一日一斎物語 (ストーリーで味わう『言志四録』)

毎日一信 佐藤一斎先生の『言志四録』を一章ずつ取り上げて、一話完結の物語に仕立てています(第1066日目より)。 物語をお読みいただき、少しだけ立ち止まって考える時間をもっていただけたなら、それに勝る喜びはありません。

2022年03月

第2605日 「天理」 と 「強奪」 についての一考察

今日のことば

【原文】
天を以て得る者は固く、人を以て得る者は脆し。〔『言志後録』第94章〕

【意訳】
自然の道理に従って得たものは確実なものであり、これに対して、人為的に得たものは脆くて弱いものである。

【一日一斎物語的解釈】
自分の力に見合った地位や富を得るのでなければ、仮に一時的にそれを手に入れても永続きはしない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、相原会長に誘われてランチに出かけたようです。

「お昼から鰻でもいかが?」

「いいですね。期末で忙しくて、ちょっと疲れていたので有難いです」

二人は、ひつまぶしを頼んだようです。

「やっぱりここの鰻は格別ですね。さすがは100年以上続く老舗だけのことはあります」

「ちょっとお高いけどね(笑)」

「そういえば、Y社の権力争いはまだ続いているらしいですね。まさに泥沼状態みたいです」

「そんな噂を聞くね」

「地位や名誉ってそんなに欲しいですかね? 私は生活できるだけのお金を稼げたら、地位や名誉よりもお客様の笑顔の方が価値があると思うんですけど」

「本当だよね。私も会長というポストにしがみつく気は更々ないよ。いつでも神坂君に譲るよ」

「ははは。会長、譲る相手を完全に間違っています」

「これは失敬。でも私は思うんだよね。何事も無理をして手に入れたものというのは、結局すぐに手元からスルりと抜け落ちてしまうんじゃないかとね」

「無理をすれば、必ずどこかにしわ寄せが来ますもんね」

「うん。天の時、地の利を得たものは強固だろうけど、無理をして得たものは脆く儚いものだよね、きっと」

「はい。地位なんてものは、自分からつかみ取るのではなくて、自然と押し出されてなるものだと思います」

「そうだね。まずは目の前のお客様を喜ばせることだけを考える。それを誰よりも真摯にやり切った人が自然と押し出されて人の上に立つ。これが理想だよね」

「まさに相原会長のように!」

「あれ、そんなことを言われたら、私の自慢話みたいになっちゃうじゃない(笑)」

「違うんですか?」

「勘弁してよ、神坂君!!」


ひとりごと

天の道に適ったやり方で手に入れた地位や名誉は強固ですが、力ずくで奪い取ったものは脆いものだ、と一斎先生は言います。

孔子も、「不義にして富み且つ貴きは我において浮雲のごとし」と言い切っています。

無理をすれば、必ず反動が来ます。

天を味方につけて、一歩一歩確実に我が眼の前の道を進むのみです。


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第2604日 「飲食」 と 「孝行」 についての一考察

今日のことば

【原文】
能く寝食を慎むは孝なり。〔『言志後録』第93章〕

【意訳】
よく睡眠をとり、食事を節制することは、孝行になるのだ

【一日一斎物語的解釈】
睡眠と食事に気を遣うことは、それだけで会社に貢献することになる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、A医科大学病院の駐車場で、同業M社の木澤さんと話をしているようです。

