一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2022年01月

第2536日 「有事」 と 「平時」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人の一生遭う所には、険阻有り、坦夷(たんい)有り、安流有り、驚瀾(きょうらん)有り。是れ気数の自然にして、竟(つい)に免るる能わず。即ち易理なり。人は宜しく居りて安んじ、玩びて楽しむべし。若し之を趨避(すうひ)せば、達者の見に非ず。〔『言志後録』第25章〕

【意訳】
人が一生で出会うことには、険阻な道や平坦な道のようなものもあれば、穏やかな流れや急流に似たものもある。これは自然の成り行きであって、結局避けて通ることはできない。これは易の道理である。人はこれに対処するのに、そのまま受け入れて心を安らかに保ち、あえてそこにぶつかって楽しむくらいでよい。もしここから逃げようなどと考えれば、それは立派な人の行為ではない。

【一日一斎物語的解釈】
仕事も人生も平坦な道ばかりではない。むしろ試練や逆境にぶつかるのは自然の流れなのだ。問題はその時の心構えにある。逃げても逃げ切れるものではないと覚悟して、一旦は受け容れ、そこから何をすべきかを考え行動すれば、道は開けるはずだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、元同僚の西郷さんが主催する読者会に参加しているようです

「なぜ人は学ぶ必要があるのでしょうか?」

「サイさん、それは人として恥ずかしくない生き方をするためじゃないですか?」

「なるほど。では、神坂くん。恥ずかしくない生き方って、どんな生き方だと思う?」

「うーん、人から馬鹿にされない生き方ですかねぇ?」

「どういう時に人は馬鹿にされてしまうだろうか?」

「同じ失敗を繰り返したり、素直に謝らずに言い訳をするような時かなぁ?」

「なるほど、他には?」

「人生のピンチに陥った時に、ジタバタと悪あがきをしたり、悪いことをしてでもそこから逃げ出そうとするときなんかも、側からみたら「何やってるんだろう」と思いますね。

「そこだよ、神坂くん。

「え?」

「艱難辛苦に直面した時の反応には大きく分けて2種類のタイプがある。ひとつは、いま神坂くんが言ったように、無理矢理そこから抜け出そうと悪あがきをするタイプ。もうひとつは、その状況を一旦受け容れて、今はこの艱難辛苦と正面からぶつかっていく時だと捉えるタイプ」

「なるほど」

「人は平常心でいる時には、他人の忠告も受け入れやすいけど、苦境の最中では、耳に入らないものだよね」

「はい、そうですね」

「だからこそ、平時に学ぶ必要があるんだよ。『艱難辛苦に遭ったら、今はその時と受け容れて、むしろその状況を楽しめ、なんて艱難辛苦の最中に言われたって、腹が立つだけだよね」

「はい。でも、事前に学んでいれば、『そうか、今がそのときか』と覚悟ができるかも知れませんね」

「そう、だから人は学ばねばならないんだ。禍福終始を知って惑わないためにね」

「すごく腹に落ちました」

「人は生きている限り、必ず辛い出来事に遭遇する。それはある意味当然のことなんだと理解していれば、命を粗末にするようなことはないよね」

「はい、私の兄は事故で死にました。まだ生きたかったはずなのに。だから私は兄の分まで生きなければならないんです」

「そのためにも学び続けようね」

「はい、ありがとうございます」


ひとりごと 

学問の目的は何か?

荀子は、禍福終始を知って惑わないために学ぶのだ、と言います。

有事の際に、冷静に物事に対処するためには、平時に備えをしておかねばなりません。

学問とは、人生の有事に対する最も大切な備えなのです。


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第2535日 「真の功名」 と 「真の利害」 についての一考察

今日のことば

【原文】
真の功名は、道徳便(すなわ)ち是れなり。真の利害は、義理便ち是れなり。〔『言志後録』第24章〕

【意訳】
本当に功成り名遂げるとは、道に適ってこそ得られるものであり、本当の利益とは義理に適って得たものである。

【一日一斎物語的解釈】
ビジネスにおける真の成功とは、義を行なうことで得るものであり、真の利益とは正しいやり方で得たものを言うのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、昨日に引き続き営業2課の会議の最中のようです。

