いがすると言ってくれました」

「それ、うれしいか?」

「はい」

「あいつは、一匹狼で、後輩たちもみんなビビっているんだぞ」

「でも、根はすごく優しい人ですよ」

「たしかにな。あの口の利き方は問題だけど、意外と人の本質を見抜いているところがあるからな」

「私は、あの人のような営業マンになろうと決めました!」

「それ、大累が聞いたら泣くぞ」

「もう言いました」

「おいおい、落ち込んでなかったか?」

「いえ、たしかに目標となる先輩がいることは良いことだと言ってくれました」

「へぇー、あいつも変わってきたな」

「もちろん大累課長のことも尊敬していますよ。でも、仕事の進め方でいうと清水さんのやり方に憧れてしまうんですよ」

「尊敬する気持ちとか、憧れる気持ちっていいよな。そういう話を聞く俺まで清々しい気持ちになる」

「悪口は周囲の人の気持ちまで暗くしますよね」

「そうなんだよ。ところが、俺はけっこう人の悪口を言っちゃうんだよな」

「私もです」

「ってことは俺たちも似た者同士か。(笑)」

「清水さんは神坂さんに憧れていますよね」

「そうか?」

「はい。あの人の話には、何度も神坂さんの名前が出てきますよ」

「そうか、そうだったら俺も嬉しいよ。ずっとあいつのことを心配してきたからさ」

「石崎も神坂さんが大好きですよ」

「それは俄かには信じがたいな」

「たしかにあいつは直接口にはしませんけど、言葉の端々にそれを感じます」

「それくらいにしておこう。四十を超えてから涙腺が緩くなってきてさ」

「神坂課長、泣いてるんですか?」

「尊敬する気持ち、憧れの気持ち、それを聞いて流す涙。どれも美しいと思わないか、雑賀」

「はい、私はこの会社に入社できたことに心から感謝しています!!」


ひとりごと

人を敬う心、憧れる心は美しいものですね。

もしかすると、そういう心こそ、人が本来もっている純粋な心なのかも知れません。

お互いに敬い合う職場は、お互いに軽蔑し合う職場に比べて、間違いなくパフォーマンスも高いでしょうし、離職率も低いでしょう。

リーダーであるあなたがそういう組織を作りたいなら、まずリーダー自身が部下であるメンバーに対して敬意を表してみてはいかがでしょうか?


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第2422日 「敬」 と 「明」 についての一考察

今日のことば

原文】
一箇の敬は、許多の聡明を生ず。周公曰く、汝其れ敬して、百辟(ひゃくへき)の亨(きょう)を識り、亦其の不亨の有るを識れと。既に已に道破せり。〔『言志録』第156条〕

【意訳】
敬は、人を非常に聡明にする。孔子が敬愛した周公旦は、成王の育成役であったころ、成王に対して「あなたは人に対して慎みをもち、諸侯の貢物を受ける場合と受けてはいけない場合があることを理解してください」と言った。これこそ聡明さの極みであると。

【一日一斎物語解釈
人に対する敬意は、その人を聡明にする。人を敬することで、自分に近づいてくる人の誠(本心)を見抜く力が与えられる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行中のようです。