「ウチの息子が二人とも家を出てしまってねぇ。淋しくなったよ」

「え? お二人ともまだ学生じゃなかったですか?」

「そう。でもね、長男は大学4年なんだけど、オンライン授業を受けながら仕事をすると言って関東で一人暮らしを始めたんだ」

「すごいなぁ。俺が学生のときは、少しでも学生生活を楽しもうと、それしか考えてなかったからなぁ(笑)」

「誰に似たのか、私も驚いたよ」

「次男君は?」

「あいつは今年から大学生になったんだ。ただ、関西の大学に通うことになってね。関西でアパート暮らしを始めたんだよ」

「あぁ、そういうことですか」

「昨日、カミさんと一緒に次男を新居まで連れて行ったんだ」

「突然二人とも居なくなると淋しくなりますね?」

「男二人だし、最近はそれほど会話もなかったから、私はそうでもないけどね。カミさんは、相当淋しがっているよ」

「ちゃんとご飯たべてるかな? ちゃんとお風呂に入ってるかな? ちゃんと寝ているかな? って感じですね?」

「そのとおり。LINEを送っても、ノーレスが多いと怒ってたよ(笑)」

「男の子なんてそんなもんですけどね」

「私も親としてこういう立場になるまで気づかなかったけど、実は食事や睡眠をしっかりとることは、親孝行になるんだね」

「たしかにそうかも知れませんね。ご飯を食べているか、ちゃんと寝ているか。親からしたら、それが一番気がかりですもんね?」

「私が親元を離れて一人暮らしを始めたときは、ワクワクした気持ちしかなかったからねぇ。きっと親は今の我々と同じような心境だったんだろうなぁ」

「ウチも息子二人です。そのうち同じような寂しさを感じるんでしょうね」

「間違いないよ! 今のうちにたくさん想い出を作っておいた方がいいよ」

「そうします。COVID19も収まってきたし、家族旅行にでも行くかな!」


ひとりごと

実はこの木澤さんは、我が家がモデルです。

ちょうど今日、妻と共に息子を関西の新居に送り届けてきました。

長男は一カ月前に関東で一人暮らしを始めています。

男二人でしたので、それほど会話があったわけではないですが、居なくなると淋しいものです。

特に、食事と睡眠をしっかりとって欲しいと願わずにはおれません。

一斎先生の言葉が身に沁みます。


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第2603日 「寝具」 と 「成果」 についての一考察

今日のことば

【原文】
人は嬰孩(えいがい)より老耋(ろうてつ)に至るまで、恒に徳を隠闇の中に受けて、而も自ら知らず。是れ何物ぞや。被褥(ひじょく)・枕席是れなり。一先輩有り。甚だ被褥を敬し、必ず手に之を展収して、之を臧獲(ぞうかく)に委せざりき。其の心を用うること亦云(ここ)に厚し。〔『言志後録』第92章〕

【意訳】
人は乳飲み子のときから老人になるまで、常に暗闇の中で恩恵を受けているが、それに気づいていない。それは何かといえば、敷布団と掛け布団や枕といった寝具である。ある先輩は、非常に寝具を大切にし、必ず自らの手で上げ下げを行ない、決して下女らに任せなかった。その心配りは非常に手厚いものであった

【一日一斎物語的解釈】
睡眠の大切さに気づいていない人は多い。寝具にこだわり、大切に扱うことで、良い睡眠をとることができれば、ビジネスにおいても利点は多い。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、読書会仲間のフミさんこと松本さんと食事中のようです。

「ゴッド、ごめんね。突然呼び出して」

「フミさんのお誘いなら断る理由はないですからね!」

「まん防が明けて、真っ先に飲みたかったのがゴッドだったんだ」

「それは光栄です」

「あれ、ゴッド。目が真っ赤だね、花粉症?」

「若干それもあるんですけど、それよりは寝不足が原因ですかね」

「相変わらず、夜中に読書をしているの?」

「はい。夜しか本を読む時間がありませんからね」

「そうか、若いって良いね。ところで、寝具には気を使ってるのかな?」

「いえ、全然。ナトリの安い布団です」

「それはもったいない! 睡眠時間も大事だけど、眠りの質の方がより大事だからね」

「どういうことですか?」

質の良い寝具で寝ることで、より深く眠ることができる。睡眠時間が短いゴッドは、せめて寝具は質の良いものを選んだ方がいいよ」

「そうなんですか?」

「私は寝具には結構こだわっていてね。私の身体に合う寝具を選んでもらっているんだ」

「違うものですか?」

「全然違うよ。私の体形に合わせて、専門家が選んでくれたものを使っている。寝起きが爽快だよ」

「へぇー、でも高いんですよね?」

「そこはケチるところじゃないよ。人間は一生のうち三分の一は寝ている時間なんだからね」

「私の場合は、四分の一か五分の一ですけどね(笑)」

「オー、ノー! それならば余計に良いものを使わないと!」

「今度、フミさんが買ったお店に行ってみようかな?」

「お付き合いするよ」

「ありがとうございます!!」


ひとりごと

皆さんは寝具にこだわっていますか?

