今日のことば
【原文】
人の賢不肖を論ずる、必ずしも細行を問わず。必ず須らく倫理大節の上に就きて、其の得失如何を観るべし。然らざれば則ち世に全人無けん。〔『言志後録』第215章〕
【意訳】
人が賢いか否かを論ずるときは、必ずしも細部の行動を問題にすべきではない。必ず総合的に倫理道徳の根本に照らして、その行動の得失を観察すべきである。世の中に完全な人はいないのであるから、そうするしかないのだ。
【一日一斎物語的解釈】
人を評価する際は、あまり小さな点には目をつむり、倫理的・道徳的な観点から判断することを基本とすべきだ。完璧な人間を求めていては、組織を強くすることはできない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、YouTube動画で『孔田丘一の儒学講座』を視聴しているようです。
「諸君、人を評価する際にどこを観ておられるかな?」
「評価と言うと粗探しをしたがる輩が多くてのう」
「あまり細かな行動にまで目を向けではいけませんぞ!」
「目的は、部下のやる気をそぐことではない。いかに伸ばすかが重要なわけですからな」
「そもそもあなたはパーフェクト・ヒューマンですか?」
「非の打ちどころがない人間など、この世にはおりませんぞ!」
「自分自身が完璧でもないのに、部下に完璧を求めるのはおかしなことですなぁ」
「では、どこを観たらよいか?」
「長い目で見た時、一番重要なのは倫理面や道徳面です」
「もちろん成果を評価するのは当然じゃが、デジタルな評価だけで人は測れませんぞ」
「時にはアナログこそが大事になる」
「嘘をつかないか?」
「他人のために自分を犠牲にできるか?」
「損得より善悪で物事をみることができるか?」
「他人の成果を共に喜べるか?」
「そういうところを見てあげて欲しいですな」
「いま挙げたような人材は、なかなかおりません」
「特にマネジメントをさせたいなら、こういう人を探して育てねばなりません!」
「自分より結果を出している人間を素直に褒めることができないような人を上に立てたら大変なことになりますぞ」
「組織はリーダーの器以上には大きくなりませんからな」
「重々承知の上で、評価されることを望みます」
「では、そろそろ時間ですな」
「これだけ暑いとワシもこの夏を越せるかどうかわかりませんな」
「これが最後の動画になるかも知れません」
「生きていたら、また会いましょう!!」
動画が終わりました。
「あの爺さん、ああいいながら何年生きてるんだよ(笑)」
「なんだか途中から、俺のことを言われているんじゃないかと思って胃が痛くなってきたよ」
「たしかに数字だけで評価をしないことが重要だけど、公平感を持たせるのは難しいよなぁ」
「人事の鈴木にも聞いてみよう」
ひとりごと
メンバーの何を評価するのか?
これは永遠の課題とも言えます。
西郷南洲翁は、こんな言葉を残しています。
「如何に国家に勲労あるも、其の職に任へざる人を、官職に以て賞するは甚だ誤れり。官は其人を選びて之を授け、功有れば之を賞し、之を愛すべし。是れ徳と官と相配し、功と賞と相対するの義なり」。
この言葉を意訳しますと、
「いかに国家に功績があったとしても、その役職に適当でない人を官職に登用することは大きな誤りである。官職については適任者を選んで与え、功績があった者にはこれを表彰して俸禄を与え、愛すべきである。これが官職には徳を配し、功績には禄で報いるということの意味である」となります。(小生訳)
官職つまりマネジメント職には徳のある者を配し、功績のある者には俸禄つまり給与やボーナスで報いよ、ということです。