「課長、よく他人の良いところ探しをするように言われているじゃないですか? あれは何故なんですか?」

「だって、他人の悪いところを探してみろよ。欠点が見つかれば見つかるほど、その人が嫌いになってしまうだろ?」

「あー、たしかに」

「でも、相手の長所を探すようにすると、その逆でその人を好きになれる」

「はい」

「相手の長所っていうのは、自分にないものであることが多い。だから、相手の長所が見つかれば見つかるほど、尊敬の念が生まれてくるんだ」

「ということは、相手の短所というのは・・・」

「自分の中にあるものだよ。相手の欠点というのは、実は自分の欠点を鏡に映したものなんだ」

「え、そうなのですか?」

「自分にある汚いものには、ちゃんと自分自身で気づいているんだ。だから、他人に同じ欠点が見えると嫌になるんだな」

「良いところ探しにはそんな深い意味があったんですか?」

「そうなんだよ。さらに言えば、相手の長所を見つけてその人を尊敬するようになると、人を見る眼が磨かれるんだ」

「え?」

「相手の誠が見えるようになる」

「誠ですか?」

「そう。何か打算を隠して近づいてきたのか、それとも真心から近づいてきたのかがわかるようになる」

「ということは、気を付けないとお客様に見透かされてしまうんですね?」

「そう。だからこそ、損得勘定ではなく、善悪を基準にお客様の課題解決のお手伝いをしないといけないんだな」

「わかりました。まずは、私自身が他人の良いところ探しをする癖をつけて、尊敬する心を育てます!」

「いいね。では、練習をしてみよう。俺の良いところはどこだ?」

「えー、いきなり難解過ぎますよ。課長の良いところなんて、そう簡単に見つけられるわけないじゃないですか!」

「どういう意味だよ!!」


ひとりごと

人を尊敬する心をもつと、聡明になれるのだ、と一斎先生は言います。

自分の周りには、様々な意図をもって近づいてくる人がいます。

自分に厳しい人の中に愛を見出し、自分に優しい人の中に打算を見出すことができれば、大きな過ちを犯すことはないでしょう。

一斎先生の言う聡明さとは、そういうことを指しているのだと理解しておきます。


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第2421日 「敬」 と 「愛」 についての一考察

今日のことば

原文】
敬は能く妄念を截断(せつだん)す。昔人(せきじん)云う、敬は百邪に勝つと。百邪の来る、必ず妄念有りて之が先導を為す。〔『言志録』第155条〕

【意訳】
敬があれば妄念を断ち切ることができる。昔の人は、敬は数多の邪念に打ち勝つものだと言っている。数多の邪念は、先にみだらな考えが生じた後、これに先導されて湧いてくるのだ。

【一日一斎物語解釈
人に対して敬意を持つようになると、詰まらない考えを断ち切ることができる。組織を円滑にマネジメントしていく上で、メンバー同士が互いに敬意を持って仕事をすることが大変重要である。離職者が多い職場、トラブルが絶えない職場には、お互いを敬愛する空気が皆無なのではないか。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。