実は、私は依然として、まったくこだわっておりません。

年齢と共に無理がきかなくなってきました。

そろそろ本気で寝具選びが必要なのかも知れませんねぇ?


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第2602日 「鍼灸」 と 「諫言」 についての一考察

今日のことば

【原文】
(しん)は鍼(しん)なり、心の鍼なり。非幾纔(わず)かに動けば、即便(すなわ)ち之を箴すれば可なり。増長するに至りては、則ち効を得ること或いは少なし。余刺鍼(ししん)を好む。気体稍(やや)清快ならざるに値(あ)えば、輒(すなわ)ち早く心下を刺すこと十数鍼なれば、則ち病未だ成らずして潰す。因って此の理を悟る。〔『言志後録』第91章〕

【意訳】
戒め(箴言)は心に対する鍼のようなものである。心に不善の兆しがわずかに芽生えたならば、すぐに鍼を据えれば良い。不善の念が増長してしまえば、その効力は限定的となろう。私は鍼治療を好む。気持ちや体にやや不快感を覚えたならば、すぐにみぞおち辺りに鍼を十数本刺すことで、病気になることを未然に防いでいる。そこからこの理を得たのだ

【一日一斎物語的解釈】
箴言というのは、心の病の予防薬のようなものである。常に整理して心にしまっておけば、ビジネスを円滑に進めることに役に立つ


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行中のようです。

「課長はなぜ佐藤部長の言うことだけはよく聞くんですか?」

「お前な、佐藤部長の言うことだけ聞くって、それじゃ他の人のいう事は聞かないみたいじゃないか!」

「違いますか?」

「昼飯に毒入れるぞ!」

「誰だって、叱られたり、注意されるのって嫌ですよね。でも、神坂課長は佐藤部長の話はすごく真剣に聞いている気がします」

「佐藤部長だけじゃないことは、もう1回言っておく。その上で今の言葉に対する返事をするなら、やはりあの人の話には説得力があるからだろうな」

「厳しいことを言われてもですか?」

「最初はムカつくことが多かったよ。でもさ、冷静になって考えると、佐藤部長の言うとおりだなって思えるんだよ」

「何が違うんですかね?」

「言い方がソフトであることや、話す事例がわかりやすいというのはあるだろうな」

「例え話がズレてると理解しづらいですよね」

「そうなんだよ。厳しい戒めの言葉というのは、針治療みたいなものなんだ。針を刺された時は痛いんだけど、後で患部がすっきりと治ってしまう。あの感覚に似ているんだよな」

「針治療はやったことないですけど、整体ならあります」

「まぁ、似たようなものだろう。いや、場合によっては整体の方が近いかもな。図星で自分の問題点を指摘されたときは、針に刺された程度の痛みじゃないもんな。まさに整体師に体をグリグリされている感覚かもな」

「めっちゃ痛いですよね」

「そう、痛いから効くんだよ」

「叱られるのもそれと同じなんですね?」

「そういうことに気づいたんだよ。お前は俺に叱られるとムカつくか?」

「一番頭に来ます!」

「そこが俺の課題だな。言い方が良くないんだろうな?」

「絶対そうです!」

「ちっ、俺は今のお前のその言葉が、まるで整体師のグリグリみたいに俺の心を痛めつけている」

「でも、私も後で考えると、たしかにそうだなって思う事が多いです」

「あ、本当か?」

「はい。課長の例え話はすごく分かりやすいので、後で思い出すと、肚に落ちます」

「そうか、それは何よりの誉め言葉だな」

「あとは言い方をソフトにするんですね!」

「何でお前に上から言われなきゃいけないんだよ! 飯に毒入れるぞ!」

「そういう大人気ないところが、もうひとつの課題かなぁ」

「調子に乗るな!!」


ひとりごと

箴は鍼なり、心の鍼なり。

小生の好きな言葉のひとつです。

良薬口に苦し、と相通ずる言葉ですね。

誰しも叱責されたり、指導されることは、心地よいものではないでしょう。

しかし、その人が自分のためを思って、あえて嫌われることを覚悟してでも言ってくれるなら、それほど有難いことはありませんね。


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第2601日 「静中動」 と 「動中静」 についての一考察