「大型の器械というのは、更新サイクルが長いから、次の商談の時は自分は担当するかどうかわかりませんよね?」

「それはそうかもしれないな。梅田、それがどうした?」

「それならお客様の課題解決も大事ですけど、やっぱり儲けたいですよ。」

「梅田、そういう自分本意の考え方では、一流の営業人にはなれないぞ」

なぜですか?」

「お前が担当変更になって、新しい施設の担当になったとしよう」

「はい」

「その時、前任者がお前と同じ考えだったとしたらどうなる?」

「あっ、そうだとしたら、めちゃめちゃアウェイな環境で営業しないといけないでしょうね」

「自分で撒いた種は必ず自分に戻ってくるものなんだ」

「だから、『義が必要なんですね?」

「うん。担当者とお客様との関係は短期的なものかも知れない。しかし、当社とお客様との関係はこれからもずっと続くんだ」

「続けなければいけないですよね」

「俺たちは、当社とお客様との歴史の1ページを作っているんだからな」

「歴史の1ページか、カッコいいですね」

「我々にとっての真の利益とは、『義をベースにして得た利益を指すんだ」

「金額の大小ではないんですね?」

「そうだよ。お客様が満足してくれているなら、いくら高い価格で販売しても貰い過ぎにはならないし、不満であるなら、大幅な値引きをしても貰いすぎなんだ」

「お客様が満足して高く買ってくれる。そういう商売を成功商談って言うのですか?」

「まさに、そうだよ。しかし成功は結果だ。成功を目指すのではなく、お客様の課題解決を正しい商売でお手伝いすることだけを考えよう!」

「はい!」

「梅田が良い質問をしてくれたお陰で、みんなにも参考になる話ができたんじゃないかな。ぜひ、義を貫く商売を心がけて、残りの期間をしっかりやってくれ!」


ひとりごと 

かつて、戦国の武将は、戦における大義がなければ戦をしなかったと言われています。

翻って現代における我々ビジネスマンも、やはり義を大切にした商売を心がけるべきなのではないでしょうか?

それこそが、日本人のDNAに脈々と流れる武士道の精神を活かすことになるはずです!!


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第2534日 「先義」 と 「後利」 についての一考察

今日のことば

原文】
君子も亦利害を説く。利害は義理に本づく。小人も亦義理を説く。義理は利害に由る。〔『言志後録』第23章〕

【意訳】
立派な人も利害を説く。ただしその利害は義(正しい道)に基づいている。小人も義について語るが、その義よりも己の利が優先される

【一日一斎物語的解釈
一流の営業人も義に基づいた利(正しい商売をした結果としての利益)については語る。しかし売れない営業マンは自分の利益のために義を語る。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の会議を主催しているようです。

「たしかにCOVID-19の影響で医療機器の購買意欲が停滞している。だけど、こういうときこそ、先義後利だぞ」

「『先義後利ってどういうことですか?」

「梅田、それは前にも説明したはずだぞ!」

「もう一回お願いします」

「ちっ、しょうがないな。自分たちが儲けようと思うな、ということだ」

「あー、自分たちの利益より、お客様の利益を優先しろ、という意味ですね?」

「うーん、70点だな」

「合格ですか?」

「俺の合格は80点から」

「じゃあ、失格じゃないですか!」

「お客様の利益に貢献するのは、大事なことだ。しかし、そこで道を踏み外しては駄目だ」

「賄賂とかですか?」

「そうだよ。誰に見られても恥ずかしくない商売をした上で、お客様が儲けて頂くなら何の問題もない」

「それが『義』なんですか?」

「そう、正しい商売、正しい売り方。それが『義』だ」

「正しい商売をしたときは、私たちも儲けていいんですよね?」

「それはそうさ。あくまでもお客様のお役に立った結果として我々も儲けることができるなら、それが理想だし、一流の営業人だ」

「ということは、自分たちの利益を優先するのは三流の営業マンということですね?」

「そのとおり!」

「三流にはなりたくないです! しっかり義のある商売をします!!」

「もうこれで、『先義後利』を忘れることはないな!!」


ひとりごと 

お客様と長期的な関係を構築したいなら、短期的な利益を目指さないことです。

信用ではなく、信頼を得るには、むしろ最初に少し損をする必要があるのかも知れません。

信用には担保がありますが、信頼は無担保です。

無担保でお金を支払ってくれる関係づくりが、そんなに簡単なはずはないですよね?