「O器械の金沢さんが退職するらしいですね?」

「そうらしいな。びっくりしたよ。O器械って今年に入って何人辞めているんだ?」

「私が知っているだけで3人はいます」

「存続の危機じゃないのかな?」

「そうなんでしょうけど、あそこの社長は自分の保身ばっかり考える人ですからねぇ」

「又吉さんだろ? あんな人を社長にするからいけないんだよ。太田会長は何を考えているのかねぇ」

「又吉社長を尊敬している社員は一人もいないと、この前会ったO器械の若い子が言ってましたよ」

「部下が上司を、上司が部下を互いに尊敬できない会社は脆いな」

「ウチは大丈夫ですかね?」

「俺は平社長も川井副社長も佐藤部長もみんな尊敬しているぜ」

「しかし、あなたの部下があなたを尊敬しているかどうか・・・」

「ゴン」

「痛っ。今どき露骨に暴力を振るう上司も稀な存在ですよ!」

「お前こそ、雑賀や藤倉が尊敬しているとは思えないけどなぁ」

「そもそも雑賀に関しては、俺自身が尊敬できていないですからね」

「それじゃダメだろう」

「じゃあ、聞きますけど、神坂さんは石崎を尊敬しているんですか?」

「尊敬しているかと言われると微妙だが、可愛いやつだと思っている」

「愛情と敬意は別物じゃないですか!」

「そうでもないぞ。これはサイさんの受け売りだけど、愛のない敬もなければ、敬のない愛も存在しないと思うんだよ」

「愛していれば自然と敬意が湧いてくるってことですか?」

「俺はそう思う。可愛がっていると、そいつの短所には目を瞑り、長所を伸ばそうという気持ちになる。そこから自然と敬意も湧いてくるんじゃないかな」

「そうかも知れませんね。敬意があれば、その人のことを好きにもなるでしょうしね」

「だからお前は俺のことが好きなんだろ?」

「誰がですか? そもそも愛情の前に敬意もほとんどないんですけど・・・」

「なんだよ、こんなに可愛がってきたのによ」

「神坂さん、マジで落ち込まないでくださいよ。いつものおふざけじゃないですか!!」


ひとりごと

仕事を進めていく上で、敬意をもって互いに接することは、最も重要なことかも知れません。

相手の長所をみて、自分にないもの、自分の弱いものを補う存在であることが分かれば、自然と敬意が湧いてくるはずです。

愛のない敬も、敬のない愛も、この世には存在しないのではないでしょうか?


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第2420日 「敬」 と 「誠」 についての一考察

今日のことば

原文】
妄念を起さざるは是れ敬にして、妄念起らざるは是れ誠なり。〔『言志録』第154条〕

【意訳】
心に敬の念があればみだらな考えは起さなくなるが、誠があればそもそも心にみだらな考えが生まれることすらない

【一日一斎物語解釈
慎み敬う心があれば、迷いを抑え込むことができる。だが誠を心に抱けば、迷いすら生じなくなるのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、佐藤部長の部屋に居るようです。

「四十にして惑わず、って『論語』にありますよね。私もすでに四十歳を超えましたが、未だに迷ってばかりです」

「ははは。良いんじゃないの。そもそもその言葉は、四十歳になると同時に迷わなくなったと読むよりは、四十代にして迷わなくなった、と読んだ方がいいだろうからね」

「あー、そういうことなら、まだかなり時間もありそうです」

「ほら、そうやって余裕を持つとあっという間に五十代がやってきてしまうよ!」

「たしかにそうですね。迷いについて、一斎先生の言葉は何かありますか?」

「あるよ。『妄念を起さざるは是れ敬にして、妄念起らざるは是れ誠なり』。つまり、慎み敬う心があれば、迷いを抑え込むことができる。だが誠を心に抱けば、迷いすら生じなくなるという意味だね」

「やはり『誠』がキーワードなんですね」

『誠』という徳目は、儒家にとって最も大事な徳目だとも言えるだろうからね。まず自分を偽らないこと、その上で他人に嘘をつかないこと。これが誠の定義だね」

「はい」

「自分を偽らないとは、自分の心に素直に生きること。すべての見栄やプライドをかなぐり捨てた真心があれば、他人を偽ることもない。そうなれば、迷いすら生じることがない」

「何をすべきかについては、実は自分自身で答えを持っているはずです。ところが欲とか見栄がその決断を鈍らせるから、自分に正直になれない」

「そのとおりだと思うよ」

「たしかに、まだまだ我欲から脱却しきれていません」

「だからこそ、まずは他人を敬う心、自らを慎む心を大切にしながら、我欲を抑え込むことが先決だと一斎先生は教えてくれているんだよ」

「はい。私の若い頃は、他人を尊敬する気持ちがまったくありませんでした。それでいて自分は凄い男なんだと何の根拠もないまま思い込んでいました」

「手を焼いた頃が鮮明に蘇ってくるねぇ」

「恥ずかしい過去ですが、戒めとするためにも時々こうして思い出して、自分を律しています」

「良い事だとは思うよ。でもね」

「なんですか?」

「できれば私が居ないところで思い出して欲しいなぁ」

「そんなに悪夢のような出来事だったんですか?」

「うん、悪夢なら夢だからまだ良いよ。あれは私の目の前に現実の出来事として起こったことだから・・・」

「以後、気をつけます・・・」


ひとりごと

小生も儒学を学ぶ過程で、この誠という概念と格闘してきました。

そして、今現在の自分なりの定義が、

誠 = 忠 + 信 

ということになります。

己を偽らない真っ直ぐな心をもって他人との約束を守ること、と言い換えてもいいでしょう。


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第2419日 「誠」 と 「夢」 についての一考察

今日のことば

原文】
意の誠否は、須らく夢寐(むび)中の事に於いて之を験すべし。〔『言志録』第153条〕

【訳文】
自分の心が誠であるか誠でないかということは、せひ共、ねむって夢を見ている間に試してみるべきである。

【一日一斎物語解釈】
自分の心に誠があるかないかは、寝ている間の夢で試せばすぐに分かる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、高校時代の同級生で俳優をしている山南さんと一献傾けているようです。