今日のことば

【原文】
静を釈して不動と為すは訓詁なり。静何ぞ曾(かつ)て動かざらん。動を釈して不静と為すは訓詁なり。動何ぞ曾て静ならざらん。〔『言志録』第90章〕

【意訳】
静を動かないもの(不動)とするのは字句にとらわれた解釈である。どうして静が動かないということであろうか? 動を静かでないものとするのも字句にとらわれた解釈である。どうして動が静かでないと言えようか

【一日一斎物語的解釈】
静の中に動があり、動の中に静がある。何ごとも言葉の定義に固執してはいけない。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、YouTube動画で『孔田丘一の儒学講座』を視聴しているようです。

「ようやく暖かくなって来ましたな。もうすぐ桜の季節です。今年こそお花見で盛り上がりたいですなぁ」

「これ以上、家に引きこもっていたら免疫力が低下するだけですぞ!」

「無菌の温室育ちを続ければ、益々免疫力が低下していくだけ。こんなことを続けたら、街を歩いたらすぐにウィルスに感染して死んでしまう人間になってしまいますぞ」

「せっかく春になったんじゃ。生命の息吹を感じなされ」

「季節で言えば冬は静、夏は動といえるでしょうな」

「そして春はといえば、静の中に動を感じるときです」

「完全な静もなければ、動もない。常に静の中に動があり、動の中に静がある」

「春はその静の中にある動を感じる季節なのです」

「しかし、家の中に居ては何も感じられない。一生静のままじゃ」

「そんなことでは、すでにもう死んでいるのも同然。それこそ生ける屍ですな」

「外に出て、生命の息吹を感じなされ」

「菜の花やチューリップ、桜の美しさを自分の目で確かめるんですな」

「その花に集う虫たちに目を向けるのもいい」

「一見、静だと見える世界は、しっかりと動いているんです」

「それを感じ取れば、諸君の免疫力も高まるはずじゃでな」

「ついでに言えば、秋は動の中に静を感じる季節ですな」

「夏の終わりの何とも言えない寂しさは、まさに動の中の静を感じているからなんです」

「外に出れば、季節を感じることができる」

「せっかくこの日本には四季がある。季節の変わり目を感じ、四季折々の風物詩を感じ、そして四季折々の酒を飲む」

「酒はやっぱり日本酒でしょうな。あー、酒が飲みたくなってきた」

「そろそろ終わって、一杯やることにしますぞ。実際には一杯どころか五杯か六杯でしょうがな(笑)」

「では、またお会いしましょう。ワシが外に出て、コロナに罹って死なない限りは、という限定付きですがな(笑)」

動画が終わったようです。

「なんだよ、結局あの爺さんも飲兵衛なんだな。いや、確かに酒が飲みたくなってきた」

「今年は会社の仲間と一緒に夜桜を観ながら一杯やりたいなぁ」

「まぁ、俺も爺さんと同じく、五杯か六杯、いやそれ以上だけどね!」


ひとりごと

動中静あり、静中動あり。

完全なる静や動はないのだ、と一斎先生は言います。

日本には四季があります。

今こそ正に静から動へと転じる季節です。

ちょうど、まん防も解除になりました。

うがい、手洗い、マスク着用は続けつつ、外に出て生命の息吹を感じましょう。


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第2600日 「車」 と 「ハンドル」 についての一考察