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第2533日 「真敬」 と 「贋敬」 についての一考察

今日のことば

原文】
心に中和を存すれば、則ち体自ら案舒(あんじょ)して即ち敬なり。故に心広く体胖(ゆた)かなるは敬なり。徽柔懿恭(きじゅういきょう)なるは敬なり。申申夭夭(しんしんようよう)たるは敬なり。彼の敬を視ること、桎梏(しっこく)徽纆(きぼく)の若く然る者は、是れ贋敬にして真敬に非ず。〔『言志後録』第22章〕

【意訳】
心が常に中和の状態であれば、体はゆったりとして安らかである。これがすなわち敬(つつしみ)である。『大学』伝の六章にある「心は広くして体は胖かなり」というのも敬である。『書経』(無逸)にある文王の人となりが「よく従順で、大変つつましやか」といったのも敬である。『論語』述而第七篇において孔子の態度を「のびのびとされ、にこやかな顔をされていた」というのも敬である。敬とは手かせ足かせのようなもの、あるいは縄で縛られたようなものと見る者は、ニセモノの敬であって、ホンモノの敬ではない

【一日一斎物語的解釈
ホンモノのつつしみとは、無理やり我慢したり、嫌々やるものではない。心を安らかにのびのびとした状態にして、自然に笑顔がこぼれるような心境で行なうのが、ホンモノのつつしみである。こうしたホンモノのつつしみを持って接すれば、人の心を動かすことは容易なことである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、A県立がんセンター消化器内科の多田先生を訪ねているようです。

「おい、山中! 次はまともな物を提案してこいよ!!」

「は、はい! 承知しました!」

入れ替わりに、B社の営業マン・山中さんが部屋を出て行ったようです。

「山中さん、かなりビビってましたね!」

「あいつはいつも俺の前だとあんな感じだよ」

「でも、山中さんのような人を慎み深い人と言うのではないですか?」

「お前は相変わらず人を見る眼がないな。あいつの慎みなんぞは贋物だよ」

「慎みに本物とか贋物があるんですか?」

「ある! 山中のように、ビクビクしててペコペコするだけの奴は慎み深くなんかない。奴は俺のことが苦手なんだ。あれは贋物の慎み、言葉を変えれば卑屈なだけだ!」

「厳しいなぁ。私たちディーラーやメーカーの営業マンからしたら、やっぱり多田先生は怖いですよ」

「営業マンが営業マンとしての仕事を果たしていれば、俺は文句は言わない。お前らのレベルが低すぎるんだよ!!」

「たしかに、先生のご指摘は御尤もなので、私はいつもありがたく感じていますけど、だいたいの営業マンは怖がっていますよ」

「お前のような奴の方がよっぽど慎み深い営業マンだと言えるだろうな」

「じゃあ、私は本物ですか?」

「まぁ、本物とまではいかないな。癌になる前の腺腫のようなもんだな」

「多田先生、それ例えばおかしくないですか? まぁ、先生に褒めてもらえるなんて思っていないのでいいですけど。でも、本物の慎みというのを教えてください」

「常にゆったりとして、無理する所がなにもない心の状態、それが本物の敬、慎みだよ」

「長谷川先生のようなイメージですね」

「今の親爺だな。あの爺さんの昔を知らないから、そういうことが言えるんだ」

「そんなに怖かったんですか?」

「そりゃ、そうだ。この俺が、若い頃はあの人の前ではひと言もしゃべれなかったんだからな!」

「それは本物だ!!」


ひとりごと 

慎み深さと卑屈さは、紙一重ということでしょうか?