「神坂、さすがにもう限界かなと思い始めたよ」

「俳優を辞めるのか?」

「あぁ、カミさんの父親の運送会社で運転手として正規に雇ってもらおうかと思ってな」

「残念だな」

「え?」

「俺みたいに安易にサラリーマンになんかならずに、自分のやりたい道を貫き通しているお前のことが、俺には羨ましかった」

「神坂・・・」

「お前は売れない俳優かもしれないが、俺たち3年8組のクラスメートの誇りなんだぜ」

「俺だって続けたい。今でも夢の中では、出演した映画の演技が当たって、一躍有名になる場面を何度も見るんだよ。しかし、実際には・・・」

「続けろよ、山南」

「勝手なこと言うなよ。俺だって生活していかなければならないんだ」

「わかってるよ。でもな、今でも夢に出てくるほど思い続けているなら、まだ可能性はあると思ったんだ」

「なぜだ?」

「俺が最近座右の書にしている『言志四録』という本の中に、『自分の心に誠があるかないかは夢の中で試せばすぐにわかる』と書いてあった。だから、夢に出てくるなら、お前が俳優になりたいという想いはホンモノだと思ったんだ」

「お前はプロ野球選手になりたかったんだよな?」

「ははは。恥ずかしいぜ。結局、大学時代に鳴かず飛ばずで早々に夢を諦めてしまったからな。だからこそ、お前が羨ましかったし、応援したいと思っているんだよ」

「神坂、なぜか無性にお前に会いたくなった理由がわかったよ。お前ならそういう言葉をかけてくれる気がしていたんだろうな」

「勝手なことを言ってすまない」

「いや、覚悟ができたよ。カミさんは続けて良いと言ってくれている。もう少し夢を追い求めてみるよ」

「頼む、山南。お前が夢を叶えるところを見させてくれ。そして夢が叶ったら、クラスのみんなで集まってパーティをやろう!」

「そのときの司会はお前に頼むからな」

「もちろんだ、任せておけ!!」


ひとりごと

誠があるかないかは、夢で試せばわかる。

これはなかなか大胆な発想ですね。

しかし、心の底から溢れる想いがあるなら、夢に出てくるものなのかもしれません。

孔子もかつては夢の中に憧れの人である周公旦がしょっちゅう出てきたそうです。

しかし、晩年になって周公旦を夢に見なくなったといって嘆くシーンが『論語』に登場します。

夢に出てくるほどの想いを持ち続けたいものです。


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第2418日 「誠」 と 「慎独」 についての一考察

今日のことば

原文】
畜厚くして発すること遠し。誠の物を動かすは、慎独より始まる。独処能く慎めば、物に接する時に於いて、太(はなは)だ意を著(つ)けずと雖も、而も人自ら容(かたち)を改め敬を起さん。独処慎む能わざれば、物に接する時に於いて、意を著けて恪謹(かっきん)すと雖も、而るに人も亦敢て容を改め敬を起さず。誠の畜不畜、其の感応の速やかなること已に此(かく)の如し。〔『言志録』第152条〕

【意訳】
徳目の蓄えが潤沢であればその影響力は大きくなる。人の誠が相手を動かすのは、独りを慎むところから始まる。独りを慎むことが深ければ、こちらが意を凝らさなくても、接した相手は居住いを但し、敬服するものである。独りを慎むことがなければ、こちらが如何に意を凝らしても、接する相手は態度を改めることなく、敬意を示すこともない。誠をどれだけ深く身に蔵しているかによって、その感化するスピードはこんなにも違うものだ、と一斎先生は言います。