今日のことば

原文】
謙は徳の柄(へい)なり。敬は徳の與(よ)なり。以て師を行(や)り邑(ゆう)国を征す可し。〔『言志後録』第89章〕

【意訳】
慎ましさという乗り物に乗り、謙譲というハンドルを握って軍隊(師)を進めれば、村や国を治めることは容易である

【一日一斎物語的解釈】
組織をマネジメントする上で大切にすべきは、相手を敬い自らを慎むことをベースにしながら、譲る精神を発揮することである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の清水さんに呼び出されたようです。

「神坂さん、忙しいのにすみません」

「うーん、いまだに慣れないんだよな、お前の『神坂さん』にはさ」

「それは言わない約束じゃないか!」

「すまん、すまん。俺はお前に『おっさん』って呼ばれている方が気楽でいいけどなぁ」

「それじゃ、示しがつかないでしょ。後輩たちの前で、まず俺があんたを敬う姿勢を見せないとさ」

「まぁ、そうだけど。無理やり敬うフリをしても、そんなのは見ぬかれるぜ」

「うん、そこなんだよね。後輩との距離もイマイチ詰め切れなくて、モヤモヤするんだよね」

「マネジメントって、本当に奥が深いんだよ。やればやるほど、そう感じるようになってきたもんな」

「やっぱりそうか。地道にやるしかないのか」

「それが一番の近道ではある。でもな、やっぱり敬の気持ちは大事だよ。『敬』というのは、『うやまう』という意味と、『つつしむ』という意味を含んでいるんだ」

「『つつしむ』?」

「万事、控えめにしろってことだな」

「俺が苦手なことばっかりだなぁ」

「慎ましさという車に乗って、謙譲というハンドルを握れば、どこにでも行ける。つまり、マネジメントはうまく行くんだそうだ」

「次は『謙譲』かよ。俺は生まれながらにして、マネジメントには向いてないのか?」

「ははは。俺も最初はお前と同じことを思ったよ」

「どうやって、『慎むとか謙譲とかを身につけていったんだ?」

「身についたどうかを判断するのは、俺じゃなくて、メンバーだからな。今でもそう思ってもらえているかは疑問だ」

「でも、たしかにあんたは変わったぜ」

「そうだとすれば、無理に尊敬しようとか、へりくだろうと思うのはやめて、とにかく相手にあって自分にないものを探すことを意識したんだよ」

「それをやると、なぜ人を敬ったり、自分を慎むことができるんだ?」

「自分にないものを持っている人には、自然と『凄いな』とか『羨ましいな』とか思えるじゃないか。それが尊敬や謙譲の気持ちを生み出してくれるんだと思う」

「なるほどな。考えてみれば、俺が神坂さんに親しみを感じるのは、俺と似た性格なのに、自分を変えようと努力しているところが凄いなと思えたからかも知れないな」

「うれしいこと言ってくれるじゃないか」

「これは本音だよ。そうか、俺も今から後輩たちにあって俺にない点を探してみるよ」

「お前も変わろうとしている。必ず変われるよ!」

「神坂さん、ありがとう」

「うーん、やっぱりケツの穴がむず痒いんだよなぁ…」


ひとりごと

自分のたどり着きたい場所に行くために必要なのは、徳を身につけることである。

敬は徳の車であり、謙はそのハンドルなのだと一斎先生は言っています。

あなたが乗っている車は、敬という名の車ですか? 謙というハンドルはありますか?

もし答えがNOであるなら、目的地には到達できないかも知れません。


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第2599日 「敬」 と 「勇」 についての一考察

今日のことば

原文】
敬は勇気を生ず。〔『言志後録』第88章〕

【意訳】
人を敬い慎み深くすることが、自らの勇気を生むのだ

【一日一斎物語的解釈】
真の勇気というものは、相手を敬い、自分を譲る気持ちから生じるものである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業部の佐藤部長と同行中のようです。

