今日のことば
【原文】
我が身は一なり。而も老少有り。老少の一身たるを知れば、則ち九族の我が身たるを知る。九族の我が身たるを知れば、則ち古往今来の一体たるを知る。万物一体とは是れ横説にして、古今一体とは是れ竪説(じゅせつ)なり。須らく善く形骸を忘れて之を自得すべし。〔『言志晩録』第21条〕
【意訳】
わが身はひとつである。しかも少年時代と老年時代がある。この老少時代が同じ一身だとするなら、高祖から玄孫までの九代の親族もまたわが身であることがわかる。九代がわが身であることを知れば、昔から今に至るまでの人が一体であることが理解できる。万物一体とは横の説つまり空間から説いたものであり、古今一体とは縦の説つまり時間から説いたものである。人は皆、有限の形体にとらわれず、これらのことを深く自得すべきである。
【一日一斎物語的解釈】
自分の身体には、先祖が脈々と受け継いできた血が流れている。それを縦のつながりとするなら、万物と同じ宇宙の摂理を抱いていることは、横のつながりと言えよう。つまり、わが身と古今の人物とは一体であり、また万物とも一体なのだ。決して、自分ひとりでは生きられないことを肝に銘じるべきである。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行しているようです。
「石崎、お前のご先祖様を20代遡ると、ご先祖さんの数は何人になるか知ってるか?」
「20代ですか? それって何年前になるんですか?」
「仮に1代を30年とすれば、600年前ってことかな」
「何時代ですか?」
「たぶん室町時代か戦国時代くらいじゃないか?」
「そんな昔の話ですか?」
「時代は関係ないだろ! 20代遡ったら先祖が何人になるかを聞いてるだけなんだから!」
「親が二人で、その親がそれぞれに二人いると考えて計算していくと、かなりの人数になりますよね。たぶん10万人くらいじゃないですか?」
「甘いな、小僧! 答えは、100万人だ」
「そんなに?!」
「さらにあと少し遡って27代前になると、なんと1億人を超えるんだぞ」
「そんなに増えるんですか? すごいですね。その途中の誰かひとりでも早く亡くなっていたら、私は生まれていないってことですね?」
「そうなんだよ。俺たちの身体は、先祖代々脈々と血を受け継いできてくれたからこそ、ここに存在するんだよ」
「戦争や災害を乗り越えてきてくれたから、今ここに生きていられるんですね」
「そう考えたら、俺とお前もどこかで血がつながっているかも知れないぞ」
「まさかとは思いますけど、絶対違うとも言えませんね」
「ご先祖様も俺たちも同じ血が流れている。同じように、この世のすべてのものには同じ道理が通っている。それを宇宙の摂理と言うらしい」
「すべてはひとつから生まれたってことですか?」
「おー、お前は時々鋭いことを言うな。きっと、そういうことなんだろうな」
「なんだか、ご先祖様を疎かにしていることで気が引けてきました。来年のお盆はお墓参りに行くことにします!!」
ひとりごと