【一日一斎物語解釈】
徳目を自分の内に備えている人の影響力は絶大である。人の誠が他人を動かすのは、なにより独りを慎むことから始まる。誰も見ていない時に節制できる人は特別に意識しなくても人を感化するが、独りのときに自分に甘い人はどんなに策を弄しても人の心を動かすことはできない。リーダーがメンバーを思うままに動かしたいと思うなら独りを慎み、誠を蓄積する以外にないのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTubeで『孔田丘一(こうだきゅういち)の儒学講座』を閲覧しているようです。

「諸君、いよいよ緊急事態宣言も解除されるようじゃな。これでわしもどこにでも行ける。ぜひ、講演に読んでくださいな。お安くしときますから!」

「ちっ、いきなり売り込みかよ! 儒学者として恥ずかしくないのかな?」

「この動画を見ている諸君は、恐らくは組織の長をやっておる方が多いじゃんろう。人の上に立つ者は、誠を蓄積しておかねばなりませんぞ!」

「誠のない人には、誰もついて来ることはない。それほど誠は大切なんじゃ」

「誠があれば、特別な言葉や策を弄さなくとも人はついてくる。しかし、誠がなければ、どんな立派なことを言ったところで、誰も耳を傾けてはくれんのじゃ」

「どうやったら誠が溜められるのかって? そんなの自分で考えなされ、と言いたいところがだ、そう言ってしまったらこの動画の意味がない」

「わかってるなら、とっとと教えろよ。すぐもったいぶるからな、この爺さん」

「誠を蓄積したいなら、独りを慎むことじゃ。誰も見ていないからと自分を甘やかすようでは、簡単に見透かされますぞ」

「あんたらの部下は、見ていないようで、ちゃんとあなたを観察しているんじゃ」

「誠というのは、忠と信という2つの徳目を合わせたものじゃ。忠とは、己に嘘をつかないこと。信とは人に嘘をつかないこと」

「要するに、自分を偽らず、自分との約束を守れる人であって、はじめて他人との約束も守ることができるものじゃ」

「自分に甘い人間が、自分のことを棚に上げて、厳しいことを言ったところで、まったく響かんのじゃよ」

「特にそこの鼻くそをほじくりながら動画を見ているお前! そんなことでは、部下が可哀そうじゃて」

「げっ、なんで俺が鼻くそをほじくっているのがわかったんだ?!」

「いいかな、慎独ということを、誰も見ていないときに手を抜かないという意味に捉えているようでは甘いのじゃ」

「人が見ていようといまいと、常に同じ態度・行動がとれることを言うんじゃ。人前と独りの時で行動を変えているようでは、ニセモノに過ぎん!」

「誠を蓄積せねば、諸君の組織に明日はないぞ! そう思って、慎独に励み給え! では、また会おう」

「あ、そうだ。くれぐれも講演依頼よろしくお願いしますよ!」

「また好きなことだけ言って、最後に自己PRまでして終りやがった。ふざけた爺さんだよな」

神坂課長は、今日からアイスをホットに変えたコーヒーを飲みほしました。

「そうか、やはり独りを慎むことが誠をため込むための最善の行動なんだな。よし、今日は競馬をやめて、読書に時間を費やす一日にしよう!」


ひとりごと

「近頃は誠がなくなった」。

これが晩年の安岡正篤先生の口癖だったそうです。

誠のある人には人がついてくるが、誠のない人には誰もついて来ない、と一斎先生は言います。

そして、誠は慎独によって蓄積されるのだそうです。

やはり、独りを慎むことが大切なのですね。


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第2417日 「本気」 と 「忠告」 についての一考察

今日のことば

【原文】
善を責むるは朋友の道なり。只だ須らく懇到切至にして以て之を告ぐべし。然らずして、徒に口舌に資(と)りて、以て責善の名を博せんとせば、渠(かれ)以て徳と為さず。卻(かえ)って以て仇と為さん。益無きなり。〔『言志録』第151条〕

【意訳】
善を行うことを励まし合うことは、同門の友としてのなすべき道である。この場合は真心を尽して忠告すべきである。もし口先だけで、友に積善を勧めることで売名を図ろうとすれば、かえってそれは徳とはならず、友人からも仇として疎んぜられ、まったく無益なことである。