「人を敬うことって簡単じゃないですよね」

「なぜ、そう思うの?」

「誰かに対して、自分は適わないと思ったときに、敬意って生まれる気がするんです。つまり、自分の負けを認めないといけないわけですよね」

「なるほどね。河合隼雄先生の名著『心の処方箋』の中に、『本当に強い人だけが感謝できる』と書いている。それに近い感覚だね」

「あー、そういう考え方をすればいいのか。人を尊敬できる人は真に強い人だ、と」

「素敵な発想だと思うし、実際にそうかも知れないよね」

「はい。私のように弱い人間は、人を敬ったり、感謝することに躊躇してしまいますから」

「一斎先生は逆の視点で、『敬は勇気を生ず』と言っている」

「敬が先か、勇気が先か。どっちなんでしょうね?」

「どちらが先ということはないんじゃないかな。敬が勇気を生み、勇気が敬を生む。どちらも正しいのではないかな?」

「あぁ、そういえばサイさんが、こんなことを言っていました。『愛なき敬はなく、敬なき愛もない』って」

「さすがは西郷さんだね。その言い方に合わせるなら、『敬なき勇はなく、勇なき敬もない』となるかな」

「そうかぁ、私はやっぱり弱い人間なんですねぇ」

「そういう反省を常に怠らないことだよ。自分が優れていると思うと、人は慢心するからね」

「おっしゃるとおりです。すぐに天狗になれるのが私の特徴ですから(笑)」

「慎み敬う心は大切だよね。それを失ったとき、人は人でなくなるんだろうな」

「人と動物を分けるのは、慎み敬う心なんですね」

「そのためには、自分より勝れた人をみつけ、自分を顧みて反省し続けるしかないんだ。常に自分が未完成であることを思い知ることだね」

「はい、完成された人間になれるかどうかは別として、それを目指し続けます!!」


ひとりごと

人を敬うことや人を立てることは、弱い人間にはできないのだ、と河合隼雄先生は言っています。

逆を解せば、人を敬い、人を立てることを繰り返すことが、自らを強くすることができるのかも知れません。

一斎先生のこの言葉は、それを言っているのでしょうか。

弱い人間が卑屈な態度を取ることと、敬う態度とは180度違うということなのです。


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第2598日 「真の自分」 と 「仮の自分」 についての一考察

今日のことば

原文】
仮己(けこ)を去って真己(しんこ)を成し、客我を逐(お)うて主我を存す。是を其の身にらわれずと謂う。〔『言志後録』第87章〕

【意訳】
仮の自己を消し去って、真の自己を成し、世俗の既成概念に囚われた私を追い出して、主体的な本来の私を身に存す。これをとらわれない自由な境地と言うのだ

【一日一斎物語的解釈】
世間にまみれた偽りの自分と戦い、常に真の自分を保ち続けることが成功への近道なのだ。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、大累課長に頼まれて、雑賀さんを説教しているようです。

「雑賀、お前今年でいくつになった?」

「つい先日、33歳になりました」

「もう十分に中堅社員といえる年齢だな。いつになったら、その遅刻癖は治るんだ?」

「別に遅刻しようと思っているわけではないんですけど…」

「そりゃそうだろ。遅刻しようと思って遅刻するなら、会社を辞めてもらうしかなくなるよ」

「クビですか?」

「本当にそうならな。若い奴らに示しがつかないだろ?」

「わざとではないです!!」

「なぁ、雑賀。そろそろ本当の自分と向き合ってみないか?」

「本当の自分?」

「お前は芯から腐った奴ではないと思っている。お母さんのことを大切に思っているし、兄弟のことも可愛がっているんだからな」

「家族ですから」

「会社の仲間だって家族みたいなものじゃないか」

「なかなかそうは思えないんですよねぇ」

「お前が交通事故を起こしたとき、俺たちはお前がクビになると思った。だけど、平社長は『本当の家族なら事故を起こした身内を勘当するか?』と言ったんだ。あの言葉は、今も忘れられないよ」

「・・・」

「なぜ、マイナスなことをして目立とうと思うんだよ。もっと素直に本当のお前を見せてくれればいいじゃないか」

「俺、悔しいんですよ。どれだけ頑張っても、才能がないからトップセールスになれない。情けなくて、悔しくて」

「だからって、不貞腐れて、わざとダメ社員を演じなくてもいいだろう。トップなんて取れなくてもいいじゃないか。トップを取ることより、トップを取ろうと努力することに意味があるんだからな」