本当の慎みとは、心が開放されて、ゆったりとしている時にこそ発揮できるようです。

相手を畏れすぎたり、バカにした心の状態では、決して本物の慎みは生まれないということのようです。


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第2532日 「養」 と 「礼」 についての一考察

今日のことば

原文】
礼儀を以て心を養うは、即ち体躯を養うの良剤なり。心、養を得れば、則ち身自(おのずか)ら健なり。旨甘(しかん)を以て口腹を養うは、即ち心を養うの毒薬なり。心、養を失えば、則ち身も亦病む。〔『言志後録』第21章〕

【意訳】
礼儀を重んじて心を修養することは、結局は自らの体躯を養う良薬となるのだ。心を修養すれば、体は自然と健康体となる。おいしいものや甘いものばかりでお腹を満たすことは、心にとっては毒薬と同じである。心の修養を怠れば、体は病に侵されてしまうだろう

【一日一斎物語的解釈
仕事は身体が資本である。自分の身体を養うためには、心の修養に努めなければならない。心に栄養が不足すれば、身体にも不調をきたすことになるのだ。心の修養は、まず礼儀を正すことから始めるべきだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の新美課長とランチに出掛けたようです。

「新美、お前なんか疲れてない?」

「やっぱりそう見えます? 最近、ウチの赤ん坊の夜泣きが酷くて」

「そういうことか。懐かしいな。俺もむかし、あんまりガキが泣くからイライラして、めちゃくちゃ揺さぶってたら、カミさんにブチ切れられたことがあったな」

「後輩だけかと思ったら、お子さんにも乱暴なんですね」

「やかましいわ! お前はひと言余計なんだよ!!」

「昔から、『健全なる精神は健全なる身体に宿る』と言うじゃないですか。でも、肉体よりも心が先のような気がするんですよね」

「特に今の時代のように、生きていると精神をすり減らしてしまうような世の中だと、特にそう思うよな」

「はい」

「心が元気なら身体も動くよな。落ち込むと食欲も無くなるしさ」

「え、神坂さんでもですか?」

「いや、俺はどんなに悩んでいても、飯と酒は入る!」

「でしょうね!」

「大人物っていうのは、そういうもんだ!!」

「はいはい。ところで、その酒ってやつは、飲み方次第で良薬にも毒薬にもなりますよね」

「たしかに。特にやけ酒なんかした日には、マイナス思考になったり、他人を怨んだりでロクなことはないな」

「その結果、心が病むと身体も病んでしまうんでしょうね」

「そうだな。つまりは、心を養って、つねに心が健全であれば、肉体が病むこともないわけか!」

「そういうことなんでしょうね」

「さて問題です。新美君、心を養う上で一番重要なことはなんだと思う?」

「なんだろうなぁ、読書ですか?」

「読書は勿論だけど、意外と見落としがちなのが、礼儀だよ。礼を尽くすと言ってもいいかな」

「なるほど、気持ちよい挨拶とか、深々とするお辞儀というのは、心を正してくれる気がしますね!」

「うん、それで俺も最近はちゃんと『おはようございます!』と挨拶するようにしているんだ」

「以前は、『うぃーっす』みたいな感じでしたよね?」

「そう。そういうのは心を汚し、身体を蝕む元凶だと気づいたんだ」

「なるほど」

「ごちそうさまでした! では、新美君、帰りましょうか?」

「すみません。ちょっと気持ち悪いです」


ひとりごと 

一斎先生は、現代社会を予測していたのでしょうか?

心、養を失えば、則ち身も亦病む、と喝破されています。

さらに心を養うために必要なのは礼だと断じています。

礼が心を正し、その結果身体も健やかになる。

たしかにそうなのかも知れませんね。


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第2531日 「宇宙」 と 「心」 についての一考察

今日のことば

原文】
宇は是れ対待の易にして、宙は是れ流行の易なり。宇宙は我が心に外ならず。〔『言志後録』第20章〕

【意訳】
宇とは処(ところ)によって変化して各々その宜しきを得ることをさし、宙とは時によって変化して各々その宜しきを得ることを指す。結局宇宙はわが心の中にあるのだ

【一日一斎物語的解釈
宇とは無限の空間を指し、宙とは無限の時間を指す。空間における出来事も、時間の流れの中で起きる出来事も、すべてはそれを捉える自己があってこそ認識されるのであるから、宇宙はそのまま自分の心の内にあるといえる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業部の佐藤部長と同行しているようです。