【一日一斎物語解釈】
善行を勧め悪事をさせないようにすることは、同じ釜の飯を食う同僚としては当然のことである。その際には真心を尽くして忠告すべきである。上からの目線で自分の正しさを主張するような態度をとれば、相手は感謝するどころか、かえって逆恨みをすることになる。それでは忠告する意味がないではないか。


今日のストーリー

営業1課の清水さんが、神坂課長をランチに誘ったようです。

「めずらしいな、お前から声をかけてくれるなんてさ」

「神坂さんにはいつもお世話になっていますからね」

「おいおい、気持ち悪いな。そういうの、お前には向いてないぜ」

「なんだよ! せっかく人が変わろうと思っているんだから、先輩として温かく接してくれよ!」

「ははは、ごめん、ごめん。しかし、それでこそお前だな」

「ちっ、意地の悪い先輩だぜ」

「ところで、用件は何だ?」

「用件なんてないよ。そうだな、敢えて言えば、神坂さんは何故、佐藤部長の言うことは素直に聞いたのかを知りたいな。手の付けられない一匹狼がなぜ変われたのかをさ」

「それは簡単なことだよ。あの人以外にも俺にいろいろと忠告してくれる先輩はいた。ただ、その人たちの忠告というのは、結局は自分の正しさを押しつけているように思えたんだ」

「佐藤さんは違ったのか?」

「あの人は真直ぐだった。俺が変わらないなら、刺し違えるくらいの覚悟があった。この人は自分を犠牲にしてでも俺を変えようとしていると感じたんだ」

「なるほどな」

「それに、自分の意見ではなく、佐藤一斎先生の言葉を巧みに使って俺を諭してくれた。最初は、『また一斎かよ!』って思ったけど、なぜか後で訴えかけてくるんだよ、一斎先生の言葉は」

「やっぱり、そういう真っ直ぐさって大事だよな。今どき、時代遅れだと言われるかも知れないけど、俺もそういうやり方しかできないからな」

「言いたい奴には言わせておこう。良いじゃないか、時代遅れでも。思いっきり遅れて周回遅れになれば、また肩を並べられるぜ!」

「神坂さんらしい発想だな。(笑)」

「俺の譬えは下衆だけど、分かりやすいらしい。(笑)」

「あんたが、佐藤部長に諭されたように、俺もあんたに諭されたよ。あんたを見て、あんたみたいに変わりたいなと思ってしまった」

「清水、変わろうぜ。死ぬまで進化し続けようじゃないか!」

「正直、俺なんかが後輩にアドバイスをするのはどうなのかな?と思っていたんだが・・・」

「お前にしかできないアドバイスがあるはずだ。カッコいい言葉なんていらない。お前の言葉でお前の気持ちを伝えてやってくれ。必ず伝わるよ!」

「はい、ありがとうございます!」


ひとりごと

中途半端な気持ちや、自分の正しさを主張するためのアドバイスは、相手に伝わりません。

それどころか、かえって憎まれることにもなりかねないのだ、と一斎先生は言います。

これは小生には痛いほどよくわかります。

かつての小生のアドバイスはまさにそういうアドバイスだったのです。

しかし、いつの時代であっても、真心は伝わるものではないでしょうか?

本気でぶつかってくるアドバイスには、人は心を動かされます。

時代遅れと言われようと、真心を大切に生きていきましょう!!