「神坂さんには全部見抜かれている気がしちゃうなぁ。でも、急に変わったら、皆が違和感を感じるんじゃないですかね?」

「良い違和感なら大歓迎だよ。弱い自分をさらけ出すと楽だぞ」

「ありがとうございます。ちょっと肩の荷が軽くなった気がします」

「真の雑賀を見せてやれ。お前は良い奴なんだからな!」


ひとりごと

粋がったり、不貞腐れたり、わざと反抗的な態度をとる人がいます。

こういう人は本当は寂しがりやです。

そんな弱い自分を隠したくて、借り物の自分を演じているのです。

しかし、等身大で生きた方がはるかに楽です。

しかも、その方が周囲から好かれます。

飾らない自分=真の自分をさらけ出してみませんか?


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第2597日 「逆境」 と 「歓楽」 についての一考察

今日のことば

原文】
順境は春の如し。出遊して花を観る。逆境は冬の如し。堅く臥して雪を看る。春は固と楽しむ可し。冬も亦悪しからず。〔『言志後録』第86章〕

【意訳】
順境はまるで春のようである。外出して花を観るような気分である。逆境はまるで冬のようである。家の中で床に臥し窓から雪を観るような気分である。春はもちろん楽しむべきだが、冬もまた悪くないものだ

【一日一斎物語的解釈】
順境にあるときに無理に逆境におちる必要はないが、逆境にあるときはそれを受け入れ味わうことも、ビジネスにおいては貴重な経験となる。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業1課の新美課長と帰宅途中に寄り道をしているようです。

「ママ、今日からはまだまだイケるよね?」

「あら、神坂君。あ、新美君も。そうよ、今日からは思う存分飲んでもらえるわよ」

「それにしてもすごい人ですね」

「ちょうどいまお客様がお帰りになったの。グッドタイミングね!」

二人は「季節の料理ちさと」にやってきたようです。

「まん防も明け、いよいよ金曜日からはプロ野球も開幕だな!」

「ジャイアンツは大丈夫ですか? オープン戦はボロボロでしたよね?」

「馬鹿たれ、オープン戦の結果なんて全く関係ないよ。むしろたくさん負けてくれていいとさえ思ってる」

「確かに今年のジャイアンツは収穫も多そうですね」

「うん、投手王国の予感すらあるな。先発候補だけでも、去年投げてないピッチャーがゴロゴロ出て来たぞ」

「うらやましいなぁ」

「何言ってるんだよ。竜軍団だって、立浪新監督を迎えて盛り上がっているじゃないか」

「そこだけですよ。新戦力がイマイチで」

「でも、立浪さんは今年は優勝を目指さないと宣言したよな。ビッグボスもそうだけど」

「はい。あれは若手を使うぞというメッセージだとは思いますけどね」

「そうだよ。あえて逆境を受け入れようとしているんじゃないのか。勝つことよりも、選手の育成に力を注ぐ。勝つことが宿命づけられているスポーツの世界ではなかなかできないことだ」