「宇宙って、いまも大きくなり続けているらしいですね?」

「うん、宇宙は科学者の予測をはるかに上回るスピードで膨張していて、その理由すら説明できないらしいよ」

「私にはどういうことかさっぱりわかりません」

「私も科学の分野は詳しくないよ」

「だいたい、宇宙は膨張していると言いますけど、宇宙には外側はないんですよね?」

「ははは、そうだね。宇宙という無限の空間そのものが膨張しているからね」

「そこが理解できないんですよね。風船が膨らむときには、膨らむだけの空間があるから膨らむので、もし空間がなければ風船はその空間以上には膨らむことはできないはずですよね。うーん、わからない!」

「われわれにはいくら考えても分からない世界かもね!」

「これを考え出すと、モヤモヤして、なんとも言えない気分になります!」

「ははは。そうだ、でもその宇宙について、一斎先生はこう言っているね」

「教えてください」

「宇宙は我が心に外ならず」

「え、どういうことですか?」

宇とは無限の空間を指し、宙とは無限の時間を指す。しかし、それほど無限で広大な宇宙にも負けないのが人間の心だ、という意味だと理解しているんだけどね」

「たしかに、人間の心というのも不思議です。こうやって、いろいろな感情が湧き出て来るのに、死んでしまえば跡形もなく消えてしまいます」

「脳や心臓という臓器は残っても、気持ちや思考はすべてなくなってしまうものね。不思議だよね」

「あー、それを考えると、益々モヤモヤします!!」

「あんまりモヤモヤして、ハンドル操作を誤られても困るから、この話題はこれくらいにしようか?」

「そうしてください。運転に集中できません!」

「それは大変だ。しっかり運転に集中してよね!」


ひとりごと 

この章句の一斎先生の意図するところは、小生には不承知です。

しかし、宇宙の謎と同じくらい、人間の心も謎が多いのではないでしょうか?

朱子は宇宙の理は、人間に性となって宿されているとしています。

この性即理の概念もまた難解です。

学び続けていきます!


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第2530日 「感情」 と 「理性」 についての一考察

今日のことば

原文】
心を霊と為す。其の条理の情識に動く、之を欲と謂う。欲に公私有り。情識の条理に通ずるを公と為し、条理の情識に滞るを私と為す。自ら其の通滞を弁ずる者は、即便(すなわ)ち心の霊なり。〔『言志後録』第19章〕

【意訳】
心は霊妙である。その心の中にある理性が感情によって影響を受けると欲が生まれる。欲には公欲と私欲がある。感情が理性によって適切に抑制されているときは公欲となり、感情が理性で制御できていない状態が私欲となる。この二つをいかに区別できるかは心の霊妙な働きによるものである

【一日一斎物語的解釈
欲望がすべて悪いわけではない。人は無欲にはなれない。私欲を抑え、公欲を発揮すればよい。そのためには感情を理性で制御できるように心を鍛錬するしかない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長とランチ中のようです。