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第2416日 「組織」 と 「信頼」 についての一考察

今日のことば

原文】
信、上下に孚(ふ)すれば、天下甚だ処し難き事無し。〔『言志録』第150条〕

【意訳】
職位が上の人からも、また部下からも信頼を得ているならば、この世の中で成し難いことなどない。

【一日一斎物語解釈】
職位が上の人からも、また部下からも信頼を得ているならば、どんな仕事もうまくいく。


今日のストーリー

営業2課の善久君が、昨日の神坂課長の見事なクレーム処理について職場で話をしているようです。

本田「たしかに、神坂課長のクレーム対応は凄いよ。僕もいつも感心するもんな」

善久「クレーム対応のコツは、『想定外を想定する』ことなんだそうです」

石崎「なんだ、それ? 想定外って想定できないから、想定外なんじゃないの?」

「うん。何が起きるかはわからないけど、とにかく想定外のことは起きると覚悟しておくことが重要なんだって」

「たしかに、緊急事態になると我を失う人というのは、結局そういう心構えができていない人なんだろうな」

「はい。カミサマの場合は、想定外のことが起きたら、『そう来たか!』と思って、思わず笑ってしまうらしいです」

「変態だな」

「でも、そういう課長だからこそ、安心してクレームのときに同行してもらえるわけだね」

「たしかに。あの人が一緒だとめっちゃ心強いですからね」

「そうやって、見事に部下の信頼を勝ち取っているんだな、あの人は」

「部下からだけでなく、上司の皆さんも課長のことを信頼して任せているように見えるよね」

「佐藤部長は全幅の信頼を置いている気がしますね」

「でも、神坂課長をそこまでに育てたのは佐藤部長だからね」

「ということは、佐藤部長はさらに偉大だということですかね?」

「間違いないね。でも、こうやって自分の上司を信頼できるって、僕達にとってもありがたいことだよね」

「はい。大学時代の同級生に会うと、だいたいの奴らは上司の悪口を言っています」

「ザキはけっこうカミサマの悪口を言ってない?」

「ゼンちゃんは、気づいていないのかな? あれは愛のある悪口だよ」

「悪口に愛があるのかなぁ?」

「ははは。いずれにしても、上司と部下が互いに信頼し合える職場の一員でいられることに感謝しよう」

「そうですね。同級生の話を聞いていると、自分がいかに恵まれているかを再確認できます」

「これからもカミサマを盛り立てていこうよ!」

「そうだね」


ひとりごと

この架空の職場は、小生の理想を描いたものです。

かつて、部下指導に失敗し挫折を経験した時には、部下の皆さんの信頼を勝ち取れていませでした。

だからこそ、こんな職場に憧れています。

そして、何の因果か、また職場の長に任命され20名強の支店をまとめることになりました。

理想を現実にできる様、精進していく所存です!


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第2415日 「想定」 と 「信頼」 についての一考察

今日のことば

原文】
臨時の信は、功を平日に累(かさ)ね、平日の信は、効を臨時に収む。〔『言志録』第149条〕

意訳】
俄かの出来事をうまく処理して信用を勝ち取り、その功績が本となって、平常の信用が加わることがある。また、平常得た信用によって、時に臨んで手柄を顕わすこともある。