「そうですね」

「それを支えるのが、ファンじゃないのかなぁ」

「もちろん支えますよ。この逆境を立浪監督と一緒に楽しみながら乗り越えます。そうすれば、来年のクリーンナップは3番根尾、4番石川となっているはずです!!」

「そうだよ。我がジャイアンツの主砲・岡本和真は、由伸監督が我慢強く使ったからこそ開花したんだからな。坂本は、原さんが使い続けて開花したしな」

「本当のファンというのは、順調な時よりも、厳しい環境の時にこそ、選手や監督と一体となって応援する。そうやって苦しんで勝ち取った勝利を一緒に喜ぶんですね?」

「そのとおり。どうせ、お前のチームは、数十年に一回しか優勝できないんだから、そう思わないとやってられないだろう?」

「なんだか、その言い方はムカつきますね!」

「あらあら、いいわね。男子はそうやって、毎年同じ話題で盛り上がれてさ」

「たしかにママの言うとおりだな。毎年この時期になると、新美と同じ話をしている気がする」

「本当ですね。でも、これが一番の酒の肴ですから!」

「あら、新美君! ウチのお料理は肴にはならないのかしら?」

「あっ!!」

「おっ、新美は本物の竜を怒らせたな(笑)」

「神坂!!」


ひとりごと

松下幸之助は、「順境よし、逆境もまたよし」と言ったそうです。

西郷南洲翁の詩には、「雪に耐えて梅花麗し」とあります。

逆境が人を強くし、人を育てるのです。

そうだとすれば、いっそのこと逆境そのものを楽しんでしまうのも一興かも知れませんよ!


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第2596日 「近さ」 と 「偉大さ」 についての一考察

今日のことば

原文】
(こん)を篤実輝光と為す。君子の象なり。物の実有る者は、遠くして益(ますます)輝き、近ければ則ち之に狎れて、美を覚えざるなり。月に面して月を看るは、月に背きて月を観るに如かず。花に近づきて花を看るは、花に遠ざかりて花を(み)るに如かず。〔『言志後録』第85章〕

【意訳】
易の卦にある艮という卦は、篤実にして光輝くという意味であり、君子のかたちである。中身が充実したものは、遠く離れるほど益々光り輝くものであるが、近付けばそれに狎れてしまい、その美しさを感じられなくなる。それはあたかも月に正対して月を眺めることは、月を背にして月を観るのには及ばないことや、花に近づいて花を看るのは、花から離れて花を(み)るのには及ばないことと同じである

【一日一斎物語的解釈】
本当に立派な人物というものは、近くにいるとその立派さに気づかないが、離れてみるとその偉大さに気づくものである。


今日のストーリー

今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行しているようです。

「相変わらず怖い先生でしたね、長原先生は」

「見た目がホンモノのヤッサンだからな」

「毎回、カツアゲされている気分になります」

「それ、今度長原先生の前で言ってみたら?」

「殺されますよ!」

「たしかにな。でも、あの長原先生はウチの佐藤部長にはまったく頭が上がらないんだよ」

「すごいですね、佐藤部長は」

「部長のことを師匠って呼んでるからな」

「佐藤部長は、長原先生に何を教えたんですか?」

「長原先生は佐藤部長から、人の在り方を教わったって言ってたな。医師としてどうあるべきかの前に、人間としてどう在るべきかを教わったらしいよ」

「それって医療器屋のレベルじゃないですね」

「本当だよな。そんな話、他に聞いたこと無いもんな」

「本当にすごい人って、かえって近くにい過ぎると、その凄さがわからなくなるのかも知れませんね」

「そうかもな。お客様から聞く佐藤部長の話は、どれも俺たちのレベルを超えてるもんな」

「近くにいるうちに、もっといろいろ教わりたいです」

「そうだな。部長もあと4年で定年を迎えるんだよな」

「はい。神坂課長はいつも佐藤部長からいろいろ教わっていてうらやましいです!」

「そりゃ、付き合いも長いからな。でも、いいじゃないか、お前にはもうひとり凄い人が身近にいるんだから」

「え?」

「皆まで言わすなよ。俺という素晴らしい上司がいるじゃないか。身近過ぎて、俺の凄さが見えてないのかも知れないけどさ」

「たしかに、そう言う人もいるんですよ。『神坂課長が上司で良かったな』とか」

「だろ?」

「でも、課長の場合、遠く離れても凄さが見えてこないんですよ。近くにいても、遠く離れても凄さがわからないということは、課長は凄くないってことじゃないですか?」

「あのな、こう見えても俺は傷つきやすいんだぞ!」


ひとりごと

本物の仁者は、一見しただけではその凄さがわからないものです。

なぜならそういう人は、自分を売り込むパフォーマンスを一切しないからです。

しかし、その人の行動よく見てみると、見返りなど一切求めずに、ただただ他人のために本気で力を尽くしていることに気づきます。

きっと皆さんの身近にも本物の仁者がいるはずです。

心の曇りを拭い去って、探してみてください。


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れみれみ