「神坂さんは性善説派ですか? 性悪説派ですか?」

「それについては、前に佐藤部長とも話したことがあるんだけど、そう簡単にどちらかに割り振れるものでもないと思うんだよ」

「まぁ、それはそうでしょうけど、そこを敢て選ぶとすれば?」

「それなら、やはり性善説だろうな。俺は他人を疑って生きるというのは好きじゃないからさ」

「やっぱりそうですか」

「ところでなんでそんなことを聞くんだ?」

「最近のいろいろな事件をみていると、犯罪を犯す人が必ずしも悪人だとは思えないんですよ」

「そうだよな。世の中に本当の悪人なんて、そうは居ないんじゃないかな」

「そうですよね」

「例えば罪を犯して、『悪いことをした』と思う人は、本来は悪人ではないんだと思う。もちろん罪を犯した以上、犯罪者ではあるけどな」

「なんで悪いことだとわかっていながら、やってしまうんですかね?」

「どんな人にも大なり小なり欲があると思うんだよな。ただ欲には2つあって、自分を優先する私欲と世の中の為を考える公欲に分かれるんだ」

「なるほど」

「私欲が強い人は、公欲を抑え込んでしまって、もっと金が欲しいとか、もっと偉くなりたいとか自分のことばかりを考えてしまう」

「そうなることが幸せだと勘違いしているんでしょうね。本当は世の為、人の為に動いた時の方が幸せを感じることができるのに」

「本当だよね。欲という感情が理性に勝ってしまったとき、人は悪いことだと知りつつ罪を犯してしまうんだろうな」

「ウチの連中にはそうなって欲しくないですね」

「そのためには、俺たちが手本になるしかない。学びを活かして、公欲で私欲を克服するんだ」

「そうですね。私たちが私欲を優先しているのをみたら、失望するでしょうし、彼らも同じことを考えてしまうかもしれません」

「さっきお前が言ったように、公欲を充たしたときの喜び、達成感こそが幸せの原点だということに気づいてもらうしかないよな」

「ところで、人の上に立つ神坂さんが、ギャンブルをやっていて良いんですかね?」

「それな! だけど俺のギャンブルは金が欲しいからやっているわけじゃないんだけどさ」

「信じてもらえると思います?」

「思わない…」


ひとりごと 

すでに何度も書かせてもらっていますが、小生のような凡人は無欲にはなれません。

いや、そもそも無欲ではいけないのでしょう。

世の為人の為に自分を活かしたいと考える公欲をもつべきなのです。

そして、その公欲が充たされたとき、人は本当の幸せを噛み締めることができるのではないでしょうか?


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第2529日 「立志」 と 「不孤」 についての一考察

今日のことば

原文】
閑想客感は、志の立たざるに由る。一志立てば、百邪退聴せん。之を清泉湧出すれば、旁水(ぼうすい)の渾入するを得ざるに譬う。〔『言志後録』第18章〕

【意訳】
つまらないことを考えたり、くだらない感情を抱くのは、その人に志が立っていないからである。志が立てば、そうしたばかげた妄想邪念は起こってもすぐに消えうせるものである。それは例えば、清らかな泉が滾々と湧き出ていれば、傍流の水が入り込む余地がないという情景のようなものだ

【一日一斎物語的解釈
ひとつの仕事を成就させるには、しっかりとした志を立てることだ。志が立てば、一心不乱に仕事に打ち込み、つまらない邪念に囚われることはない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTubeで「孔田丘一の儒学講座」を視ているようです。

