今日のことば
【原文】
凡そ物は、奇巧賞す可き者有り。雅素(がそ)賞す可き者有り。奇巧にして賞す可きは一時の賞なり。雅素にして賞す可きは則ち無限の賞なり。真に之を珍品と謂う可し。蘭人の齎(もたら)し来る物件は率(おおむ)ね奇巧なり。吾れ其の雅致無きを知る。但だ其の精巧は則ち懼る可きの一端なり。〔『言志耋録』第246条〕
【意訳】
だいたい全ての物品には、珍しくて精巧な点を鑑賞すべきものがある。また、優雅で飾り気がない点を鑑賞すべきものもある。珍奇で精巧な品物を鑑賞するのは一時であるが、優雅で簡素な品物は無限に鑑賞することができる。こういうものを真の珍品というべきである。オランダ人が持ち込む物品は、概ね珍奇で精巧なものである。私はそこに優雅さが足りないと感じている。しかし、その精巧さには目を見張るものがあるのは否めない。
【一日一斎物語的解釈】
ホンモノとは長く側に置いても飽きることのないものをいう。一時的に鑑賞して、すぐに飽きてしまうものはホンモノとは言えない。
今日のストーリー
今日の神坂課長は、営業2課の石崎君と同行しているようです。
「石崎、今日はラジオの番組もつまらないものばかりだから、俺の好きな曲を聞いてもいいか?」
「はい、どうぞ」
「このUSBでつなげば聞けるんだよな。お、つながった!」
カーステレオから流れてきたのは、サム・クック(1960年代に活躍したアメリカのソウル歌手)のようです。
「へぇー、なんだかカッコいい曲ですね」
「お、洋楽を聴かないお前でもわかるか?」
「はい、声がカッコいいです」
「うん、この声は、ロッド・スチュワートも憧れた声だからな。ところで、この曲は俺が生まれるはるか前、1962年の曲なんだぞ」
「え、マジですか? 全然古さを感じなかったですけど、じゃあ今から50年以上前の曲ってことですか?」
「そう、凄いよな。たしかに今聞いてもカッコいい。こういう曲をホンモノって言うんだよ。一瞬だけヒットして、すぐに聴かれなくなるような曲はホンモノとは呼べないな」
「じゃあ、私の好きなモモクロはどうですかね? 50年後も聞かれているかな?」
「聞かれているわけねぇだろ! というか、5年後には誰も聞いてないんじゃないか?」
「そんなことないですよ! 良い曲もたくさんありますよ」
「どっちにしても50年後じゃ、俺は生きていない可能性が高いから、お前がしっかり確かめてくれ」
「そんなこと言わずに、今度は私の好きなモモクロを聞きましょうよ」
「石崎、俺が悪かった。頼むから勘弁してくれぇ~!」
ひとりごと
小生が師事している永業塾の中村信仁塾長は、よくこう言っています。
「売れる本が善い本だとは限らない。売れ続ける本が良い本だと言えるのだ」
これは楽曲にも当てはまるでしょうし、芸術作品全般に当てはまることでしょう。
ところでモモクロファンの皆さんにはここで謝罪をしておきます。
小生も若かりし頃は、松田聖子、小泉今日子といったアイドルにハマっていたのですから・・・。