【一日一斎物語的解釈】
突発的なことを巧みに処理することで日々に信頼度を増し、また日々の信頼の積み重ねが思わぬ突発的な出来事効果をもたらすこともある


今日のストーリー

今日の神坂課長は、クレーム処理を終えて会社へ戻る途中のようです。

「課長、お見事でした。最後は、野田先生もすっかりお怒りが解けて、笑顔で話されていましたね」

施設担当の善久君がハンドルを握っています。

「クレーム処理は俺の得意分野だからな。怒りは第二感情。いかに第一感情に寄り添って話ができるかが、クレーム処理の勝負どころだ」

「長らくお待たせしてようやく納品した製品が故障していたら、やっぱりがっかりしますよね」

「そう、そのがっかりこそが第一感情だ。だから、そこにフォーカスして話をしたわけだ」

「はい。勉強になりました」

「上司である俺に対する尊敬の念がグッと高まっただろう?」

「もちろんです!」

「こうやって、緊急事態をうまく処理できれば、日々信頼が増していくわけだ」

「お客様に対しても同じですね?」

「そうだな。緊急の症例が入ったときに、さっとデバイスを準備できれば、一気に信頼度アップとなるからな」

「はい。でも、そのためには日頃の準備が必要ですね?」

「おー、さすがは俺の教え子だな。準備していなければ、誰だって慌てるものだからな」

「でも、何が起きるかわからないのに準備をするのって、不可能じゃないですか?」

「想定外を想定しさえすればいいんだよ」

「はい?」

「必ず想定外の出来事は起きる。まずはそのことを覚悟しておくんだ。しかし、何が起こるかまではわからない」

「それで良いのですか?」

「想定外がすべてお見通しなら、想定外とは言わないだろ?」

「たしかに、そうですね。(笑)」

「日々、お客様や仲間の信頼を得る努力を続けつつ、それでも想定外の出来事が起きると覚悟しておく。そうすれば、突発的な出来事が起きても、冷静に対処できるだろ?」

「はい」

「これが仕事をうまくこなす上で一番大事な心構えだと、俺は信じているんだ」


ひとりごと

想定外を想定する。

これは、小生が大事にしている考え方です。

どんな想定外が起るかはわかりませんが、しかし、必ず想定外は起こるもの。

そう考えておけば、いざという時に冷静に対処できるものです。

そうした積み重ねが信頼を増していきます。

想定外を想定するという準備をお忘れなく!


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第2414日 「口先」 と 「考え方」 についての一考察

今日のことば

原文】
信を人に取ることは難し。人は口を信ぜずして躬を信じ、躬を信ぜずして心を信ず。是を以て難し。〔『言志録』第148条〕

【意訳】
人の信頼を勝ち取ることは容易なことではない。人は言葉ではなく行いを信じ、さらに行いよりも心を信じるものである。だからこそ信頼を勝ち取ることは容易ではないのである。

【一日一斎物語的解釈】
お客様やパートナーから信頼されるためには、言葉だけでなく行動することが重要である。しかし、それ以上に重要なのは、その行動に自分の価値観を込めることである。


今日のストーリー

営業の2課の石崎君と同期の善久君が雑談をしているようです。

「ゼンちゃん、Y社の戸津井さんて知ってる?」

「もちろんだよ。あの人は滅茶苦茶流暢にしゃべるよね」

「製品知識も豊富だし、俺はてっきりスーパー営業マンなのかと思ってたよ」

「僕も最初はそう思った。でも、神坂課長に聞いたら、全然そうじゃないと教えてくれた」

「うん。本田さんも、あの人は口だけで全然実行が伴っていないんだって言ってた」

「あそこまで流暢に話せるのって、すごい武器になるはずなのに、勿体ないよね」

「S中央病院では、知らない人がいないと言われるくらい顔も広いらしいよね」

「あの人は釣りが趣味で、先生とか看護師さんともよく釣りに出掛けているみたいだよ」

「それなのに、何で売れないのかなぁ?」

「本田さんが言っていたように、行動が伴っていないからじゃないの?」

「それだけかな? そもそも売る気がないんじゃないのかな?」

「営業マンなのに、そんなことあり得る?」

「あの人は、お客様と釣り友達になることを最優先している気がするんだよね」

「もし、そうだとすれば、友達とは商売したくないという気持ちもわかる気がするね」

「ほら、カミサマがよく言っているじゃん。『お客様とは一線を越えて友達のような関係になるな』って。商売ってそういうものなのかもね」

「そうだね。口先ばかりで行動が伴わない。おまけにお客様を友達にしてしまっために、商売の幅を狭めてしまったんだね」

「やっぱり話が上手なだけじゃ、モノは売れないんだね」

「うん。言葉より行動、そして行動より考え方が重要だってことかな?」

「ちょっと理解に苦しむ人だけど、俺たちにとってはありがたい存在だね」

「なぜ?」

「だって、口先だけじゃ売れないってことを身をもって教えてくれているんだからさ」

「反面教師ってことか。たしかに、そうだね!」


ひとりごと

どんなビジネスでも、あるいはスポーツにおいても、考え方というのはとても重要です。

「チャンスの場面、『ここで打たなければいけない』と思うと、プレッシャーに負けます」

「『よし、ここは俺が絶対に打ってやる』と思うからこそ、思わぬパワーが発揮されるのかも知れません。

正しい考え方を持ち、口先よりも行動を重視するなら、どんな世界でもそれなりの成果は上がるので
しょう。


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れみれみ