「今日は寒かったですな。この歳になると寒さが一番堪えるんじゃよ」

「しかし、寒さに負けずに、今日も動画を配信するので、ぜひ楽しんでくださいな」

「突然だが、皆さんは既に志を立てておられるかな?」

「今の仕事で身を立てようと思うなら、志を立てることですぞ!」

「志とは迷った時に立ち戻る場所じゃ。どっちに進んでいいやらわからなくなった時は、志に尋ねるんじゃよ」

「そもそもしっかりと志が立って居れば、迷ったり、くだらん考えを起こすこともなくなるじゃろう」

「もちろん、短期的な利益に目がくらむこともなかろう!」

「いったいあなたは、今の仕事で世の中にどんな貢献をしたいのか? それを明確にすることが、志を立てるということじゃ」

「自分のためでも、家族のためでもないですぞ。世のため、人のために尽くさねばならん」

「それで高い地位を得られるか、あるいは高給取りになれるか、それはわからん」

「しかし、立派な志の下には人が集まるものじゃ。あなたの志が正しければ、必ず仲間ができる。それがあなたの人生を豊かにするんじゃ」

「まさに、『徳は孤ならず』なんじゃよ」

「だから、十年やっても仲間ができないようなら、その志が正しくなかったということになるんじゃよ」

「孔子は十五にして学問に志を立てた。そしてその志を七十年間も保ち続けた。だからこそ、今に名を残す存在となったのじゃ」

「何歳であろうと構わん! とにかく志を立てなされ!」

「おそらく志を立てて何かを始めると、最初に必ず逆風が吹く。その志をへし折ろうという強い逆風がな」

「しかしそれが実は天の与えた試練なのです。志を鍛え上げるために天が与えてくれた修業の場なのです」

「だから、逆風に負けず、邪魔されてもひるまず、初志貫徹、志を堅持しなされ!」

「ワシも儒の道に志し、もうかれこれ四十年が過ぎようとしておる。そして今、ワシの周りにはたくさんの朋友がいる。皆さんも我が友です」

「儒学を学び続け、人に語り続けてきたこの道のりは、決して間違ってなかったんじゃと胸をなでおろしておるところです」

「ちょうど年も変わり、心機一転のときじゃ! まずは志を立てるところから始めてみてはいかがかな?」

「では、そろそろ今日はおしまいとしますかな。道が凍り始める前に、灯油を買いに行かねばならんのでな」

「では皆さん、また来週お会いしましょう!!」

「唐突に動画を終らせるのは、2022年も変わってねぇな(笑)」

「よし、俺ももう一度、志を練り直してみよう!」


ひとりごと 

志を立てることこそ、仕事を成就する上で最も大切なことなのだと一斎先生は言います。

自分のために働く人より、世の中のために働く人の方が輝いているものです。

その輝きに惚れて、人が集まってくるのです。

人は志の下に集まるのです。

新選組が「誠」の旗の下に終結したように!


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第2528日 「不敬」 と 「過失」 についての一考察

今日のことば

原文】
過は不敬より生ず。能く敬すれば則ち禍自ら寡し。儻(も)し或いは過たば則ち宜しく速やかに之を改むべし。速やかに之を改むるも亦敬なり。顔子の過を弐(ふたた)びせず、子路の過を聞くを喜ぶが如きは、敬に非ざる莫きなり。〔『言志後録』第17章〕

【意訳】
人の過ちは慎まないことから生じる。慎むことを忘れなければ禍は自然と少なくなるものだ。もし過ちを犯したならば、すぐにこれを改めるべきである。すぐに改めることもまた慎みなのだ。顔回が同じ過ちを犯すことはなかったということや、子路が自分の過ちを指摘されることを悦んだという話などは、慎みをもつことの最たるものだ

【一日一斎物語的解釈
物事がうまくいかないなと思うときは、大概慎みの気持ちを忘れているときである。あらためて感謝の気持ちを思い出し、慎みをもってすべてに当れば、難局も必ず打開できる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、自宅で奥様と雑談中のようです。

「聞いてよ、イサム。私の嫌いな同僚がまた嫌がらせをしてきたのよ!」

「相変わらずなのか、その人とは?」

「もう生理的に合わないんだと思う。関係改善は不可能ね」

「なにがあったの?」

「元はといえば、私のミスだったんだけど、それをみんなに言いふらすのよ!」

「そのミスについては、ちゃんと謝ったのか?」

「先にその人にミスを指摘されて、ちょっと腹が立っていたから、覚えてないな」

「それはダメだろう。過ちはまず認めないとさ」

「でも、鬼の首を取ったかのような言い方をするのよ。あの人だってこの前、発注を忘れてみんなに迷惑をかけたのにさ」

たしかその人の方が年上じゃなかった?」

「年齢は53歳だから、はるかに上よ。でも、社歴は私の方が長いもん」

「人間同士のトラブルの根底には、人を敬う気持ちがないことが原因であることが多いらしいよ。まずは年上のその人を敬う気持ちを持つことじゃない?」

「あんな人、尊敬できるわけないじゃん!!」

「どんな人にも欠点はあるよね。だから、良い所を意識して探してみるといいよ。俺はそうやって関係改善がうまく行ったことが何度もあるからさ」

「あの人に良いところなんてあるかなぁ??」

「ミスしたのに素直に謝れないというのは、相手への敬意が薄れている証拠だよ」

「それはそうね。別の先輩に指摘されていたら、素直に謝ったはずだしね」

「そうだよね。このまま最悪の関係を続けるのも精神的に良くないだろう?」

「うん。あの人と一緒の日は朝から憂鬱!」

「ここは年下の菜穂から歩み寄ってみたら?」

「社歴の浅いあの人から歩み寄ってきてくれたら、私は受け容れるんだけどなぁ」

「そうやって矢印が相手に向いているうちは、お互いに自分を変える気がないってことだからな」

「たしかに、お互いに相手が悪いと思っていたら折り合えないわよね」

「そうそう! ここは菜穂が大人になってみない?」

「よし、わかった! 今回の件に関して、指摘してくれたことにお礼を言うところから始めてみるわ!」

「間違いなく職場の雰囲気が変わるよ!」

「うん、ちょっと楽しみになってきたわ!」


ひとりごと 

『論語』の有名な章句に、「過ちて改めざる、これを過ちという」とあります。

誰しも過ちはあります。

だからこそ、その過ちを素直に認めて、改善を図ればよいのです。

それができないのは、相手への敬意や慎みの気持ちが薄れているからだ、と一斎先生は指摘します。

他人の良い所に目を向けて、周囲の人に対する敬意を持ち続け、過ちてすぐに改める環境づくりを進めましょう!


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第2527日 「悩み」 と 「煩い」 についての一考察

今日のことば

原文】
人或は謂う「外物累を為す」と。愚は則ち謂う「万物は皆我と同体にして、必ずしも累を為さず。蓋し我れ自ら累するなり」と。〔『言志後録』第16章〕

【意訳】
人はときに「富貴名利などの外物に煩わされる」という。私は言う「すべての物は皆自分と一体であって、必ずしも煩いをなすものではない。思うに、己が自ら思い悩むだけである」と

【一日一斎物語的解釈
自分の周囲で起きた出来事に煩わされていると思ってはいけない。実際には悩みや煩いの原因はすべて自分の心の内にあるのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の新美課長と「季節の料理ちさと」にやって来たようです。

「ここに来て、またオミクロンが増えてきましたね。第六波の到来なのかな?」

「何の話?」

「コロナの話に決まってるじゃないですか!」

「え、COVID-19ってまだ流行してたの?」

「いいよなぁ、神坂さんはノー天気で」

「お前さ、オミクロン株なんて風邪以下じゃないか。とりあえずマスクをつけて、しっかり手洗いとうがいをしていれば何の問題もないだろう」

「でも、病院を訪問する立場ですから、ウチから感染者を出したらマズいじゃないですか!」

「俺の知ってるドクターは、オミクロン株なんて、のど飴を舐めときゃ治るって言ってるぞ。病院によっては、熱があったらPCRをせずに帰しているところもあるらしい」

「私はそこまで楽観的にはなれないなぁ」

「誰が楽観的だよ。俺は科学的根拠に基づいてそう言ってるんだよ!」

「あー、いつになったら、コロナから解放されるのかなぁ」

「お前みたいな心配性の奴は、COVID-19が終われば、また次の悩みのネタを見つけて来るんだよ!」

「悩むのが趣味みたいに言わないでくださいよ!」

「実際、そうだろ! だいたい人間の悩みなんてものは、全部自分の心が作り出しているものなんだよ。自分の心で作り出したものなんだから、自分で消し去ることもできるはずだろ!」

「そんな簡単なものじゃないですよ」

「お前はCOVID-19の害悪ばかりを言うけど、COVID-19のお陰で改善されたことだってあるだろう。すべてはプラマイゼロなんだよ」

「はいはい、神坂君、そこまで! 新美君はあなたと違って、そんなに割り切れないのよね?」

「はい。神坂さんは超がつくノー天気ですから、ついて行けません」

「うるせぇババアが口を挟んできやがった」

「え、何か言った?」

「なんでもないよ。ママ、今日のおススメは何?」

「広島産の牡蠣が入ったわ。生でも食べれるわよ」

「生ガキか、いいね。新美も食べるだろ?」

「いや、牡蠣は以前中ったことがあるので…」

「ほらね、ママ。こいつはこうやって一生心配し続けるんだよ(笑)」


ひとりごと 

どんな物事にも、プラスの面とマイナスの面があるのではないでしょうか?

悩みごととは、何かをマイナス面でとらえた時に起る感情に過ぎません。

そうであるなら、なるべくプラス面を見て、ポジティブに物事を捉えたいものです。

どんなにあがいても、我々素人の力で新型コロナウィルス感染症を撲滅することは不可能でしょう。

密を避け、マスクをつけ、手洗いとうがいを励行しつつ、通常通りの生活をしませんか?


kaki
プロフィール

れみれみ